デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
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『源氏物語』(了)
小説
/
2016-03-06 00:00:01
越年読書であった瀬戸内寂聴訳の『源氏物語』を読了。いい歳になるまで読んだことなかったのに、読み終えた途端、『源氏』のことは知っておけ、とエヘンと偉そうに自慢げに言ってしまいたくなる。
「宇治十帖」の「夢浮橋」(分量としては少ない)に取り掛かったときに、終わらないで欲しいなと思ってしまったが、終わってしまった。
「浮舟」と「蜻蛉」を読んでいる最中、あぁこれM・プルーストの『失われた時を求めて』の第六篇「逃げ去る女」の展開じゃないかと思った。そして以前読んだ、『失われた時を求めて』と『源氏物語』が似通っていることを論じた本の内容までだんだん思い出してきて、その本が『失われた時を求めて』の薄情な主人公と「宇治十帖」の薫は似ていると書いていたことまで思い出せた。そして私も確かにあの主人公と薫が(今ならば)似ていると思える(笑)。ちなみにその本には恋人を忘れるスピードの速さが似通っているといった指摘があったように思うが、またいつの日か再読して確かめたい。
個人的には、『源氏』の薫の父の柏木も女三の宮に思い焦がれる余り、女三の宮のところにいたネコを貰い受けて代償満足を得ようとするところと、薫は大君の死によって恋の成就の望みが絶たれ中の君もものにできないとなったら大君の人形(ひとがた)を造ろうとまで言いだし、女一の宮(一品の宮)を恋慕した際は妻である女二の宮に女一の宮とよく似た衣裳を着せて愉しんだりするところは親子だなぁと思ったりし、また薫のやっていることは『失われた時』の主人公が憧れの夫人や恋人の生身の人がらよりも彼女らが身に着けているアクセサリーや衣裳に並々ならぬ関心を覚えていて、身に着けていた「品(しな)」がその女の印象を色鮮やか足らしめている嗜好と似ているように思った。
現代ならば、上のようなともすれば変態的行為に対し単に「アブない奴」、「ストーカー」、「異常」、「キモい」とかいって突っぱねレッテルを貼っておしまいとなるのかもしれないが、ただ、それはそれでやっぱり直情的で心が貧しいように思う。たとえ一時的に毛嫌いし直情的に突っぱねたとしても、時間を置いて文芸の力で持ってこれらの心理や感情の流れを疑似体験することは必ずしも悪いことではないだろうし、そういう意味で、平安時代も現代も所詮人間は同じようなことを考え同じことを繰り返しているのだと慮る視点を読書から得るのは有意義なことではないかと、改めて思える。
物語は原文で読むとしたら古文を読みこなすほどでないと読めない難しいものだが、内容自体は決して難しいものじゃないし、
以前にも書いた
ような今でも巷に見聞きするまた自分も体験することもあるようなありふれた話が積み重ねられたものだ。昔から読み継がれ語り継がれた物語は今も生きているし、読んでいくうちに小説の中のキャラを自分に投影するだけでなく、近現代の小説への無意識的影響を与えていること、それが多大であることも分かってくるように思う。(個人的には、たとえば谷崎潤一郎の『細雪』の雪子は若き日の玉鬘みたいだし、妙子は浮舟の顛末のパロディかもしれないし、鶴子や幸子には朱雀帝や玉鬘のなりふり構わない我が子の婚活にやきもきする焦燥感が見えたりするのだが(笑)。)
とりとめがなくなってしまったが、とにかく日本が世界に誇る素晴らしい作品を読めてよかった。
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