ふと気が付くと、手の爪が見るに堪えないような状態になっていた。
縦線がいっぱいあって、艶は何もなく、ガサガサになっている。縦線は凹凸になっているので、ツルツルではない。
爪というのは普通透明感があるつやつやなはずではないか。
それが、年齢を重ね、女性ホルモンなどが枯渇してくると、肌にうるおいがなくなるのと同様に爪も枯れ木のようになってしまうのであろう。
それに最近は、何もしないのに、爪が割れたり剥がれたりすることが多くなった。
割れた部分は、物にひっかかるので、深爪にして切り落とせる場合は切り落とし、バンドエイドなどを貼っておくと数日経てば伸びてくる感じだ。
割れさえしなければ日常生活に支障はないが、それにしてもガサガサの爪は見苦しい。
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そういえば、爪っていうのは、普通の人間はなんらかの手入れというものをしているのかもしれない。
以前、爪に栄養を与えるクリームみたいなものを買ったことがあったが、あれはどこにやってしまったのだろう?
そうしたら、たまたま洗面所で透明のマニキュアを発見したので、いきなり爪に塗ることにした。
本当ならば、まず爪にやすりをかけるとかして、表面をきれいになめらかにしてから塗るのだろうけど、そのような道具もない。
そういえば、昔、爪磨きという紙やすりを買ったことがあったが、あれは何年前のことだろう?
当然そんなものの行方も知れない。
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私にも40代のころは、薄いピンクのあまり目立たないマニキュアを塗っていたことがあった。
その当時、非常勤講師とスーパーマーケットのダブルワークをしていた。
大人相手の非常勤講師は、スーツにパンプスという服装で、指先が受講生の目につくこともあったので、それなりにきれいにしたいという意識もあった。
スーパーは主に品出しだったが、たまにレジに入ったこともあった。品出しは接客しないから機能性以外はあまり関係ないのかもしれないが、レジでは客の目につく。簡素にしないといけないのだろう。
スーパーの就業規則では、マニキュアを塗ってはいけないというルールがあったが、ほとんど自然の爪の色と違わないようなマニキュアなので大丈夫だろうと思って塗っていた。
しかし、ある時、男性の店長からマニキュアをやめるようにと言われて、それにしたがってやめたことがあった。
あの頃は、まだ若かったから、マニキュアを取ったところでそんなに変化はなかっただろう。
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しかし、今のこの爪は何なんだ?
全く見るに堪えない。
もし、今こんな手でスーパーで働いていたら、「お願いだからもう少し爪をきれいにしてくれませんか?」などと、逆に言われそうなほど、荒れ果てているのである。
今の仕事は、爪をどうしようと自由なんだから、ちゃんと手入れをすればいいのにね。
それに、スーパーの時だって、マニキュアを塗らなくとも、爪を磨いてピカピカにするのだったら問題は無かったのだろう。
あのころは磨けばきれいになっただろう。
今は磨いても爪の表面が削れるだけで、艶なんかは出てきやしないだろう。磨いたことがあるが、磨けど磨けどきれいにはならず、爪が限りなく浸食していき、痛いような気がしてやめたことがあった。
だから、今なら、マニキュアを自由に塗れば、荒れ果てた爪の表面を保護して、少しは美しく化けさせることができるかもしれない。