デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



大晦日にアップするつもりだった「今年読んだ本(2022)」である。

養老孟司『唯脳論』 ★★★★★
…1989年の時点で「われわれはいまでは脳の中に住んでいる」と、すごいことを言ったものだ。ここ数年、マルクス・ガブリエルの著書を読んでいろいろ難しいことを考えたが、ガブリエルの本の前に『唯脳論』を読んでおいたほうがいい気がする。

延恩株『韓国 近景・遠景』 ★★★★★
…コロナ禍であろうがなかろうが外国に行ける可能性を考えつつ手にした。陰暦での七夕こそが二つの星を見れる本来の季節であることを指摘している点などに、うならされた。

新城道彦,浅羽祐樹,金香男『知りたくなる韓国』 ★★★★★
…メディアが流したりネット上に溢れている韓国の情報だけで、隣国のことを知った気になって紋切り型の韓国観を繰り返してしまいがちな私のような人間にとっては必読だったのかもしれない。著者によって歴史の見方や文にクセがあるが、日韓関係はそう単純に一言では片付けられないこと、私は韓国のことを概観すらしてなかったことを痛感した。

中条省平『NHK「100分de名著」ブックス アルベール・カミュ ペスト: 果てしなき不条理との闘い』 ★★★★★

安部公房『砂の女』 ★★★★★
…NHKの「100分de名著」で採り上げられていたのを見て、すぐに読みたくなった。理屈や建前ばかりが先にきて、社会的評価に興味がない振りをしつつ、自分にとって全くの別世界に放り込まれてなお俗物であることを自覚できない「引き込まれる男」は私そのものではないか(笑)。
それにしても、目を背けたくなる人間の本質を短い分量でこれほどうまく表現している本は決して多くないだろう。

R・サーヴィス『トロツキー(上・下)』 ★★★☆☆
…読了まで結構長い時間を要した。巻末の解説にあるとおり、スターリンの国家運営がソ連にとって良かった面があることを強調する再評価をする研究者ゆえか、たしかに意地悪な書きっぷりに正直辟易した。ただ、トロツキーが自伝から省いたり隠したい面までつっこんで書いていることで、トロツキーも聖人ではなく普通にエゴを持つ人間だったことを浮き彫りにしている点はよいと思う。また、革命以前から革命以後のソ連にとってのユダヤ人問題とはいかなるものであったのかを論じたものを読んだことがなかったので、腫れ物に触りたがらない穏便な本よりは少しくらいは毒にも薬にもなるのかも。

『水滸伝(1)~(5)』 ★★★★★

佐藤信ほか『古代史講義【氏族篇】』 ★★★★★
…古代日本史は、テストに出る回答を丸暗記するような勉強しかしてこなかった私は、またこのシリーズで頭をガツンとやられたように思う。源氏や平氏ってそもそもいつ頃からどこから出てきたのか、清和源氏や桓武平氏の清和や桓武って何なのか?といったことがごっそり抜け落ちていたレベルで読んだこともあり、「なんだそんなこと、天皇の名前じゃん」、「賜姓って意味知ってる?」とか言われて初めてピンときたような感じというか(笑)。大雑把な言い方でなんだが、この本を読んで、天智天皇以降の賜姓貴族が日本を運営してきた、その影響は現代でも脈々と続いている事がよく分かった。また平安期以前の氏族についてもたくさんページが割かれており、その内容は遺跡めぐりをするうえでとても興味深いもので、かつての遷都先だった土地に行くのがより楽しみになってきた。

いま読んでいる本は上田正昭 『帰化人』。

今年も良い本に出会えますように。


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