UXの時代 ― IoTとシェアリングは産業をどう変えるのか | |
松島聡 | |
英治出版 |
本のタイトルから、ITの世界で「UI/UX」と言われている領域のノウハウやユースケースを解説した内容を期待していたのだが、全く期待外れだった。
冒頭からしばらくは、シェアリングエコノミーやAI・IoT、3Dプリンティングなどの最近の動きについての一般論が延々と続くのだが、新味のある話は全く無く、動向を把握している人であれば斜め読みで十分なレベル。
で、中盤からは、著者が起業した会社の事業の紹介になるのだが、独力で事業を始めて育て上げた実行力と先見の明は率直に素晴らしいと思うものの、事業内容がそんなに尖ったものであるとも思えず、正直読み物としては退屈だった。
視点として面白いな、と思ったのは、以下の点。
・通常は固定費に組み込まれてしまって「活用されていないこと」が見えなくなってしまう「リソースの非稼動部分」を見つけ出し可視化することが重要
・スマートフォンの画期性は、以下の5点に端的にまとめられる
「デバイス/センサーとしての高機能化・高性能化」
「通信機能の進化」
「データ管理方法の進化(クラウド化)」
「多様なアプリケーション」
「AIによるUXの高度化」
先日読んだ『トヨタの強さの秘密』で賞賛されていた「主査制度」なんかも、この本では垂直統合型の旧式企業の限界を示す事例として取り上げられている。
大きな流れとして、著者の言っている垂直統合型から水平協働型の経済・社会へという方向性は正しいと思うが、旧型経済・社会がそう簡単に変わらずしぶとく力を持ち続けるのも現実だと思う。
そういう意味では、すでに旧型経済にがっつり組み込まれてしまっている自分のような世代よりも、これからビジネスの世界で活躍する若い世代こそが期待されている読者層なんだろうね。