だいぶ再生も遅れ、触れ遅れましたが、『爆笑トライアウト』5月29日(24:40~)放送は、新体制3回めで目が慣れてきたということもあるけど、『オンエアバトル』本戦未オンエアの“若手中の若手”競演にしてはかなり粒揃いだったのではないでしょうか。
一見して、明らかに可能性のない、どうしようもない組はいなかったと思います。
オンバト進出成ったほうから先に見て行くと、あきげん453kb会場審査2位はなんてことないネタだけど“ボケ秋山が相方の元気をほめる”の一本にして、それ以外のことをいっさい展開しなかった分テンポがよかった。朝青龍の顔マネから「誕生日がすごい」ぐらいまではバットにカスった程度だったけど、チュウチュウTRAINをはさんで「家で泥酔してた」のリフレイン、「俳優俳優芸人俳優」から尻上がりによくなり、終盤もうちょっと聞いていたいなと思わせてクローズできたのが勝因でしょう。2分半足らずの持ち時間を右肩急上昇曲線にはめた、使い方がうまい。
それプラス、キャイーン天野風の秋山が「男前」「カワイイ系」と褒め殺す石井元気が実際のところ“さほどでもない”というのがこのネタの肝でしょうね。『お試しかっ!』のAniコレで女装披露したときは、池上翔馬さんや山田親太朗さん(山田優さん弟)を上回り、“女王”杉浦太陽さんに迫る高得点だった秋山、要するに“地が女顔”なだけなのね。
順位不同になりますがテンポと言えばジンカーズ373kb会場5位。評判はネットで仄聞するだけで、『オンバト』でいつオンエアが見られるかと楽しみにしていたのですが、未オンエア組だけ集めたここでも5位にとどまってしまうわけだわ。この人たち、テンポがないんですよ。2分半で2回、冒頭も入れると3回も暗転があっては、昇って行って、よし笑えたと思った途端に水を浴びせられてしまう。どっきりメットとプラカードの冒頭、次の「死んでるんだぜ」は、大オチにきれいにつながっているのに、“道を訊く→物マネ”のくだりが何のためにあったのかわからない。4分半の『オンバト』で10組中上位半分に入るのも難しかったけど、この短い時間縛り競演での“10の2”も、ますます難しいかもしれないなぁ。
その点、会場1位465kbインポッシブルは、あきげん同様“1ネタ押し”できれいに決めた。冒頭は蛭川の“顔出オチ”っぽかったけど、「3人め」=浣腸のカンタロウのワザが、殺られ役井元のTシャツをビヨーーーンと突き出たところで、見てても気持ちいいくらいこれは(玉)もらった!と思いました。
カンタロウ役蛭川が「ポキポキポキ」とクチ効果音でワザのスタンバイに入ると同時に、井元が携帯電話演技の声を落とすなど、目立たないところでよく練習の成果が行き届きこなれている。長時間のオンバト本戦でのネタ選びがむずかしいかもしれませんが、オンエア期待したいですね。それにしてもこの“仕事人2009”、ガキ2人と女子高生というメンツじゃ、仕事の依頼しにくくないですか。
あと、この組が売れてメジャーになったら、新聞TV欄番組表とかではやっぱり、“…”と略されるのかしら。余計なお世話か。
あとはほぼ会場審査順位の通りで妥当だったように思います。3位449kbと、あきげんに僅差だったザクマシンガンは、ボケの数も多いし打率もいいので惜しかったけど、いけシャアシャアタイプのボケ山田に比べて、ツッコみ石川があまり活きていない。「何つうサービス実施してくれてんだ」「お客様でやっとります」などフレーズの端々にアンタッチャブル柴田的なセンスの良さは感じられるので、合格ライン到達の日は近いでしょう。
下位にとどまったほうから行くと、コンビ名は月河好みの美味しさ麦芽は10位181kb、ネタ以前に2人の波長もキャラも噛み合っていない感じ。「グッチと裕三」「代表取り乱し役」など笑いも単発だし、クロージングに物マネ、こともあろうに何が悲しくて“泉ピン子のスイーツ試食”と、聞いただけで生理的不快感催させまくりのネタをチョイスするか。
9位233kbキンデルダイクは、しずる風の青春コントのはっちゃけ版と思いきや、夕陽に向かってダンスから歌になったところで一気にテンションがばらけた。8位257フィフティカーニバルは、両方キモキャラではさすがに無理。どっちか一方は普遍性を貫かないと。
7位325kbシーランドは、大学生コンビとのことですが、もっと玉入ってもいい出来だったのにこの点数順位なのは、会場で見た感じ、なんか“ベテラン若手”並みに小さくまとまっていてフレッシュでないんだと思う。虫マネのボケ関谷の、21歳とは思えない父っちゃん坊やな感じとか、もっと斬新に活かせるネタができないものかな。
6位329kb慶はちょっとズルいね。「最後がチャラ男でこめんねぇー」の出のアドリブで軽く持って行ったし、考えてみればNHKってシブヤ系のお膝元なのね。いまどき、日サロ焼けに金髪で「ちゅりーす」「だりぃー」とか言ってるシブヤ系ってまだ実在してるのかな。爆笑問題太田の番組か何かで見かけたことがあるけど、本当にネタやる人だったんだ。“賽銭泥棒追いかけて捕まえてみたらダチで、あっさり放免”という大筋は好感持てるものでした。
ちなみに視聴者投票で、あきげん(704票)・インポッシブル(1134票)を遥かに上回る1358票かっさらい堂々の1位、『オンバト』挑戦権獲得。シブヤじゃない全国の視聴者からこれだけ支持されるんだから、単純に、ネタとは別にファンの多い人だったようです。本戦で旋風を巻き起こしてくれれば、視聴者の支持も報われるんですが。
個人的に惜しいなと思ったのは4位381kbのS×L。本戦挑戦権可否はともかく、400台は玉入ってもいい、2人の体格差というアピールポイントを活かした、なかなか考えたネタだったと思うのですが、やはり冒頭、巨漢の加藤が「パパが東南アジアに転勤」と説明したために、ナイナイ岡村似の酒井が繰り出す「日本と違うー」「全然おもしろくないー」仕草が、いちいち“当該地域・民族蔑視”に見えてしまった。
違う文化圏に入って生じるズレを笑いにするという方法論はシチュエーション喜劇の古典的なものだし、いま少しスマートで安心して笑える料理してほしかった。
この場合、“東南アジア”と限定しないで「知らない国に転勤なんて」と言ったらどうだったかな。逆に腰が引けて映るかしら。感覚の問題だけに微妙ですね。前回オンバトのツィンテルのような、日本語化しているカタカナ単語の語呂が芯になるネタではなく、現地の子に扮した酒井の、意味不な喋りや奇声や遊び方が、日本人加藤にことごとくじれったくカンにさわるという趣向のネタだけにね。
『トライアウト』も回数重ねてくると、“ツカみの重要さ”“ツカんだら手放さないこと”“何としても尻すぼみにだけはしないこと”など、2位までに食い込むための鉄則がだんだん見えてきました。
考えてみれば、これらはぜんぶ『オンバト』本戦でオンエアを勝ち取るための鉄則でもあります。同じパラダイムの番組が2本立てになるだけなら、2本作った意味があるのかなという気もしますが、とにかく『トライアウト』突破組の本戦健闘を願うだけですね。