昨夜はまた『お試しかっ!』を出会いがしら視聴。アレ?先週の予告では“冒険レストラン”だったから録画予約しておかなかったのに、“チャレンジ漫才”やってますよ。しかもチャレンジャーが笑い飯とサンドウィッチマン。しかもしかも演順は抽籤だったらしく、番組ホストMCのタカアンドトシがトップバッターだった模様。ん゛ーー見たかった。
笑い飯は“ガッチガチの縛りありでも結局Wボケの得意パターンに”という転帰が読めたので、見逃してもさほど惜しくない。
白眉はやはりサンドウィッチマンでしたね。この企画自体この人たちのためにあるような感じ。何がおもしろいって、2時間に制限されたネタ打ちの過程自体がおもしろいという。中堅どころの小劇場のお芝居なんかでも、「コレ、リハーサル立ち稽古覗かせてもらったら、絶対そっちのほうがおもしろいだろう」と思えるノリの演し物がたまさかありますが、サンドはネタ打ちがおもしろくて、本番もおもしろいから言うことなし。
北京五輪がらみの7つのキイワードをもれなく織り込んで一本のネタにするという課題で、それぞれのワードについて伊達ちゃんの「こうツッコミたい」・トミーの「こうボケたい」をフリーで出して行って、突き合わせてストーリーを作っていく手法もさることながら、ネタ正味5分半弱の中で、開始2分過ぎまで7ワードをひとつも出さないのがすごいと思いました。
前半できっちり笑かしのレールを敷いてスピード(←それこそ)に乗せておけば、後半が多少無理クリのこじつけになっても成立するという自信があるんでしょうね。名人の料理が“(刻んだりたたいたり下味つけたりの)下ごしらえで手間9割、実際の調理は1割”というのと同じ、この人たちは完全なる“前半型”。TV でのオンエアでもそこでまず有利。
もちろん急ごしらえでボケ・ツッコミ片方、あるいは両方飛んだ箇所も一再ならずあっただろうけど、それを考慮しても良質のお笑いに不可欠な“気持ちのいいムダ”のまぶし具合が絶妙すぎる。「室伏の“屋号”あげるよ」「あと4センチでジャイアント馬場じゃねぇか」など、きっちりしたボケ→ツッコミでなく“引っかかって笑ってもいいしスルーしてもいい”ぐらいの体温での、単発くすぐりを置いといてはすっとぼけて先に行く、そのセンスが抜群。
駆け足になってもおかしくない終盤1分でたたみかけるように北京ダック・万里の長城・開会式を入れてきたのもすごすぎる。特に“北京ダック”はこの流れでどう入れるんだ?と思っていたら、どうしていちばん笑わせてくれたじゃないですか。スタジアムで室伏選手の格好した金髪メガネの伊達ちゃんが、北京ダックを投げて生き返らせる絵が脳裏に浮かんだら、もう笑わずにいられない。
しかも最後の最後まで残った“開会式”の入れ方、誰があの方法論を想像できますか。ハンマー投げの投擲後の雄叫びにしてしまうというだけですごいのに、“最後に残ったあのワードどこにどう入れるんだろう”→“(何て雄叫んでるか聞き取れないけど)さてはそう来た?”→“やっぱりそう来たか”という客・審査員の姿勢、読み回路も込みで笑いにしてしまった。夜半のTVの前で(ちょっと古いけど)まさに「テクニシャン呼んだな!」と指さして叫びたくなりました。
M‐1から彗星のように表舞台に登場して半年の彼ら、ネタ打ちを見ていると2人のネタ作りに向けて放射する“体温”がぴったりマッチしているのがいま何よりの強みだと思う。タカトシも同じで、彼らの場合ブレイク後2~3年経過しているわりに“体温差”が拡大してないことが消耗の少なさにつながっている。
ボケでもツッコミでも、どちらかが「ネタ作るよりおもしろいこと見っけた」になって、見つけた先から戻ってこないと、お笑いコンビはおもしろいようにおもしろくなくなっていきます。
概ね、2人の一方か、両方相次いでか、アイドルなりモデルなり有名どころ美人女性との熱愛スクープが出たときがその目安と言っていいと思う。インパルス、品川庄司、次長課長、麒麟辺りが典型。
20代後半から30前後の、たぶん思春期にはモテなかっただろう男にとって、やっと振り向いてくれるようになった綺麗どころ女性よりネタ打ちがおもしろい道理がない。戻って来るわけがないのです。
その意味では、サンドは当面ヴィジュアル的に安泰でしょう。まだまだおもしろいはずだ、ネタ作りが。
モニタールームで見守るタカトシの、サンドのネタ見せ中の隠しきれないテンパり具合もなかなか見もの。あらかた見逃したけど、笑い飯のネタ中はさほどの前のめりではなかったのではないかな。『爆笑オンエアバトル』で足かけ3年チャンピオンに君臨したタカトシも、やっぱりM‐1優勝はぜひ欲しいタイトルだったのね。
タカトシのM‐1ラストイヤー(04年第4回、優勝アンタッチャブル)は、審査員全員に少しずつ「彼らなら、自分がいまここで高評価してやらなくても大方がするだろう」と思わせてしまった“正統”感、安定感が逆に災いした。昨年のサンドは敗復からのいきなりの決勝参戦ということもあって、審査員たちに“一期一会”感があった。これだけの差だと思う。クロージングでトシが言ってたように、本当に収録後、皆で飲みに行ってたら嬉しいですね。
最後に何が可笑しかったって、ご意見番役(なぜか)関根勤さんのサンド評「こないだのセームシュルトの回し蹴りぐらい(凄かった)」が全然可笑しくなかったところ。みずからがこんだけおもしろくない人が、他人の、しかも大後輩のネタに「あそこがあれくらいおもしろかった」ってゴタクを述べて番組になってるってのが可笑しい。…ま、関根さんはいい人だしお笑いを愛してくれてるのは好感持てますけど。“全然可笑しくないという、そのことが可笑しい”、そんなお笑いの消費のし方も、あまり認めたくないけどアリなのだな。
ところで、“谷亮子選手”がワードに来たら、月河なら「田村でも金、谷でも金、ママでも金…」ときて「…菅井きん」と落としたくなりますが。3組中、誰も演らなかった?……………………
……だからっ!「可笑しくないということを可笑しがる」タームもあるんですってば。