イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

洗えないでしょ~

2009-06-15 18:29:53 | CM

新“ファブリーズW除菌”CMの、ピエール瀧さん一家はどうなってるんでしょ。瀧さんと、プードル抱いて鼻つまんでるあのママとのDNAで、あれだけいろんな顔の3兄弟が生まれてくるってのも、不思議なような楽しいようなですね。

まぁ、ドラマや映画の中の“きょうだい”“親子”なんてのは、他人の俳優さんたちが扮するもんですから、あり得ないルックスギャップの親子きょうだいが続々出てくる…と言うより、“そんなんばっかり”なのがデフォルトですが。

一郎・次郎・三郎の3兄弟は、一郎だけ制服が学ランの高校か、大学体育会にいるみたいだけど、次郎三郎はブレザーネクタイの学校で、せいぜい2年ぐらいずつしか年も離れていなさげ。ピエール父さん、短期集中型かつ計画的に仕事するタイプかな。

ただいまーと帰ってきたピエール父さんに三郎が「これ」と指さして、父さん「ファブリーズ?」に一郎が「ちげーよ!こっちだろ!」とプードル抱っこママの書き置きを示す、その“ちげーよ”が最初どうにも引っかかっていたのですが、昼帯ドラマの再生で毎日聞いているうちにかなり慣れてきました。

以前にもここで、『爆笑オンエアバトル』でのどの組かのネタ関連で少し触れた記憶があります。「違うよ」の意味で「ちげーよ」という崩し方、いつの頃からか、ちょっとガラ悪めの男口語として定着してしまいましたね。

母音のみ表記すると-ee-となるこれ式の口語崩し、いちばん古いと言うか伝統があるのは「無(な)い」を「ねぇ」(←「しょうがねぇ」「だらしねぇ」「あり得ねぇ」)、次いで「凄(すご)い」を「すげー」だと思います。

次いで「高(たか)い」を「たけー」、「怖(こわ)い」を「こえー」、あるいは「カッコいい」を「かっけー」も、「ねぇ」「すげー」に比べれば10分の1ほどの歴史しかないでしょうが、完全に“アリ”になりました。

ここまでは、-ee-に崩される元の母音は-ai--oi-です。

しかし、「ちげーよ!」の登場で、-au--ee-もアリになってしまったのです。

たぶん、「ちげーよ」の通用には、動詞“違う”の名詞形“違い”(=母音〔-ai-〕)が念頭にあるのだと思います。江戸っ子言葉などで、「これこれこうじゃねぇかい?」「ちげぇねぇ」と言うときの“ちげー”が潜在するから、その投影、延長線で「ちがうよ」も「ちげぇよ」になるベクトルが生ずる。

もう15年以上前になりますが、所謂“ら抜き言葉”(=「見れる」「着れる」「食べれる」)や、平板アクセント(=「ドらむ」でなく「どらむ」、「バいく」でなく「ばいく」)が問題になったとき、「こういうことは日本語の“乱れ”ではなく、“揺らぎ”“変化”だ」と肯定的かつ寛容にとらえていた識者の方がおられました。月河も、「ら抜き良くない、嘆かわしい、改めるべき」よりは、どっちかと言えば「人間の使う言葉は人間同様生き物だから、使いやすく言いやすいほうに移行する現象を全否定すべきではない」という立場で、“揺らぎ変化”派でした。

月河の私見では、言葉は“表現・コミュニケーションの用をなさなくなった”ときに初めて“乱れ”と言うべきです。

ら抜きや平板アクセントのような、“言いやすく通じやすくするための変化”なんかより、欧米語をカタカナ化しただけのお役所・政治家・特定業界言葉や、それをさらにアルファベット頭文字だけで表記した“IT”“ATM”“CEO”などの類いのほうが、よほどたちの悪い“乱れ”だと思います。

言葉というものは、想念や考え、イメージを外に向かって表現し、他者に伝達するために存在するのに、“見ただけで、読んだだけで誰にでも、或いはより多くの人に、わかってもらえるように”という意思がまったく感じられない、こういう造語・用語・用法ほど悪質な“乱れ”はありません。

「ちげーよ」はむしろ“崩れ”と言ったほうがいいと思う。“崩壊”“崩落”の“崩”ではなく、“なし崩し”“崩し字”の“崩”です。

形容詞「すげー」「たけー」「かっけー」の流れと、名詞「“ちげぇ”ねぇ」の伝統とが突き合わさって、動詞「違う」を「ちげー」に崩せしめた。これは“乱れ”と称すべき外来の邪悪さではなく、口語のエネルギーのダイナミズムがもたらした、むしろ健康的な崩れだと思います。

-oi-〕〔-ai-に続き、-au-〕も〔-ee-化できることになったのだから、ふとしたことから戦隊や仮面ライダーになった一般人ヒーローが若干ヤンキー、チーマー寄りだった場合「地球を守るためにオレ、戦うよ!」の代わりに「タタケーよ!」と叫ぶ日も近いかもしれません。

…それにしても、あのファブリーズママ、旦那の加齢臭と思春期息子たちの体臭には「耐えられません。出て行きます。」なのに、犬のペット臭はまったく平気っつうか、鼻先に抱いてもむしろ気持ちよさそうなのね。まぁ、犬にせよネコにせよおウチ飼いペット好きの人たちって、外から訪ねた者からするとアタマから風呂敷おっ被せられるような、信じられねぇ異臭の立ちこめた家でも全然平気で暮らしてることが多い(訪ねたほうもアラ不思議、5分~10分居ると平気になる)から、このCMも“ペット臭も除臭できますよ”というメッセージなのかもしれませんね。

コメント
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