そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

「長崎」が示した論点

2007-04-23 23:12:51 | Politcs
万歳なし 喜びかみしめ 統一地方選後半戦 長崎市長選 田上氏「市民の力」(西日本新聞) - goo ニュース

伊藤一長・前長崎市長銃撃事件については、卑劣で残酷な犯人の所業に対する怒りと、突如として凶弾に生命を奪われた伊藤氏本人と遺族に対する同情の念を禁じえないのだけれど、一方で、この事件から補充立候補、元統計課長の当選に至る一連の出来事は、様々な側面から非常に多くの論点を提示してくれたとようにも思うので、いくつか書き留めておきたい。

(1)言論に対するテロリズム
最初に事件の報に接したとき、本島・元長崎市長に対する銃撃の記憶もあり、「長崎」「拳銃」「暴力団」といったキーワードから「右翼」の言葉を自分も連想したけど、報道をみるかぎり今回の事件についてはそういった政治的背景は無く、私怨による犯行のようだ。
が、容疑者は「当選させてはならないと思った」といった趣旨の供述をしてるとの報道もあり、選挙戦真っ最中の犯行は、まさに言論を暴力によって抑え込もうとするテロであることは間違いない。
一方で、朝日新聞の社説で、前市長が「反核」の立場で活動していたことをわざわざ採り上げて、あたかもそれゆえにテロの犠牲になったかと言わんばかりの書きぶりをしていたのは明らかにやり過ぎ。

(2)ヤクザにも地域格差
犯行の動機はいまだに完全に明らかにはなっていないようだが、行政に介入して甘い汁を啜っていた地方の暴力団組織が昨今の社会状況の変化によって苦境に陥っているのは確かなようで。
地方経済の低迷が裏社会にも影響を及ぼしているというのは構造改革路線の負の側面の一端と言えるのだろうし、他方、公共工事の削減と行政の透明化によりヤクザの付け入る余地が狭まっているというのは同じく構造改革の正の側面と言えるのかもしれない。

(3)選挙制度の陥穽
補充立候補から投票日まで僅か3日しかなく、また、結果的に当選者と次点の票差をはるかに上回る期日前投票の無効票(ほとんどが故伊藤候補に対するものと思われる)が出てしまったというのは制度の明らかな欠陥。
どういうケースに適用するのかを整理するのは難題だが、投票日の延期・仕切り直しも視野に制度の改良が必要だろう。

(4)驚きの開票結果
何より一番驚いたのは、弔い合戦に打って出た故人の娘婿を僅差で破り、田上前統計課長が当選したこと。
どうしてこういう結果になったのか、長崎の状況を肌で知らないのでなんとも言えないが、「情」に流されやすい日本人の気質も変化しつつあるのだろうか。
それよりも、僅か三日間というスピード決戦で、世論調査などによる事前の情勢アナウンス効果がない中で投票が行なわれた結果、当選した田上氏も、負けた伊藤氏の遺族も、長崎の有権者自身も予想だにしなかった結果がハプニング的に出てしまったということか。
コメント
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