バラカ | |
桐野 夏生 | |
集英社 |
大震災、原発事故から間もない2011年に連載が始まっただけに、生々しい手触りがある。
ただし、ここで「生々しい」と言うのは、小説に描かれる原発事故後の世界にリアリティがあるという意味ではなく、破滅的な妄想が渦巻いていた当時の空気が小説に反映されている、という意味での生々しさ。
荒唐無稽なディストピア小説として、世界観は悪くないが、粗い。
登場人物たちの繋がりの、あまりにあまりなご都合主義にはちょっと呆れてしまう。
大学時代の友人関係にある2人の女性がバブル世代的な性悪さを象徴しているあたりは、敢えてのキャラ造型だとは思うが、どうもB級感が漂う。
『夜また夜の深い夜』もそうだったが、最近の桐野作品は、B級世界に女の情念みたいのが重ねられて、なんだかねっとりした肌触りがする。
しかもどこか説教くさい。