1963年
東京・王子署は、衣料品を専門に取り込み詐欺をはたらいていた杉並区阿佐ヶ谷二の五三六、元プロ野球、読売巨人軍、近鉄投手、繊維ブローカー、義原武敏(26)新宿区市ヶ谷薬王寺町七二、同、道管健治(38)のふたりを七日までに逮捕した。調べによると、二人は七月七日午後四時ごろ、栃木県足利通り四丁目二五八四、メリヤス製造業、松葉恵佐美さん(54)に「もと巨人軍の義原です。代金あと払いで取り引きしてほしい」ともちかけ、婦人下着約千点(十三万円相当)をだましとった。二人は、この商品をその足で同市山下町の繊維ブローカー、Yさん(38)に約十万円でたたき売ったのをはじめ、同月二十一日までに松葉さんからぜんぶで婦人下着など六千七百点(七十五万円相当)をだましとり、二割引きから半値でたたき売るというバッタ商法をしていた。この間、義原は松葉さんを信用させるため、約束手形や小切手をふりだしていたが、いずれも不渡という悪どさだった。このほか二人は、わかっただけでも八件、二百万円にのぼる取り込み詐欺をはたらいていた。調べにたいして義原は「われながら元巨人軍の肩書きがこんな利用価値があるとは思わなかった。引退したあと、いくつか事業をしたが、いずれも思わしくなく、ふくれあがる負債をなんとか少なくしようとつぎつぎと詐欺をしてしまった」といっている。