イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

発音が唸り声と同じ

2008-09-05 23:22:48 | 再放送ドラマ

当選すればその年に73歳になるジョン・マケインさんがアメリカ大統領選共和党候補となっていることについて先日、どうしちゃったの若さ賛美だったはずのUSA?とここで書いたのですが、党大会の映像など何度か見るとからくり、と言うか意味するところがわかるような気がします。

1936年生まれで5年にわたるベトナム捕虜経験を持つこの人は、“戦争耐性に富む”ことをもって61年生まれの民主党バラク・オバマさんに対抗しようとしているのだと思う。

演説や公式ステートメントでそうは言わないが、「世界には、好むと好まざるとを問わず、それが正しいか正しくないか以前に、“戦争”はある、存在するのが普通の状態だ」という大前提で、この人は立候補し演壇に立っているように見える。

“この国の大統領選毎度のワーワー、ウォーウォー旗振り政治ショー式党大会もいつ見ても違和感がある”とも同じ記事内で書きましたが、「世界に戦争はつきものだ」「政治とは戦争をコントロールすることだ」という前提がある国と、ない国では、政治の下地の段階で空気感が違うのは自明でした。

世界に戦争がつきものなら、巻き込まれて被害者になるより、みずから仕掛けて戦利を得るほうがはるかに得策であり、政治としてサクセスフルだ、という考え方も当然ある。捕虜拷問時の負傷の後遺症でアクションがぎこちないマケインさんの、損傷部分をパテで固めたような、“盛り土”をしたような体型や顔貌は、“戦争被害者”ではなく“苦戦でも敗退しない闘士”のアイコンとして、党大会の演壇でライトを浴びているのです。

浅黒く柔軟そうな体躯、エキゾチックな容貌で“若く廉直な切れ者”をもって鳴るオバマさんが、戦争はあるべきではないと教えられて育った世代の代表なら、マケインさんは「べきではなくても、予めあるのが世界であり政治というものだ」を譲らない、冷戦時代以来の“アメリカの政治家らしい政治家”世代代表。

月河はかねてから「病気は医者(or病院、薬)では治らない」「治るのは本人の生命力、反発回復力、免疫力」「医者その他は援助するだけ」と考えていますが、同じように「国も政治家では良くならない」と最近つくづく思うのです。TVの街頭アンケートで、“いかにも一般ピープル”らしい風情のおばさんやフリーターの半笑い顔でよくオンエアされる「誰が(総理に)なっても同じ」という言辞とはちょっと含むところは違います。

国がいまよりましになるか、ひどくなるかは畢竟、国民自身にどれだけ矜持があり、自分及び自分以外の近しい人たち、自分の日々やっていることを尊く大切に思う気持ちがあるかにかかっていて、政治家はせいぜい“そこに極力、冷水を浴びせないようにする”ぐらいの影響力しか持ち得ない。

しかし、たとえばマケインさんの、星条旗の下の満身創痍から立ち直った“修理後”のような容姿や話し方を見ていると、「政治家で良くなる(あるいは悪くなる)国」というのが、日本ではないところには確実に存在するのだな、との感を新たにします。

あるいは、「国民が“政治家で国が変わる”を信じ謳い上げられる国」と言うべきなのでしょうか。戦争と言えば、みずからコントロールし得るものではなく、“巻き込まれ脅かされて惨たらしい目に遭う”もの、というイメージしか抱けない此岸の国民としては、対岸の政治ショーをどう見守り評価すべきなのでしょうか。

再放送の『その灯は消さない』は第44話。ウソ妊娠で揺さぶるも不発に終わった桂子(麻生真宮子さん)からの自宅への嫌がらせ電話砲で、智子(坂口良子さん)に浮気がバレちゃった藤夫(柴俊夫さん)の「…どーしたんだ?ぼんやりして?」としらじらしく探り入れる目つきがよかったですね。こういう、昭和滑稽風味のベタさって、ステレオタイプな場面だからこそ役者さんの腕の見せどころという感じ。

風俗嬢晴美(有沢妃呂子さん)に夢中の健一くん(芦田昌太郎さん)に「彼女と付き合うことは認めてもいい」とサプライズを放ち、「但し受験はちゃんとしろ、その娘だって、自分のためにおまえが進学をあきらめたと知ったら困るだろう」「その娘のためにもそうすべきじゃないのか」とアメムチで諭す姿も、桂子からの度重なる電話攻撃に「お父さんだってヘンなオンナから電話かかってくるじゃん」と健一くんに弱み握られた後だけに、かえって説得力がありました。やっぱり思春期男子のお父さんは、清廉潔白一本槍よりも“黒焦げにならない程度の火遊び経験”はあったほうがいいなあ。

晴美役の有沢さんは、一時期の三原じゅん子さんを丸くしたような、(ほぼ死語だけど)“おヘチャ”系の可愛い子ちゃんで、お水どっぷりの生活ながらほのかに土の匂い家庭的な匂いも漂わせる辺り、『白と黒』第一部の華だったサリナちゃん(桂亜沙美さん)を思い出させます。賤業の泥の中に咲いた一輪の白い花、“心だけはお嬢さまより清らか”“オレだけの天使”という幻想は、やはり作家なら一度は書いてみたいキャラジャンルのひとつですよね。

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萬流

2008-09-04 01:02:06 | テレビ番組

樋口可南子さん。出先のTVNHK『スタジオパーク』で久しぶりに動く近影を拝見しました。『篤姫』にも出演されているようなんだけれど、月河が観られる週はいつも樋口さんの出演ない回なんですよね。

実家の母が80年代初頭までルーティンにしていたポーラテレビ小説出身の女優さんで、『こおろぎ橋』は78年か79年の放送だったと思います。冬休みか春休みか、帰省して、朝イチからTVを観られる環境のとき、同じTBSの、鈴木治彦さん司会の朝のワイドショーゲストとして出演、同ドラマの主題歌をサービス的に♪ 生きてゆけ 生きてゆけ 青春たち…とみずから歌っておられたのが記憶にあります。歌はあまり得意じゃないようでしたね。愛嬌愛嬌。

 樋口さんと言えば、お名前を聞くたびに“同類項”として浮かんでくるのが和田アキ子さん、最近体調がすぐれないのかお顔を見る機会がありませんが南田洋子さん。

そのココロは“見るたび髪型が同じショートカット”

女優さんに珍しいと思うのです。今日の『スタパ』では「洋服も着物も好きなので、どちらでも合うスタイルということで自然とこうなった」と言うようなことを答えておられましたが、洋服にも着物にも合うことを目標にするならある程度までのロングがいちばんいいし、襟足が邪魔にならないショートにもいろいろある中ずっとあのスタイルで一貫しているということは、基本的に“頑固”“メンドくさがり”な人なんじゃないかと思う。

あと、演技や役柄などで「きれいだなあ」「いい女優さんだなあ」と思うたびに、脳裏をかすめてほぼ帳消しにするのが、“笑ってない時でも鼻孔がフクラんでいる”あの旦那さん。かつ、アノかたと結婚する前段階で「妻子ある人を好きになったのではなく、好きになった人にたまたま妻子があったのです」とレポーター、カメラの前でうそぶいたという事実。

言葉も、根性も立派だと思いますけど、アノ鼻孔をお持ちのかたを念頭に発せられた言葉ですからねぇ。

つくづく、女優さんの結婚、およびその広報というかアナウンスってむずかしいと思うものです。どんなに感動の大作で、胸を打つ演技をされても、ほぼ帳消しですから。

今日は貴重にも音声が聴ける場所での待ち時間となったのですが、武内陶子アナから一問一答のたびに「~するからぁ」「~してぇ」と“ある時代の若者口調”のままなんですね。

かつ、その“ある時代”は、鼻孔ダンナさまのコピーライター、流行リーダーとしての全盛期と思しい。

もう20年近く前、「あの美しい女優さんが、略奪婚するにこと欠いてまさかアノ人をねぇ…」と思った記憶がありますが、いまだにこういう喋り口調だということは、意外に趣味嗜好や品性などがもともと“全共闘崩れ”に親和性高い人だったのかもしれない。言葉をかえれば若々しい(今年満50歳になられるようです)、老けていない、ということでもありますが。

見かけでは人は値札を付けられないものです。末永くお幸せに。

再放送の『その灯は消さない』は4142話をまとめて視聴。「君と一緒に松本には行けない、別れよう」と川合(大橋吾郎さん)に切り出された律子(吉野真弓さん)。「君は男と女が暮らすことに理想を持ってる、それが俺には苦しい」と言う川合の言葉、どんなに「君のお母さんとは関係ない、それだけは信じてほしい」と言い添えられても、律子には“やはりお母さんに未練があるから?”と聞こえてしまう。川合は嘘はついていないのだけれど、律子にとってはその通りではないのです。

ドア越しに「もう一度チャンスを下さい、あなたの重荷にならないように頑張るから、居るのなら返事をして」と叫ぶ律子、涙をこらえて居留守を使い続ける川合。ベタだなあと思いながら、やっぱりじーんと来てしまいますね。昼帯ドラマで見たかったのはこういう場面だったんだなあと実感します。

智子(坂口良子さん)への断ち切れない思いとは別に、川合はまだ律子が好き、と言うより、“智子とともに18年前凍結しなければ進めたかもしれない、もうひとつの自由な人生”のために、川合は涙している。律子にとって川合が“自分を変えてくれるかもしれない男に必要とされ、愛されていることを実感しながら支える人生”の象徴であるように、川合にとっても律子は、開発して楽しい若い娘というだけではない。何かが足りない、何かが空虚な、いま現在とは違う人生に“飛ぶ”ことの象徴だったのです。

世間的に安泰な結婚という形でまとまるのにはどう見ても適さない2人だったけれど、人が人に惹かれ、求め合うということはこういうことなのだろうと思う。

ここまで来たら、川合と智子が18年前の元サヤにおさまることでも、律子が川合の心を智子から奪い返すことでもない、“それぞれの解放”“名実ともに新しい人生”を願うしかハッピーエンドはなさそうです。

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あ、そう

2008-09-03 00:08:06 | ニュース

ついこの間だったような気がする組閣発表のとき、「サプライズはなかったね」「小泉さん流はできないし、嫌いなんだろうね」と評されていた福田康夫首相、最後の最後にドカンとかましてくれましたな。時あたかも91日。“防災の日”とはよく言ったものです。

 さっそく後継候補にマスコミ辞令が飛び交っていますが、不思議なのはいつの間にか麻生太郎さんが「国民的な人気者」ってことになってることですね。どこの国民に、だろう。かつての“タレント好感度ランキング”で常勝だった山田邦子さん、みたいなものかな。周囲で誰も「好きだ」「ファンだ」という人がいないのになぜか1位。

まあモノマネ、顔マネ、振りマネしやすいタイプではありますね。特に福田さんに比べればね。麻生さんでなくても、誰を持ってきても福田さんよりはネタ化への表出力は優る。いまごろ劇団ザ・ニュースペーパーの人たちが仕込みに忙しいことでしょう。メンバーのあの、太平シローさん似の人、安倍晋三さんは結構似ているけど、小池百合子さんはからきし似てないのでどうにか求む改善。

『白と黒』は第46話。登場人物数がこの枠の、3ヶ月クール昼帯ドラにしては目立って少ないので、初っ端から手もなくわかってしまうのですが、取材と称して研究所に入り込んだ女性ライター真紀(眞野裕子さん)が、実はひそかに聖人(佐藤智仁さん)の差し金で動いていると、同じ雑誌ページの、同じ透明パウチに入れた企業ランキング表を持っていることで提示する表現が、時間の置き方などなかなかクールでした。

終盤、聖人がダーツの矢の二本めを放つと見せた瞬間に、夕闇の研究所エントランスから真紀を送り出す標的中村(久ヶ沢徹さん)に切り替わるカットも、ありがちだけどスマート。「私はゴーストライター、日陰の存在」発言で中村に“あぁオレも仲間だ…”と感情移入させておき、「聡明な人格者」「もっと自分を評価すべき」と持ち上げてヘッドハンティングの“人参”で釣る。昨日放送45話の、一葉(大村彩子さん)に見せた和臣の偽筆サイン入り手紙といい、聖人の“言ってほしい言われたいと思っていることを言ってやる砲”は的確です。

ただ、以前再放送中の『その灯は消さない』を引き合いに出しましたが、このドラマ、あまりにもエピソード数・サブストーリー本数が少ないので、“人間の二面性”“愛の表と裏”という深遠かつ変奏し甲斐のあるはずのテーマも、丁寧に扱われているわりに逆に底浅く感じられてしまうのがいかにも残念です。

今日も、礼子(西原亜希さん)が「県の財団に行ってくる」と章吾(小林且弥さん)に偽って青の館を訪ね、ホームバーカウンターで聖人と相対する場面には、もちろんあの(桐生家にオリジナルがある)婦人像のレプリカが掲げられているのですが、和臣の先妻彩乃が気に入って買うようすすめたという、当時は無名・いま大家の画家をめぐる話も、いつものこの枠のドラマならもうひとつの謎仕立てにして掘り下げられ、どこかで聖人が狙う(あるいは、狙うとうそぶいている)研究機密の話と接点を持ったはずです。いまやこの絵、“無駄に飾ってある”に過ぎない。

他にも礼子が彩乃のすすめで一度だけ電話し声だけ聞いた、生き別れの生母をめぐる話、若手研究員・小林(白倉裕二さん)の学資を負担してくれたという兄の話、田舎暮らしに辟易しているらしい中村の妻、そして二部に入ってから一葉の言葉からしか動静が伝えられない、彼女の実両親・秋元夫妻…せめて仲本工事さん扮するクリーニング屋篠塚が町の噂のひとつも持ち込んでかき回してくれないかと思うのですが、こちらも二部に入ってまったく姿を見せなくなりました。燃料高騰で転業か廃業でもしちゃったのか。

聖人の和臣毒殺未遂事件の捜査や裁判に携わったであろう警察か弁護士を後半に出没させてもよかったし、なんなら聖人が桐生家に帰ってくる前の海外放浪中何をしていたかという話を引っ張ってくるのも有りだったでしょう。

話の幅がさっぱり広がらないまま、さして強調されていたとも思えない沖縄のゲットウについて「沖縄に研究所を建てる私たちの夢」なんて礼子に言及させるからまたしても“そうだっけ?”“扱いが不当に重い”と感じてしまう。

逆に、41話でまだ聖人の企みを知らない一葉が、聖人のための夜食にオシャレなサンドイッチを作っている場面では、13話で聖人が礼子のアパートを不意打ちし朝食に作ってやると言い、材料の買い出しにまで行ってくれたのに章吾の来訪で立ち消えた“クロックマダーム”につなげる流れが、いつ出てくるかとわくわくしたのですが、まったくつながらなかったこういう細部から、日数を置いて別の状況の細部にスライドし、懐かしさとともに観客の胸を衝くやり方は、言葉は悪いけど今作の脚本家チームはあまりやる気がない様子。

それよりも、複数脚本家体制の悪い面が出ていると言うべきなのか、どうも根本的に一部~二部を通じての“物語の全体像”が構築できないまま書き継ぎリレースタートしてしまっているようなのです。

エピソード数が多すぎて、話が切り出されたそばから次々放置、ってのも困ったもんですけどね。例としてすぐ作品タイトル浮かんでこないけど。

…「浮かんでこない」って言っておいて無理矢理絞り出したように挙げるのも失礼だけど放送中のNHK『瞳』なんかかなりそれ式の困ったドラマかもしれない。週ゲストキャラが出ては退場、出ては退場、アノ人いまどうしてる?アノ件どうなった?に誰も言及しない。

とにかく長丁場の、特に原作なしオリジナルの連続ドラマはむつかしいです。個々のキャラがある場面限定でキュートに見えることはあるのだけれど、お話としてなかなかスイートスポットに来ないものですね。

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それを言うならプライバシー

2008-09-02 00:10:39 | ニュース

共和党大統領候補に指名されたサラ・ペイリンさん44歳、イラク出征兵士からダウン症の乳児まで5児の母、ミスコン賞金で大学進学、同性結婚や人工妊娠中絶には絶対反対のガチ保守派などいろんな情報が怒涛のように媒体を賑わしていますね。

無名の女性が一躍スポットライトを浴びると必ず1件は出てくる“若かりし日のそっくりさんヌード”も早くも流出したらしいですな。洗礼洗礼。出回っている情報と、指名受諾演説でのイキオイからすればもちろんこれぐらいのことでビビるタマじゃないんでしょうけど、当然今後“学生時代の元彼の赤裸々告白・サラはこんなプレイが好きだった”“ハメ撮り写真”なんてのも出てくることでしょう。

しかし、アメリカの大統領選挙というのは、民主・共和両党の候補指名から通算すると本選挙のまる1年前ぐらいから延々やってる気がするのですが、向こうの政治集会っての?スピーチする候補者なり指名受けた人が演壇で「なんとかかんとかチェンジン!」「なんちゃらかんちゃらスターティン!」とか拳振り上げたり指を突きたてたりするたびにスタンド客席からウォーッと唸り声のような喚声が上がり旗やプラカードが打ち振られる、あの風景は4年に一度ニュースで見るたびに、脱力とともに「…あーあ」と思いますね。

民主主義、デモクラシーってのは、封建主義や絶対主義の圧制から脱すべく先人が知恵と流血で獲得した輝かしい、万難を排して守るべき制度であるように社会科では教えられてきましたが、“世界における民主主義の学校”ヅラしている国の、元首を当該国民が一票で選ぼうとしている現場がこんなキッチュで騒々しい、演歌歌手の周年リサイタルみたいな場所だとしたら、デモクラシーなんてほとほとやりきれないもんだなという気がする。

第二次大戦敗戦後の日本は、好むと好まざるとにかかわらずアメリカ合衆国主導のもとに、アメリカをお手本として、「アメリカ、かっこいいな」「アメリカ進んでるな」とこよなく憧れ、アメリカに肩を並べることを目標に万事走ってきましたが、衣食住や映画・音楽などのエンタメ分野はともかく、少なくとも政治は真似しないほうがいいですね。理屈抜きに、カッコ悪いし、気持ちが悪いもの。

あの「なんちゃらかんちゃらスターティン!」「ウォーッ!」の旗振り応酬は、先月さんざん話題になった北京五輪のクチパク歌唱に相似な気色悪さがある。

そう遠くない昔、「日本も議院内閣制で、衆院議員の互選で元首を選ぶのをやめて、国民の直接選挙による大統領元首制にしてはどうか」という議論も一度ならずあったそうですが、立ち消えになったのも当然でしょうね。人口ベースが違うにしても、何千人も何万人も入るハコが一杯になって、短期的にせよあれくらいの熱気が充満しなければ、一国のトップを一般国民の一票で選ぶまではとてもできないだろうし、それは日本人に向いていない。

決して褒められた話ではないけれど、“働いてんだか働いてないんだかよくわからん代議士たちが議員会館や料亭なんかでごちゃごちゃ暗闘した結果の首班指名”“その代議士を選ぶ選挙の投票率は50%台”ってのが日本に似つかわしいデモクラシーなんだろうと思う。

全然話が違いますが、“デモクラシー”という言葉を文中に使うたびに、以前ここでも書きましたよね?長嶋茂雄さんが故・亜紀子夫人と婚約中、しつこく追いかけ回していたゴシップ記者に言った言葉「ボクにもデモクラシーがありますから」を思い出します。

ところで「ペイリン副大統領候補に」のニュースで月河がいちばんびっくりしたのは、彼女を指名した当のマケイン大統領候補が、この829日ですでに72だということでした。

 いいのかUSA。かつて19112月生まれ、80年秋に69歳で大統領に選出されたロナルド・レーガンさんが「就任早々70代に突入する大統領なんて」とネガティヴな視点で見られ続け、二期め途中での腸ポリープ、前立腺癌など健康問題が公表されるたびに対立陣営やマスコミからはガバナビリティを疑問視する声も出たのを共和党、アメリカ国民、もうお忘れなのか。

レーガンさんは無事、二期8年を全うして満77歳でホワイトハウスを去りましたが、マケインさんがもし大統領になったら、なった年にいきなり73歳ですよ。娘世代のペイリンさんを副に選ぶのも、バランス感覚、人気取りとしてはもっともかもしれないけど、“若さ”“マッチョ”を称揚してやまなかったはずの我らがUSAどうしちゃったの。戦後生まれのクリントンさん、ジョージ・ブッシュさんで「若いとかえってロクなことがない」と身にしみてしまったのかしら。

対立候補バラク・オバマさん47歳の若さへのアンチってことかな。なんかUSAもいまイラクとかサブプライムとかハリケーングスタフとか「いろいろあってヤケクソ」って感じもします。道連れはごめんだよ。

『白と黒』45話。全体的にはぶん投げたような展開や演出もなく手堅く進んでいると思うこのドラマですが、今日の放送分の終盤で、致命的かもしれない欠点が判明してしまいました。

章吾(小林且弥さん)が礼子入浴中に彼女の携帯着信記録をチェック、果たせるかな礼子ひとり東京泊まりの夜、電源を切っていたと言う時間帯直前に聖人からの着信が。「やはり」と章吾が衝撃を受けるそこへバスローブ洗い髪の礼子が戻ってくる、章吾慌てて携帯を元のベッド上に戻す…という場面。

自慢のロングヘアーをタオルドライしながら夫婦の寝室に入る礼子、あまりにも色気がありません。

衣装のバスローブが地味であるとか、寝室のしつらえが学者一族の私室らしく機能本意で質素だとか、そういう道具立ての問題ではない。札付きの実弟との間の関わりを、実直ひとすじの夫からひそかに疑われている人妻として、あるいは3年前に一度は心惹かれ、いまもその不道徳な挙動ゆえに気にかかっている男、何より死を覚悟した窮地から救ってくれた男への思いを秘める大人の女として、何と言うか、妖しくないのです。

この場面に先立つ昼間、章吾とは「深夜東京のマンションに電話したのに応答しなかった」「携帯も電源切っていた」「あなたこそ夜中にお父さんひとり置いて一葉に話を聞きに行った」で言い合いになり、礼子のほうから「私が迂闊だったわ」と一歩“損して得取った”ばかりです。互いに“言わせてもらえば…”をかなり腹ふくるる心地のまま、今度は章吾が先に着信記録という“濃灰色”の状況証拠を握って、握られていると礼子は知らないで、ひとつ部屋で夫婦の夜を迎えている。

身体を触れ合ったり、消灯した布団の下でモゾモゾ抱き合ったりする場面より、このドラマのような心理劇は、こういう“心の背反”シーンこそ色っぽく見えなければいけません。

いままでも何度か思ったのですが、西原さんの礼子はもっと直截的に、聖人と抱擁したり唇を奪われたりする場面でも、、流れとして“心ならずも”“強引になされるがまま”といった下敷きがあることを脇に置いても、いや、だからこそ内から滲み浸透圧を増して、柔肌を突き破って噴出せんばかりのエロスが感じられなければいけないのに、どうも、稀薄かつ低体温なんですな。良く言えば折り目正しく、色気も無い代わりに嫌味、エグ味もない。

もちろん演じる西原さんが21歳になったばかりで、ドラマ女優経験も5年程とこの枠のヒロインとしては破格の若さ、短キャリアであることも斟酌すべきかもしれませんが、“若いから色気が乏しいのは当たり前”ではドラマは成立も成功もしないのでありまして、現に24歳、演技経験ときたら実質05年から3年ほどの聖人役・佐藤さんは、青臭さに荒削りさにおバカさに背伸びに自己愛に屈折…いろんな要素の合間合間から、キスも抱擁もせずそこらをガン飛ばして、あるいはニヤニヤ歩いているだけで、氾濫するような、夢に出てきたらうなされるような色気でとんでもないことになっているわけです。

八方破れ本能任せに生きてきたという設定のキャラである聖人に比して、礼子は親に捨てられ辛酸をなめた出生から、自立目標に学究ひとすじに生きてきた優等生だという違いはありますが、恋愛や遊びに縁の薄い女性だったからこそ、制御しきれないエロスが随所に表出しなければドラマは動かないし、見る人の心を動かしません。ましていわんや、あまりこの点を強調したくはありませんが、ここは昼帯ドラマなのです。

かつて、子役から長い演技経験を持ち、中学生、高校生、大学生どの年代でも人気を保ち演技力も評価されてきた吉永小百合さんは、実は堂々たる大人の女優となった20代後半まで“ラブシーンだけがヘタ”とマイナスの定評がありました。そしてそれは(おもに“サユリスト”を自認する業界人・一般人によって)“(実生活での)経験がないからだ”と注釈されることで、女優としての評価ダウンには直結しませんでした。

女優・西原亜希さんの実生活には、月河は特段の興味はありませんが、エロスや色気に関係のない部分、たとえば親友への疑惑や、生き別れの母親への愛憎半ばする思いを表現する力量に比べ、色気あってこそのパートだけが格段に低調なのは情念ドラマヒロインとしてあまりに残念だと思う。

このドラマのヒロインは西原さんで良かった、西原さんだからこそ良かった、と心から思えるような場面が、残り4週でひとつは観られますよう心から願うものです。

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フケメン刑事

2008-09-01 00:21:28 | 夜ドラマ

亀ちゃん=寺脇康文さんの電撃卒業発表で俄かに注目度がアップした(てこともない?)『炎神戦隊ゴーオンジャー』GP28831日放送)でしたが、軍平(海老澤健次さん)の元相棒・左京さん(消臭プラグの殿でおなじみ今井朋彦さん)がサスペンダーに三つ揃いで紅茶飲んでる以外はさほどパロディ要素なかったですね。右…じゃなくて左京さんの謎解きも(ボールペンに引っかかった以外は)ないし、「はいー?」も予告だけ。

と言うよりも、本家『相棒』が並外れてトリヴィアルフルでネタの宝庫なので、23の要素をなぞったぐらいでは「あーこりゃ『相棒』パロだわ」という満腹感は得られませんな。特命係(『ゴーオン』では特犯係)の外でいつも覗き見てる大小コンビに、「ヒマか?」でおなじみニットベストの課長、トリオ・ザ・捜一イタミンズ、ボブカットに眼鏡の鑑識課員、刑事部長に参事官、監察官に官房長。あと“花の里”たまきさんと美和子さん、元彼の鹿手袋くん。ワンカットずつでいいからこれくらい出さないと、『相棒』本歌取りとは到底言えません。とにかく濃くて稠密なのでメンドくさい“本家”ではある。

 それより今話はゴーオンメンバーのおとりコスプレが必見でした。軍平は制服制帽のお巡りさん姿のほか、私服刑事姿(←本気でパロるならここもスーツではなくエンブレムつきブルゾンにすべき)ではなんと!前髪下ろしてて、これだけでガツンとコスプレ感。

 大翔(徳山秀典さん)の学ラン、美羽(杉本有美さん)のセーラー服、早輝(逢沢りなさん)&範人(碓井将大さん)のチーマーカップル。みんな美味しい。逢沢さんはお顔がふっくら“アイドル童顔”なわりに脚が付け根からめっちゃ細いですね。『マジレンジャー』のブルー麗ちゃん(甲斐麻美さん)の迫力太股と対照的。月河はどっちでもいけるな。どうですかお客さん。

走輔(古原靖久さん)と連(片岡信和さん)の婆さん爺さんは、コスプレと言うよりドリフ系のコントっぽかったですね。

マンホール蛮機が股旅姿、武器でもなんでもないのに長楊枝くわえた『木枯し紋次郎』スタイルとは、お父さん世代狙い過ぎな気もしますが、夏休み最終日ですしね。キタネイダス様と、ゲームになんないだろっていう2人きりの7べやるのにわざわざ床にしゃがんで胸の谷間ショーアップなケガレシア様(及川奈央さん)ともども、お父さん大喜びの日曜朝になったことでしょう。

炎神ガンパードと、左京さんが一対一で「失敬しました、ガンパードさん」「ああ、任せといてもらおう」と対話するのも新鮮でした。一般人と炎神が、又聞きや割り込みでなく会話する場面って珍しかったと思う。“軍平とのパートナーシップ”ということで接点が持てたのでしょうが、もし連の母上が健在だったらバスオンとの会話「息子をよろしくお願いします」「いいってことよのコンコンチキでぃ!」ってなのも聞けたのかな。

ヒラ警官時代の軍平がゴーオンジャーへの転身を志した回想シーンで「カッコよすぎる…!」ももう一度聞けたし、ラスト近くゴーオンメンバーへの元“刑事”詐称(実は警邏のヒラ巡査)がバレた軍平が「みんながそう思ってるみたいだったからつい調子に乗って…スマン」と左京さんの背中に隠れたときの“おデコ2ショット”も味わい深いものがありました。本当にナイス相棒だったのね。

月河はいまだに、4年前の『デカレンジャー』録画VTRとアバレ・マジとのヴァーサスDVD2作はヘビロテなのですが、やっぱり“刑事モノ”インスパイア路線はハズレがないですね。範人が感激していた“デカ部屋のカツ丼”初め、ベタなところから知る人ぞ知るマニアックな境地まで、日本のTV界において踏襲すべきお手本・“本家”の蓄積量が半端なですからね。

いっそ本家『相棒』亀ちゃんの後釜候補、ファンの間では枚挙にいとまがないようですが来年3月までのseason 7後の話みたいだし、海老澤さんも選択肢に入れちゃったらどうかな。寺脇さん46歳から、いきなり海老澤さん86年生まれ22歳じゃ設定組みにくいにもほどがあるかな。

でも…↑↑↑↑(記事タイトル参照)ですしね。

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