アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

マーケティング手法?サクラが…?

2020年04月25日 | Weblog
 「サクラ」という言葉が市民権を得たのは、江戸時代でしょう。歌舞伎の見せ場で「成駒屋!(中村翫雀)」とか、その役者の屋号を大きな声で呼ぶ。そう叫ぶ観客を「大向こう」というのですがね。「大向こう」なくして、歌舞伎は成り立ちません。ところが、いつも都合良く「柏屋!(勘三郞、勘九郞など)」と呼んでくれる大向こうが観に来ているとは限らない。
 そこで、歌舞伎を一幕だけタダで見せるかわりに、「大向こう」になってもらっう…サクラをお願いすることとした。これが、サクラの始まりで間違いないでしょう。では、なぜその観客を「サクラ」と、呼ぶようになったか?
 本物の「桜」の花見に由来するらしい。桜の花見は、そもそも「タダ見」。「桜がパッと咲いてサッと散る」。「豐田屋!(阪東壽三郞)」と、盛り上げて、サッと退散。た、確かに「サクラ」…だね。(豐は豊の旧字体。台湾では、今も使われています。中国ではどうなっているかって?簡体字は、なんと「丰」。「豐が丰」なってしまう。いつも私が嘆いている理由がおわかりいただけるかと)
 「玉屋!」「鍵屋!」は、花火師の屋号。なお、歌舞伎の大川橋蔵の屋号が「玉屋」なんです。花火大会で、「玉屋!」…大川橋蔵が夜空にぃ…それはないね。
 「桜肉」とは、なんの肉か?「馬の肉」ですよね。それは、赤ちゃんでも知っています。「ウマ、ウマ…」と、言ってますから。では、どうして、馬肉が「桜」か?これまた諸説あります。
 私が支持している説は…
 明治初頭、「牛肉」が入ってきました。牛鍋が大変な人気となりましたが、いかんせん高価。そこで、馬肉を牛肉と偽った店が現れ始めた。早い話が、馬肉は、牛肉の「サクラ」。そんなわけで、馬肉は、桜肉と呼ばれるようになった。
 高村光太郎の道程の中に、馬肉のことを「サクラ」と記している作品があります。光太郞は、明治16年の生まれですから、馬肉がサクラと呼ばれるのを知っていた。ねっ、辻褄があうでしょ。なお、役に立たない知識ですが、「光太郎の本名は、『こうたろう』ではなく、『みつたろう』です。こんなこと知ってても、1円の得にもならないけどね。
 一頃は、デパートやスーパーの実演販売にサクラがおりました。実演販売の人と、サクラとのやりとりがおもしろく、立ち止まって見たものでした。この状態は、立ち止まっておもしろがっていた私自身は、雇われたわけではありませんが、サクラの役目を果たしていた格好。チョッピリ嬉しいような。なぜ嬉しいんだって?「サクラ」って、私などおもしろがり屋にとっては、魅力的な役割なんですよねぇ。
 で、私の長い歴史で、「史上最大のサクラ事件」というものに遭遇したことがありまして…まあ、自慢ですがね。かれこれ7~8年前のこと。もちろん単なる傍観者でしたがね。事件当時のことを思い出してみます。
 マックが、新商品の発売にあたり、アルバイトを募集。報酬は、「時給1,000円と商品代金」。店の前に並んで、新商品のハンバーガーを買って食べるのが仕事。で、集まったアルバイトの数は、東京550人。大阪1,000人。報道では、「大阪での販売開始時には徹夜組を含め2,000人あまりの行列ができた」と。
 と、いうことは、単純計算では、「1,000人のサクラが、じゃなくて、アルバイトが1,000人の客を呼び込んだ」ということになります。アルバイトのサクラの威力、凄まじっ!
 サクラを雇ったんじゃないかと指摘されたマック側は、「発売日を盛り上げたかったからアルバイトに並んでもらった。これは、マーケティング手法です」。サクラじゃないかとの批判については、「それって、日本では違法なの?サクラに定義などないので…批判されても何とも言えません」と。
 マック側は、広辞苑を持っていないらしい。サクラの意味が載っているのにね。
 日本では、「サクラ」というが、マックともなると、「マーケッティング手法」だって!まず「サクラの定義」ですが、広辞苑では…
1 芝居で、役者に声をかけるよう頼まれた無料の見物人。(歌舞伎のサクラ)
2 業者と、通謀し、客のふりをして、他の客の購買心をそそる者。
  ほらほら、2の意味がマックの手法ですよ。マックの、マーケッティング手法は、間違いなく「サクラ」です。
  ここで「ハッ!」と、目が覚めました。アメリカの方が「サクラ先進国」なんじゃないか?あまりにも堂々と、「マーケッティング手法」と、言っている。罪だなんて思ってもいないし、むしろ「何が悪い」という態度。
 で、高校時代から使っている和英辞典を調べました。やはり、アメリカはサクラの本場でした。サクラを表す単語が、3つもありました。
 claque・・・劇場に雇われて拍手かっさいする掛け声屋。「サクラ」。
 decoy・・・(…を)おびき寄せる。誘惑する。
 confederate・・・同盟した。連合した。
 江戸時代は、1603年から。メイフラワー号で、ピルグリム・ファーザーズがアメリカへやってきたのが、1620年。これだけだと、日本の方がサクラの本家のような。しかし、ヨーロッパの「マーケッティング手法」は、16世紀からあった。残念ながら日本は、「サクラ後進国」と、言わざるを得ません。
 だけどさあ、私が一生懸命考えたこの「サクラ」に係わる知識って、何か役に立つかなあ?立たないよねぇーっ!
 なぬ?「将来、サクラで身を立てていこうとしている人にとっては、役に立つ知識だ」って?そ、そんな人いるかねえ?まっ、慰めて下さって、ありがとうございま~す。