自閉症の生徒さんのレッスンをしていた頃に、他の症状で気になる生徒さんがいました。
引き継ぎの生徒さんでした。
ゆっくり進めています、と前任の先生から聞いていました。
年中の生徒さんでした。
まだ小さいので、音の読み方が出来ていなくともさほど気にしていませんでした。
ピアノを弾くのがスムーズに出来なくとも、これもまだ小さいからと気にしていませんでした。
正直な所、自閉症の生徒さんのレッスンをどうしようかと悪戦苦闘しておりましたので、気が回っていなかったのかもしれません。
しかも同じ曜日の生徒さんでした。
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ある時に、それにしても音が上手く読めないなと思うようになり、それまでノートに音符を書く練習をしてこなかったのですが、した方がいいかなと思い、遅ればせながらやろうとした時のことです。
鉛筆を持ってもらいましたら、手をグーにして握るように持ちました。
持ち替えるかと思っていましたがそのまま書き始めました。
その持ち方では当然のことながら、五線の決まった場所に丸を書くことはできません。
その時は年長の初めだった気がしますが、まだ書く練習をお家でしていないのだろうと思い、音符を書く練習はやめました。
そして、もうそろそろ書く練習をお家でしているだろうと鉛筆を持ってもらいましたら、また同じでした。
小学校に上がる1か月前でした。
「どれみ」と文字を書いてもらいましたら、「ど」を左右逆に書きました。これは、なくはないので、たまたまかなと思いました。「れ」はどうだったか覚えておりませんが、「み」は迷うことなく鏡文字。
これは小さい子どもがよくやる間違い方とは異なっていました。
「み」の文字を書きながら向きがわからなくなり、形そのものが「み」ではなくなるものとは全く違っていました。
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この生徒さんはピアノを弾く時も、なんだろう、と思うことが度々ありました。
楽譜のどこを見て良いか分からずにいる様子でした。あらぬ方向に目が泳いでいました。
あらぬ方向というのは、最初の小節から突然最後の小節に目が飛んだり、絵が描かれたところをじっと見て音符を読もうとしていたり、しまいには何も書いていない白い所をじっと見つめたり。
まだLDのことをよく知らなかった私は、イライラして「どうしてこんな何も書いてない所見るの?」と言ったことがあります。
その時の戸惑った表情、今も覚えています。
彼女はびっくりするほどのスピードで目が左右に動いて、後ろに倒れそうになったことも2度ありました。
背もたれのない椅子でしたので、本当にそのまま後ろに倒れていき、慌てて支えました。
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ピアノを弾くこともたいへんでした。真ん中の「ド」に1の指を置くことさえままなりませんでした。
ゆっくり、ゆっくり、右手の1の指を真ん中の「ド」に近付け、もう置けるな、と思った瞬間、急に左手に変わったり、他の音にずれたり。指が一方向にしか動かせず、234と動かせても432はできなかったり。
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私の発達障がいの勉強も進み、次第にLDのことも以前より知識が持てるようになり、これは眼球運動と運動能力に問題があるのではなかと考えられるようになりました。
そこであることを始めました。
どのようなことをしたかは、このブログの初期の頃に書いたのですが、遊び感覚ででき、しかも効果がありました。
これについては、次回改めて書きたいと思います。
これで彼女は以前よりピアノが弾けるようになり、目も動かせるようになりました。
LDだったかはわかりませんが、そのことを口にしなくともレッスンで取り入れられることです。
他の先生から、説明せずにこのようなことが出来るのか、と言われたことが何度かありますが、私は保護者の方の前でも普通に行っておりました。
ピアノのレッスンはひたすらピアノを弾くだけではないですし、弾くことに役に立つことであれば、親御さんがなぜこのようなことをさせるのか、とは言ってきません。
「今、こういうことが苦手なようですから(こういうことで困っているようですから)、ここに力を入れていきましょう」とか「ピアノが弾きやすくなるように、ちょっと運動(体操)しましょう」とか、「最近のお子さんはあまり遊ばないようなので、目がしっかり動かせないでいることがあります」とか、言い方はあります。
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むしろ、ピアノレッスンで難しく感じるのは、どちらなのだろうと直ぐに判断がつかないことです。
線や間に丸を順番に書けないとか、その仕組みが理解できないとか、ドレミが読めないとかは、どのお子さんでも普通にあることだからです。
指や腕の感覚、姿勢も初めから良いお子さんばかりではありません。
わかるまでに時間がかかるのだろうか、練習不足なのだろうか、教え方が上手くないのか、と探る時間が必要になります。
以前、そうして3カ月くらい経ち、次第に目の動きに前述の生徒さんと共通するものを見るようになった頃に、学校の勉強もできないのにピアノなんか習っている場合ではない、とお父様にピアノを辞めさせられた生徒さんがいました。
小学校入学と共にレッスンを始められました。
自分の考えを持ち、話すこともしっかりしていました。ピアノも好きな様子でした。
理解する力に比べて音が読めないな、とは思いましたが、これは音感の発達とも関わりがあるのでもう少し時間が必要かと思いました。
ただ、次第に手を動かすことに不器用さが見られ、もう一人の生徒さんと共通するものが確かなものになりつつありました。
おかしいな、と気付く前に一度、家で大声で叫ぶとお母様から聞きました。レッスンでは全くそのような素振りはなく、いつも落ち着き、にこやかでした。その言葉に違和感を感じたほどでした。
それから3~4週間経ち、また同じことを聞きました。
本当に大きな声で大変なのだと。ご近所から何かあったのかと見にこられたと。
私も少しずつ、彼女の困難さが見えてきておりましたので、その原因が私なりに理解できました。
ピアノレッスンのシフトチェンジが必要だと思い、やり方を変えたら出来る方法があることを彼女自身に体験してもらおう、と考えていた矢先に突然の退会でした。
全く力になれませんでした。
3カ月程度では、原因が何にあるのか私にはわかりませんでした。