滝ノ上温泉の「滝峡荘」さんは、もと国民宿舎の看板が掲げられていました。
質素すぎるほどの外観は、山小屋の雰囲気に近いと思います。
滝ノ上温泉は、冬季休業です。
2013年11月23日をもって、この宿は冬の休業になりました。
秘湯の中の秘湯です。
冬の間、あちこちから白煙があがりながら、雪に埋もれていくこの温泉施設を思うにつけ、なんだか傍にいて見守ってあげたくなる、そんな気がします。
日帰り入浴(400円)。
現在この宿は、自炊専門施設です。(1泊:2500円/人)
あたたかい時節はカメムシが大発生するため(その日も弱ったカメムシが所々にいたのですが、なんだかヘンな匂いがします。)
階段を下ると浴室です。
畳敷きの大広間もありました。
浴室は男女別で、簡素な造りでした。
山小屋という所以が、こんな場所にあります。
浴室で何かあったら、この板を叩いて危機を知らせるというものです。
綺麗とか、清潔とか、ある種の転地効果とか、リッチな温泉旅行とか、そういった目的とは全く無縁です。
ですが何もかも快適でハイテクな時代でも、この昭和のレトロ感は私の好奇心を疼かせます。
何も媚びない、この大地の自然のありのままに佇む温泉宿です。
上がり湯にもなるかけ湯スペースは、温泉に割り水で調度の湯温になっています。
「滝峡荘」の源泉は、源泉名:瀧上温泉 含硫化水素酸性放射能泉 56℃ pH3.0
滝ノ上温泉の元湯で、100%天然掛け流し(ラジウム温泉)。
尚、同じ滝ノ上温泉の「滝観荘」は、源泉名:第二鳥越湯 単純硫黄泉 74℃ pH5.6
泉質が違うのです。
お湯がなみなみと注がれ、その分のお湯が溢れて流れていきます。
窓をいっぱいに開けると、紅葉の終わった木々のオレンジが目に飛び込んできます。
深呼吸すると、こんなに空気が美味しいのかと思う位、マイナスイオンの世界に包まれました。
何を考えていたのでしょうか、1時間半位浴室にいたでしょうか。
仕事のことも忘れ、グチャグチャして散らかった心の中も忘れ、何も思い浮かばず何も考えもせず、ただこの温泉に浸って、窓から入ってくる冷たい空気とあたたかい硫黄のする温泉に包まれて、無心に至福の時を過ごした私でした。
結局、私の入浴のはじめから終わりまで、ひとり占めでした。
ところで男性浴室はどうかというと、宿の秘湯の雰囲気に、男性の支持が高く常連客はじめ愛され、単独で来て温泉を静かに満喫して帰っていくようです。
山のどんづまりである立地や、滝ノ上温泉でも唯一営業の自炊宿で建物も古びていることを考えると、また来年も入湯できるか些か(女性の立場では)心配でしたが、休業を知らせるお宿のホームページの冒頭に「来年は建物を建替え、風呂も大きくし、露天風呂もできる予定です。」とありました。
リニューアルしたならば、ぜひこのお宿に泊まってみたいと思います。