1975年
「2点差ならなんとかなる。投球数が百になるまでがんばってほしい。それ以上は無理だろうな」三回表、カルバーをマウンドに送り出す中西監督は、期待と不安の入り混じった複雑な気持ちだった。当人も「二、三回のつもり」だった。それがどうだろう。先頭の門田博を遊ゴロ失で出塁させたが、そんなエラーを気にする様子もない。スイスイと投げ続け、九回まで被安打1のあざやかなピッチングでいきなり勝利投手になった。外人投手特有の、腕力を頼りにして上段から投げ込むタイプではない。オーバースローだが、そのモーションは内野手のように小さい。「五種類の球を投げた」というが、いずれもが低めに集まった。直球は十球のうち二、三球であとはシュート、カーブ。中でもシュートの切れ味は威力があった。「練習も十分やったし、涼しかったので疲れなかった。ベストのピッチングだ。二塁打された球は内角シュート。悪い球ではなかった。打った方が上手なのだ」とカルバー。淡々とした口調だ。外人には珍しく控え目で静かな男といった感じがする。二歳のとき父親をなくし、今年春のキャンプ前には、母親も去っている。こんな不幸が尾を引いているのだろうか。日本に来るまでの間フィリーズのファーム、トレードでは一勝六敗の不振。口にこそ出さないが異国の地で「心機一転」を期しているのがわかる。球威は打者を威圧するほどのものがなくても、その落ち着き払ったマウンドの動作、シュートを勝負球にした低めへの変化球は、日本ハムの戦力をグイと押し上げる力になるのは間違いなさそうだ。野村監督は「確かにスピードは乏しいが、打者とのタイミングを考え、うまく投げてくる。さすがに大リーガーだな。彼とぶつかるときはストライクゾーンを低めに置かないとダメだ」自分が三打数無安打に抑えられたこともあってか、警戒の色を濃くしていた。
「2点差ならなんとかなる。投球数が百になるまでがんばってほしい。それ以上は無理だろうな」三回表、カルバーをマウンドに送り出す中西監督は、期待と不安の入り混じった複雑な気持ちだった。当人も「二、三回のつもり」だった。それがどうだろう。先頭の門田博を遊ゴロ失で出塁させたが、そんなエラーを気にする様子もない。スイスイと投げ続け、九回まで被安打1のあざやかなピッチングでいきなり勝利投手になった。外人投手特有の、腕力を頼りにして上段から投げ込むタイプではない。オーバースローだが、そのモーションは内野手のように小さい。「五種類の球を投げた」というが、いずれもが低めに集まった。直球は十球のうち二、三球であとはシュート、カーブ。中でもシュートの切れ味は威力があった。「練習も十分やったし、涼しかったので疲れなかった。ベストのピッチングだ。二塁打された球は内角シュート。悪い球ではなかった。打った方が上手なのだ」とカルバー。淡々とした口調だ。外人には珍しく控え目で静かな男といった感じがする。二歳のとき父親をなくし、今年春のキャンプ前には、母親も去っている。こんな不幸が尾を引いているのだろうか。日本に来るまでの間フィリーズのファーム、トレードでは一勝六敗の不振。口にこそ出さないが異国の地で「心機一転」を期しているのがわかる。球威は打者を威圧するほどのものがなくても、その落ち着き払ったマウンドの動作、シュートを勝負球にした低めへの変化球は、日本ハムの戦力をグイと押し上げる力になるのは間違いなさそうだ。野村監督は「確かにスピードは乏しいが、打者とのタイミングを考え、うまく投げてくる。さすがに大リーガーだな。彼とぶつかるときはストライクゾーンを低めに置かないとダメだ」自分が三打数無安打に抑えられたこともあってか、警戒の色を濃くしていた。
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