昨日、出かける支度で家の中飛び回っている時間帯、朝10:30ぐらいでしょうか、高齢家族が見ているTVから『行列のできる法律相談所』再放送らしき音声が聞こえてきました。
島田紳助司会者の声の向こうに、珍しくサンドウィッチマンの声もしたので、動き回りながらヴォリュームを上げてもらったら、「いまだ一度もNHK『オンエアバトル』に出たことがない」という話。
ダテちゃんによれば「“色が違う”と言われて(出演させてもらえない)…」とのこと。わはは。どんなイロだ。金髪か。ネクタイの柄か。
音声だけですがその後トミー(←ボケ富澤。個人的に最近こう呼ばせてもらってます)が「こっち(=ダテちゃんを指すらしい)の親が堅いので、NHKに出ないとお笑いで芽が出たと思ってもらえない」とも言っていました。地方では可視聴チャンネルNHKのほかは民放1局か2局、って地域まだありますしね。都会在住経験のまったくない地方の高齢者ほどTV総視聴時間の中でNHKにチャンネルを合わせている時間比率が高いとも聞きます。
しかしねー。『オンバト』がサンドを“色が違う”を理由に門前払いしているとはちょっと意外です。確かに、特にダテちゃんは極道チックなヴィジュアルともの言いを看板にしてはいるけど、ネタそのものは極道路線ではないし、むしろツカみで“外見ヤクザっぽいことをトミーがくすぐると、「ペットショップやってんだよ」「遊園地でクレープ焼いてんだよ」と意外にカワイイ職業を名乗る”が定番になってもいる。見た目もチンピラヤクザ、ネタ中身もヤクザキャラネタのえんにちや、族ルックの超新塾が常連になって高得点連発しチャンピオン大会にまで駒を進めているのに。
ここで何度も書きましたが、01年に当地での収録に審査員参加したとき、本番前別室に集められてスタッフさんに全体の流れや注意事項を聞きました。そのとき「流さなかった玉を記念に持ち帰らないでね」などぶっちゃけた話をしてくれたのが、番組の総合構成(たぶん)を担当しておられた(たぶん現在も)井上頌一さん。ロマンスグレーと言うには若干野生的な風貌で、浅黒い、ビール好きそうな、ざっくばらんなかたでした。01年の当時は、新年度から23:55~の放送になったばかりで、「やっと日付が変わる前の放送開始にすることができた。この5分がタイヘンだったんです」としみじみ言っておられたのがいまも印象深い。
「色が違う」を理由にサンドウィッチマンを出演(“出”られるかは審査次第なので、正確には収録参加)させない意向が番組サイドにあるとしたら、言いだしっぺ張本人は少なくともあの井上さんではないだろうという気がしますが。
「色が違う」で久しぶりに思い出したのは、昭和44年頃だったでしょうか。奥村チヨさんのスマッシュ・ヒット『恋の奴隷』という曲が、売れていて奥村さんも何度もNHK番組に出演経験があるにもかかわらず、NHKだけで歌唱禁止、放送禁止になったということがありました。さすがに子供だったので正確な事情は読み聞きできませんでしたが、♪ 悪い時はどうぞぶってね アナタ好みの アナタごのみの 女になりたい… という歌詞がNHK的にイケナかったらしい、ということだけは伝え聞いていました。
前年の昭和43年ぐらいに“売れてても髪の長いグループサウンズ(=GS)はNHKには出られないらしい”“髪の短い、ブルーコメッツとかはOKらしい”とも聞いていたので、NHKっちゅうのは何だかいろんなことがわけわからない基準でダメになる放送局なんだなぁと思った記憶があります。
それでも子供なりに、「髪の長いGSは“不良”につながるからいかんのんだろう」ぐらいの解釈はできました。しかし奥村チヨさんの♪ アナタごのみの女になりたい は、何がどういけなくてダメなのか、さっぱりわからなかった。実家の親など周りの大人に訊いてみた記憶も、なんらかの答えが返ってきた記憶もありません。たぶん、訊いても「バカなこと考えてんじゃないよ」とはねつけられそうな空気を子供なりに察していたんでしょうな。
何十年もたって大人になってから振り返ると、♪ アナタ好みの…という歌詞そのものより、曲聴いて詞読んで「コレはダメだ、放送するべからず」と判断を下したNHKの担当部署の偉い人の、感性回路のほうがよっぽどいろんな意味でヤバかったんじゃないかという気もします。当時年齢お幾つぐらいの、どんな学歴職歴局内キャリアをお持ちのかただったのか知るよしもありませんが、愛読書の中に谷崎潤一郎『痴人の愛』は間違いなくあったことでしょう。もし08年のいまもご存命なら、渡辺淳一『シャトウ ルージュ』も。
年代の記憶があいまいなのですがその後奥村さんは♪ たまにはアタマをナデナデしてよ (『嘘でもいいから』)とか ♪中途半端はやめて (『中途半端はやめて』)など、直球で“いろんなプレイ”を連想させる歌詞の曲を続々歌っていくので、くだんのNHK担当氏も“放置したらイクとこまでイキそうな匂い”を感じて先手打ったつもりだったのかもしれない。まぁそんなことは奥村さん的にもNHK的にも時効でしょうがね。時代も変わった。
しかしサンドウィッチマンに、あの井上さん構成になる『オンバト』が「色が違う」とは。むしろサンド側の、それもご本人たちではなく事務所サイドがNHK向けにあまり積極的に営業かけてない、敷居が高い、ぐらいのことじゃないかと思いたいですが。『笑点』にもしっかり出て、あの平均年齢超高の客席から結構、笑い取ってるんですから。
『花衣夢衣』は第22話。真帆(尾崎亜衣さん)はいろんな、実に幅広い層の男性から好意持たれるんだなあ。友禅師匠(宮内洋さん)が勧めた縁談相手・家紋職人の西山(山崎秀樹さん)も、抜き打ち見合いもそこそこにお床入りかと思いきや、真帆が着物脱いで号泣し始めただけで「自分をもっと大切にしろ、きっと良い仕事ができる」と紳士で辞去。そりゃ初夜の床であんなに犬みたいにびぃびぃ泣かれたら何かスル気も萎えるというもの。
一方東京では、呉服屋おかみ修業のためよね屋に入った澪(尾崎由衣さん)は、いより(田岡美也子さん)のイビリまがい厳格指導にも「ハイッ。」「ハイッ。」と往年の河合奈保子さんを髣髴とさせる明るさ元気さで見事パス。金沢の水上家を訪れても、真帆と同じ“駆け落ち家出した妹(和美=萩尾みどりさん)の子”という立場にもかかわらず「あの泣き虫澪ちゃんがすっかり大人になって」と喜久代叔母さん(南一恵さん)の物腰が明らかに違うし、この辺り“男好きのする真帆”と“同性、特に親世代受けのいい澪”という個性分けがおもしろい。
昼ドラのヒロイン、思う相手となかなか結ばれないすれ違いメロドラマはつきものですが、“本命の彼氏より、こっちとくっついたほうがずっと世間的には幸せだしお似合いでは?”と客観的には思える、“当て馬”的男性人物が現われるのもつねです。友禅修業の先輩・安藤(長谷川朝晴さん)に続いて西山も、結構心根のいいヤツだった。しかも手に職あり。それに比べて将士(眞島秀和さん)は、結局、人間的・異性的にどこが魅力で真帆も澪もマジ惚れなのだろう。男性に免疫がないところに出会いがしら…ってだけな気がするがなぁ。
「使用人のつもりで働かせて戴きます」と平身低頭の澪を傍らで見守る将士に、いより「アンタは田所先生のお宅へ行って頂戴」。…“田所”と聞くと『愛のソレア』(04年)の洋一(半田健人さん)実家(=赤線“オアシス”)を思い出しますが、あちらはドラマスタート時点で昭和32年。こなた『花衣~』の世界は昭和28年。洋一さんはまだ中学生になったばかりで、美保(前田綾花さん)との出会いなど思ってもみなかったでしょうね。いや田所“先生”って付くから、洋一パパ(石田太郎さん)、継母(奈良富士子さん)のトコとはまったく別人かもしれないけど。久しぶりの戦後モノなので、ちょっと思い出しちゃいました。