イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

汽笛に送られて

2010-09-10 14:48:41 | 朝ドラマ

24(トゥウェンティフォー)』と言えば、全体の視点がかなり“右”寄り=“アメリカ合衆国は正義と人権擁護の名のもと外国に積極的に武力介入する、世界の警察である”をばりばり肯定した価値観のお話なので、ある程度アタマを空っぽにして視聴しないと、日本人の中にはかなりムカッパラ立ってくる人がいるかもしれない。

“国益(←自国民の安全と繁栄以外にも、国内企業財界の‘儲け、利得’も含む)のためなら流血、(多少の)人死にもやむなし”“捜査官、政府機関職員たるもの、自分と自分の家族より、無辜の国民の生命を優先すべし”“無辜の民を救うためなら、拷問上等、暴力上等”というメッセージが毎シーズン、毎話おもてに出て来るので、いちいち「本当にそうか?」「自分ならどうする?」「自分はよくても家族にソレを求められたら?」と引っかかっていたら胃にもたれる。

24(時間)だけに、文字通り「明日までかかる」。

ここは「ジャックかっけー」「死なねー(笑)」「大統領職怖えー(震笑)」と、“徹底的にその場限り”精神で楽しんでいくべき。10月からラストシーズンのDVDがレンタルスタートするようなので、首尾よく借りられたら、“24と狂暑の2010年夏”も完結。二度三度とリピートすることも一生ないでしょう。“その場限り”のエキサイティングに命をかけた、こういう娯楽作品もあっていいと思います。

さて、『ゲゲゲの女房』11日(土)までイトツじいちゃん(風間杜夫さん)ウィーク。若い女性と銀ブラ浮気?と思いきや、劇団座付き作家兼女優の川西さん(入山法子さん)が、境港で映画館を営んでいた頃一緒に仕事をした活動弁士のお孫さんとわかって、向こうからお手紙をくれて交流が芽生えたのでした。

イタチ浦木(杉浦太陽さん)から目撃情報を聞き出して、ひそかに気をもんでいたイカルお義母さん(竹下景子さん)が、「ヤキモチか?」と訊かれて躍起に否定するところがなんともかわいい。妬かれて満更でもなさそうなイトツさんもまた。

日頃「ダラ」「どげだいならん」等と、絹代さんは修平さんの浮き世離れオッチョコぶりに、修平さんは絹代さんのクチやかましさや、芸術を解さないド現実主義ぶりに、お互いに文句たれ合っているけれど、結局はいいところを認め合いリスペクトし合うナイスご夫婦なんですね。

明治の世代でも、封建的夫唱婦随の型にはまらない、こういう地合いで長年月を添いとげるご夫婦もいる。「イトツ」「イカル」と、自分の親をアダ名で呼びつけるしげるさん(向井理さん)たち兄弟にしても、決して親を蔑んだりないがしろにしているわけではなく、彼らのユニークさや人間的な魅力を享受して、感謝とねぎらいの思いを忘れないからこそのイトツ呼びイカル呼びでもあるのです。

布美枝さん(松下奈緒さん)&しげるさん夫婦とは違った、でも「これもアリ」な幸せ夫婦。布美枝さんと安来の源兵衛さん(大杉漣さん)&ミヤコさん(古手川祐子さん)との親子関係とは違った、でも「なんかいい」ユニーク親子。

夫婦では、こみち書房美智子さん(松坂慶子さん)&政志さん(光石研さん)に、北西出版戌井さん夫婦(梶原善さん馬渕英俚可さん)、登場場面は少なかったけれど赤羽の暁子姉ちゃん(飯沼千恵子さん)と塚本さん夫婦なんかもいましたっけ。「これが唯一無二の正解=あるべき夫婦像で、ほかは間違いか不出来」なんてものは存在しない。いろんな人が、いろんな形で夫婦、親子、きょうだい関係を作り紡ぎ出していけばいい。

何が正しくて、何が誤りか。何がカッコよくて、何が恥ずかしいか。ひとつの価値観物差しを称揚し、押しつけることをしない。親世代夫婦のさりげない描写を通じて、またひとつ窓が開け放たれ、風通しがよくなった今週の『ゲゲゲ』でした。

それにしても川西さんから、かつて一緒に芝居談義、映画談義に花を咲かせていた弁士の一学さんがとっくに鬼籍に入って、十三回忌まですませたと聞いたのは、修平さんには地味にこたえたかもしれない。親しかった同年代の者が次々にあの世の人となっていくのは、年をとると年ごとに身にしみるようです。「若い美人を見ると5歳若返る」と息子たちに愛をこめて陰口されているイトツさんにしても、それは“目”の若返りにすぎない。

自分が若かった頃、働き盛りだった頃の話をしたとき「そうそう、見た見た、あったあった」「自分もそうだった」と思い出を共有してくれる人が誰もいなくなり「そんな古い事知らない」「意味がわからない」「その話何度も聞いた」とシラケ顔の若い者ばかりになるのは、年寄りには「オマエも早くアッチへ行け、コッチに居られたら邪魔だよ」と言われているようで耐えがたいはず。

自分より矍鑠として記憶も確か、クチも減らない、ひと言、昔話を切り出せばさらに遡った話で応酬してくるイカルさんがずっと脇についていてくれただけでも、イトツさんは幸せな晩年。畢生の悲恋大ロマン『第三丸爆発』が、ハリウッドで翻案されて『タイタニック』として公開される10余年後まで長生きして………って、それはないない。

コメント
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