編著:水内喜久雄
装画・挿画:内田新哉
PHP研究所
30人(菅原克己、阿蘇豊、大橋政人、内田鱗太郎、高橋順子、みずかみかずよ、杉山平一、茨木のり子、木村信子、桜井和寿、山本純子、木坂涼、吉野弘、黒田三郎、工藤直子、有馬敲、伊藤芳博、中桐雅夫、草野信子、石垣りん、新川和江、坂田寛夫、寺山修司、谷川俊太郎、吉田美和、岸田衿子、花田英三、川崎洋、ビートたけし、まど・みちお)の詩と一編ずつにまつわる感想や小学校教員時代のこどもとのふれあいなどがセットで綴られている。
30編の何と贅沢な詩集、そしてこれらの詩を選んだ編者の暖かい視線。
一編ごとのペン画も素敵です。
みどれ
阿蘇豊
朝のテレビニュースで
キャスターが
「ここはひろびろとみどれがひろがり…」
と言った
みどりがみどれとなって
ピッコロのように
妻がトーストをかじりながら
笑った
同時刻
あちらで
やっぱりトーストをかじりながら
こちらで
みそ汁をすすりながら
いっせいに
ひろびろとみどれがひろがり
ミ・ド・レ
オルガンのように
笑いさざめく
みどれの五月
豆
花田英三
豆を喰いながら
なにかかんがえるつもりでいたが
ふと気がつくと
おれはいっしんに豆を喰っていた。
こんなに たしかに
まど・みちお
ここは宇宙の どのへんなのか
いまは時間の どのへんなのか
鉱物たち はてしなく大らかで
植物たち かぎりなくみずみずしくて
動物たち いつも真っ正直で
この数えきれないまぶしい物物物の中の
ひとにぎりの人間 ぼくたち
こいびとたち 美しく
父母たち やさしく
友だちみんな たのもしく
たべもの みんな おいしく
やらずにおれない素晴らしいこと
山ほど あって
生かされている!
自分で 生きているかのように
こんなに たしかに!