プロ野球 OB投手資料ブログ

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小谷正勝

2017-07-09 13:32:47 | 日記
1972年

「いやな風だなあ。あれっ、あんな当たりでもはいっちゃうんだから。こりゃ、注意せんといかんな」。試合前、ネット裏で打撃練習を見ていた巨人牧野コーチは、こうつぶやいた。右翼から左翼へ向けて10㍍近い風が吹き抜け、時折り雨がまじるというこの日のコンディション。事実、多少つまった当たりでも、レフトへ飛んだ打球はスタンドに飛び込んでいた。関本、小谷という両先発投手が、この風を計算に入れたピッチングをしたのは当然。ただ、小谷のそれは、きわめて徹底したものであり、関本のはやや中途はんぱだった。この差が結果的には勝負に現れることになった。小谷が右打者には内角を捨てて、外角一本やり、左打者にはその逆で勝負しよう、と決めたのは、一回柴田に打たれたとき。ふつうなら中堅フライになるはずの柴田の打球が風に流され、左中間を抜けたからだ。ベンチの青田コーチも、この回1点とられたあと、小谷に「風の影響が思ったよりある。それに巨人の練習を見ていた感じでは、外角球を引っぱれる打者はいない。内角には絶対投げるな」と指示している。この小谷のピッチングに巨人は、まんまとはまった。当然、外角球をさからわずに右へ打つべきなのに、やたらと引っぱるバッティング。病みあがりの小谷が、松島と代わるまで右方向へ飛んだ打球は3本。二回の吉田、四回の末次はうまく右へ飛ばして安打としている。これ以外は土井のライト・フライ1本だけ。おそらくレフトに打てばホームランになるという誘惑もあったのだろう。「小谷は、いつもだと近めから斜めにはいるカーブがいいんだが、きょうは風を考えて、真ん中から外にスライダーを使っていた。うちの選手は、みんなそれを引っぱったので打てなかった」。福田コーチは、小谷のピッチングをほめると同時に、味方打線に工夫のなかったことを指摘している。一方の関本も「風のことは十分考えて投げた」という。だが、小谷のように内角攻めを完全に捨てきれなかった。三回、松原に1-2から内角のシュートを左翼ポールぎわに打ち込まれ、六回にはシピンに内角から真ん中にはいるスライダーを、これまた左翼ポールの根元にとどめの本塁打を浴びた。松原の一打はつまっていたし、シピンのもふつうなら平凡な左飛という当たり。それを風がスタンドまで運んでしまった。「松原さんの好きなスライダーを外角へ投げてからシュートと思ったが、1球早くシュートを投げたのがいけなかった。シピンのは真ん中のスライダー。でも、外角ばかりで内角を攻めないというわけには、なかなかいきませんからねえ」と関本。だが、この日の風を考えれば少なくとも長距離打者に対し、内角球を勝負ダマに使うのは冒険過ぎた。2本のホームランが証明している。

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