濡れて行く女

2002年10月08日 | 暮らし

8時頃、携帯電話が鳴った。
「今日、練習日なんですけど来られますか?」
いつものやさしいSさんの声だ。

テレビの前でゴロゴロしていたおれは、
いそいでケーナをバッグに入れて家を出た。
バンドの練習日だった。

家を出て中央公園の脇を、
傘を差して早足で歩いた。
目の前10メートル先を、若い女性が歩いている。
両手にバッグとレジ袋を持っていて
傘を差していない。
なぜかゆっくり歩いている。

急いで歩いているおれが追い抜いてしまう。
どんどん女の子に近づいていく。
それなりに雨は降っていて、
傘を差していないと濡れてしまう。
傘を差し掛けようか、と思った。
しかし、それはへんだ。
おれはアカの他人だ。
スケベなオヤジと思われるだろう。
でも、彼女は雨の中。
つぶ濡れだ。

おれは、悩んだ末、
道路を横断して反対側の歩道に行った。

コメント
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