詩とファンタジー№21 冬愛号
投稿詩とイラストレーション
責任編集:やなせたかし
かまくら春秋社
特集:やなせたかしと5人の詩人(萩原朔太郎、三好達治、中原中也、宮沢賢治、立原道造)
幸い創刊号から欠けることなく出会って、21冊目の季刊誌。
今号も被災地からの応募作品が掲載されていて、一編だけ紹介します。
あたたかな
千田夏海
台所は皿の海
白や透明 いろいろな破片が
粉々になって 床を埋める
棚に置かれていたもの
全て床にはき出され
冷蔵庫は 機能せず
残った食べ物 菓子パン数個
妹にあげて 私は一口
とてもおなかがすいていた
歩けばいける祖母の家
三月なのに風は容赦なかった
「寒かったね、おなかすいたでしょ」
反射式ストーブの上に置かれる薬缶
祖母が出してくれたのは
湯気に包まれたどんぶり
どんぶりの中身は
うどんでした
あったかい あったかい
なんだか笑みがこぼれた
あれ、うどんってこんなにおいしいっけ
明日は何もかも、頑張れそうだよ
食べ物の力は凄い。
あったかいうどんを食べたとき、こぼれたのが笑みで、良かった。
面白いのを2編ばかり。
写真
小谷健
実家の冷蔵庫に
僕の写真が貼ってあった
七五三の時の僕が
ニコニコ笑って立っていた
裕ちゃんがそれを
まじまじと見ているので
誰これ
と聞いたら
少し考えてから
ぼく
と言った
ボロネーゼ
サトウアツコ
ココロは 目に見えないぶん
みじんぎりにされても
滅びたりなんかしないわ!
ミートゥと ミンチにされたミートも
文句言わずに ジュージュー油とダンス
酸味あるトマトが
みんなの悲しみ蒸発させながら
優しさ手に入れ 甘くなり…
ココロとカラダのバランス調整中★
ボロを言っても みじめになるだけ…
ボロは言わない ボロネーゼ!
ココロこげちゃって 闇に支配される前に
フライパンのなかにて まわれ右
ポジティブシンキング、グッドな人生よ!
ねぇ、知ってる?
ボロボロになるのは
いためつけたひとのココロなんだよ?
ドキンとした絵。
西田知未 冬の訪れ
言羣心在(ことむらことあ)さんの詩もビビビッと。では好きなくだりをちょっとだけ(ケチですね…フフ)
どうやら音も凍りついてしまった様だ
ウグイスの鳴き声を聴いたのがもう
何百年も昔のことのような気がして
さようなら
あなたは僕にとっての春でした
ひらりひらり しんしんと舞う雪片に
桜の花弁の面影を見
僕は冬を受け入れた