そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

バント無用の効能

2007-04-04 23:40:52 | Sports
バント無用!常葉菊川攻め抜いて初V(スポーツニッポン) - goo ニュース

昨日に続いて、センバツ優勝した常葉菊川高についてのエントリ。

ほとんど試合を観る機会も無かったのでよく知らなかったんだけど、常葉菊川は高校野球には珍しくバントをほとんど使わずに勝ち進んだらしい(けっきょく大会通じてのチーム犠打数は1)。
このことについて、上にリンクしたスポニチの記事では、「バント無用の積極打法!」などとスポーツ新聞らしい単純な解釈で取り上げているけど、今朝の日経新聞スポーツ面の記事によれば若干ニュアンスが異なるみたいだ。

常葉菊川の森下監督がバントを使わないのは、次のような理由によるという。

強攻策を貫くのは、得点の確率が高まるからではなく、「バントの意識をなくすことで選手が迷わず打てるから」。とにかく作戦を単純化し、選手ににあれこれ考えさせないのが”森下流”だ。
どんな内野ゴロでも三塁走者は本塁突入。一回3球で終わっても打者は好球必打。一塁が空いても敬遠はナシ━。浅原内野手は「中学時代に教えられた状況判断がまったく求められないことに驚いた」と言う。

そういえば、唯一ちょっと観戦した、対大阪桐蔭戦においても、怪物中田の打席で一塁が空いていてもけっして敬遠はしていなかった。

本格的に野球をしたことがない身で偉そうなことは言えないけど、野球というスポーツにおいては、攻撃にしても守備にしても、ある状況においてどのようなプレーをすべきかという教科書的セオリーがあって、練習を重ねることによって、その「状況判断」と「すべきプレー」を頭と体に染込ませ、試合で実際にそういった「状況」が発生したときに如何に正確に「すべきプレー」ができるかが勝負、という要素が他のスポーツに比べても重視される度合いが強いような気がする。
そういう意味では、「状況判断」という要素は野球において非常に重要なわけだけど、重要であるからこそ逆に「状況判断」ばかりに気が向いて、本来やるべきもっと大切なプレーに全力が傾けられなくなりがちである、ということに気づいたところがこの監督の慧眼だろう。

野球に限らず、どんな仕事でも、あるいは日常生活でも、様々な問題や課題を同時に抱えて、どうしてよいやら混乱しそうになるときに、かえって開き直って、他のことは切り捨ててもっとも重要なことに集中して取り組むことで事態が好転するのはままあること。
個人的にも、こういうシンプル・シンキングは日常的に有効活用している。

が、単純化して考えることが常に正しいかというとそんなこともなくて、様々な実践的ケーススタディにおいて「状況判断」の訓練を繰り返すことによって、事態の複雑性を認識する力を養うことも、一方で重要なことではある。
複雑な事態に直面したときほどシンプルに、それほど難しくない事態のときこそ隠れた複雑性に対するアンテナを張る。
そういうバランスが大切なのだと思う。

その点、森下監督もよく分かっていて、「バントを使わない作戦がいいのか悪いのか、実は分からない」と語っているという。
こういう正直さをも兼ね備えた人って、信頼できるな、と感じた。
コメント
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