イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

ブッ殺して胡桃

2008-10-11 20:36:51 | お笑い

9日(木)深夜2440『爆笑オンエアバトル』を録画視聴。前回挑戦時オフエアだった東京03の巻き返しを期待。

レギュラー視聴しなくても、NHKの当該番組公式サイトで次回挑戦者の名前をチェックした上で、録画視聴するかしないか決める手もあるんですね。それもちょっと合目的的過ぎて淋しいものがあるけど。

その東京03477kb1位、一応リベンジ成ったとみていいでしょう。飯塚視点に立てば実にもうイラつく、腹立たしいシチュエーションをものの見事に笑える仕立てに塗り替えるワザは彼らの十八番。“イライラ”と“可笑しさ”は紙一重の世界なんだなと改めて実感します。実生活にもこの信条、大切ですね。そこのイライラ抱えてるアナタもね。

“彼女欲しい友人のために女友達との出会いをアシスト”が“むしろ邪魔”→“くっきり邪魔”→“当て馬になってた”とどんどんウザ不快度がアップしていく組み立てもさることながら、彼らのこのネタで一番の決め手は、いつもながらの豊本の“手抜き女装”。

男性としては細おもてではあるけどシワっぽい色黒の眼鏡リーマン風が、スカートはいてちょっとシナっぽくしてるだけでビタ一文女らしくないこのヴィジュアルを“彼女にしてもいいかなと思えるレベルの容姿の、若い女性”という前提で見る。そこを騙し騙され得たら、あとは相当無茶な、無理やりな展開でも客は乗ってくれるのです。小説でも演劇でも映画・ドラマでも、冒頭一発顔面ビンタ食らわして草むらに押し倒す級のデカい嘘を決めさえすれば、あとに続く小さい嘘の小さい不整合、小さい不手際には目をつぶってくれる。

彼らのコントは毎度この“冒頭一発”のキレがいいのです。特に今回のネタはビンタ食らわしても“無音”。

比較して悪いけどトリオつながりで、フラミンゴ2429kbは字ヅラ以上に東京03とは差がある。海→山→遊園地、普通→釣りキチ→ズレてる、ズレ→ズレ→合い過ぎ、と三段階三段構えの構成できれいにまとまっていると言えなくもないけど、可笑しさが衣装や持ち道具のパッと見インパクトに寄っかかり気味で、紙芝居というか、観光地にある戦国武将や桃太郎の丸窓顔出しパネルと同工の“平面的”な笑いにとどまった。

本人たちが番組冒頭の収録入り前トークで「今日のネタはどっちに転ぶかわからない」と言っていたように、ストーリー性なしの平面展開でどうか?というお試し意識があったのかも。確かに通算6勝の中に、おもしろいんだけどいまいち読解のパラダイムを掴むまでが難儀なネタもありました。一長一短あるけど、月河は今回よりはもう少し奥行きのあるネタが見たいかな。

関西から挑戦のつばさ・きよしがオーソドックスな上方風味の漫才(“純”上方ではないところも重要)で421kb4位、意外に新鮮でした。「ツーフィンガー」「自信ありますから」の浣腸ポーズの関西的お下品さもこの時間帯なら結構オッケー感がある。2年ぶり挑戦で、特にホーム・チーム桧山似のツッコミきよしのほうが緊張気味だったことで、かえってスレてなくフレッシュな感じにつながった。

つばさの光り頭「ハイ消えた!」で最初パラパラッと、やがて揃って拍手が湧いたところはオンバト観客ならばこその温かみ、挑戦者の良いパフォを少しでも引き出そうとする好意的な風向きが感じられましたね。民放のネタ番組での、仕込み観客が発する殊更なワッハハ笑いとは真逆。今回の彼らも、この拍手以降ぐんと調子が出ていた。

ヒカリゴケは明らかに噛んだり台詞早飛びしたり(ツッコミ国沢の「ちゃんと手伝って」)した分玉数は393kb5位と伸びませんでしたが、持ち味は出ていたし彼らのリズムで演れていたと思う。最後のカレーのオチはロンドンブーツ12号の“ぷらち鍋”を思い出しましたね。スイーツ系入れると凄いことになるからね。

井上マーは期待したんだけど問題含みだった。まず冒頭の「コント、わけのわからない台本渡された~」という自己申告ネタ紹介が要らない。普通に台詞から入っても“声優さんのアテレコネタだな”とじゅうぶんわかる構成になっていたし。

クロージングが「オッケーお疲れ、二度と来ねぇ!」で締めるってのも客席・視聴者に与える印象としてどうなのかなと。全体的に、力量のわりに“オンバト特有の空気や地合いを肌でわかってない”ことで損している。それでも425kb3位とマーマー確保するところはさすがですが。「こんだけデキますから、声優アテレコの仕事下さい」という営業アピールのようにも聞こえた。おもしろかったけどね。

先日の『キングオブコント2008でもいまひとつ精彩なかったTHE GEESEのオフエアがやや気がかり。高佐がだいぶ痩せたようだし、コンビ的にバイオリズム谷間期なのかな。好きな芸風なので、ここからもうワンパンチ、ワンジャンプアップ繰り出して巻き返してほしいものですが。

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古武士

2008-10-10 20:32:17 | ニュース

あまりに突然だったので、ここでもどう書いていいかしばらく躊躇したのですが、緒形拳さん、亡くなられましたね。

71歳。役柄的にお祖父ちゃんであっても、リタイアドや職場のOB的ポジションでも、老け込まない、悟りすまさない“現役”感のあるイメージだったので、訃報でお年を知らされると、月河にとってさえ“親世代”だったことに驚きます。

肝臓ガンでしたか。最近で、緒形さんの出演作で1話でもちゃんと見た作品というと『人間の証明』と『瑠璃の島』ぐらいでしたが、エプソンプリンタ“カラリオ”のCMでの竹内結子さんとの共演姿が、何か一気にげっそりされたように見え、衣装が赤いシャツのせいもあったのか顔色もくすんでおられたのは気がかりでした。

いままでのお仕事を振り返ると、1965(昭和40)年NHK大河ドラマ『太閤記』ぐらいからは実家にTVがあって視聴可能だったはずなのですが、「オガタケンという俳優さんがいるんだな」と顔と名前一致したのは68年のNHK金曜時代劇『開化探偵帳』だったと思います。川崎敬三さんや郷鍈治さん(宍戸錠さんの実弟で、レコード大賞歌手ちあきなおみさんと結婚されて話題をまきましたが惜しくも早世)との共演で、いま思えば島田一男さん原作で、明治維新間もない、江戸から東京になり近代警察組織草創の頃の、ザンギリ頭の“刑事”役。十手持った捕物帳活劇と、現代の警察推理物と、両方の面白さを併せ持った快作でした。

井上靖さん作『風林火山』が三船敏郎さんの山本勘助で劇場映画になった1969(昭和44)年、親戚か家族の誰かに連れられて観に行った記憶もあり、緒形さんは身軽で勇敢で晴信公にも勘助にも忠信あつい足軽の役だったと思います。当時31歳。庶民的な土の匂いと、地に足がついた“賢いたくましさ”、そして飄々とした持ち味がありました。

その前、1966(昭和41)年の大河『源義経』の弁慶も何話か見てたかな。名場面の立ち往生後、義経の尾上菊五郎(当時・菊之助)さんが「弁慶!」と声をかけても動かない場面は子供心にせつなかった。いま思えば武蔵坊弁慶役としては異例に小柄です。演技力で緒形さんの弁慶にされていたのだと思う。“味方についてくれると心強いキャラ”という印象がこの頃からあり、長く続きました。

その後悪役・怪役もこなされるようになり、「この人が出演しているから見よう」と主動機になるような、わかりやすい華のあるタイプの俳優さんではなかったけれど、気になる作品があって試しにと視聴してみると、かなりな高率で重要な役でお顔を見る、しかもほぼ外れなくいい味を出しておられて「見てよかったな」「次回も見よう」という気にさせてくれる、月河にとってはそういう存在でした。

20年以上も前の単発ドラマの、しかも脇役作を引き合いに出して失礼かもしれないけれど、以前ここでも書いた85年放送のセゾンスペシャル『受胎の森』でのアニメ作家役の緒形さんが、月河はいまだにいちばん好きです。かつての恋人(風間杜夫さん)と妹(樋口可南子さん)が結婚、不妊の妹のために卵子を提供して誕生した姪=娘への思いに心乱れる生物科学者・竹下景子さんを、自らが監修した児童演劇の舞台に誘い「貴女はボクと結婚するほうがいい。絶対にいい」とプロポーズする台詞がとてもよかった。当時一応世間的な“適齢期”に地続きだった月河、緒形さんのこの台詞を聞いて「結婚“して下さい”でもなく“しましょう”でもなく“するほうがいい、絶対にいい”ってのはコロンブスの卵だな」「“言われたい”と思わないでもないな」と思った記憶があります(言われなかったけど)。緒形さん当時47歳、土くささやヒューマニティとともに、しっかり“色気”もありました。

樹海で偶然採取した神秘の細胞サンプルとともに森に還る決心をした竹下さんが、最後の挨拶のためにアニメ製作スタジオに立ち寄り、音声チェックしていた緒形さんが躍り上がって「いま終わるから、メシ行こうメシ」とジェスチャーで合図する場面も好きでした。でもラッシュ終了して映写室が点灯し、振り返ると竹下さんの姿はなかった。いい返事が聞けるかと思ったのに、それにしてもなぜ消えた?何かおかしい…という緒形さんの落胆と疑問と、一抹の不安をにじませた表情もよかった。樹海に単身捜索に飛び込み、竹下さんが葛藤の末ひとり残していった姪っ子(遺伝子上は竹下さんの娘)を救出したラストシーンも緒形さんなればこそ。

これも前にここで書いたはずですが、ぜひ再放送かDVD化してほしい作品だけれど、単独スポンサーのセゾンがああいったふうになってしまったので期待薄でしょうね。

緒形さんの演じる人物には一貫して“生”“命”“生活”の温かい面が感じられたと思います。ときに融通の利かない仕事人間や、暗い過去を隠した人物を演じても温かみがあることには変わりがなかった。“温”は必ずしも“明”とは限らないし、作品や、設定状況によっては“温”を通り越して“暑苦”“重”に見え伝わったこともあり、ウチの高齢家族なんかはそれ故に「無条件に好きな俳優さん」ではなかったようですが、生や生活の持つ“温”性とは本質的にそんなものではないかと思う。そういう表現が緒形さんはいつもお見事でした。

85年に47歳で『受胎の森』のあのアニメ作家を演じた緒形さんを、23年後のいま、71歳で喪ってみると、10年後、20年後に緒形さんのポジションをつとめられそうな30代~40代の俳優さんが少ないことが淋しくも心細く思えます。演技力単体では互角に近くても、味や重み、特に“温”の部分が物足りない人が多い。

気がつけば大ベテラン…という役者さんが、思いがけないタイミングで物故するたびに、薄皮を剥ぐように日本のドラマ界、劇映画界が手薄になっていく気がしてなりません。

かつてご自身が島田正吾さん、辰巳柳太郎さんという新国劇の両巨頭から多くを学ばれたように、たくさんの現場で同じ空気を吸い同じ作品世界観を共有した後輩俳優たちが、在りし日の緒形さんからできるだけ多くを受け継いでほしいと願います。生前の数少ないトーク番組ご出演、『徹子の部屋』などで垣間見せた独特の語り口を再見するにつけても、恐れ多くて言葉に出せないままひそかにリスペクトを寄せ私淑していた若手さんがあまたいたはず。彼岸で見守り静かに叱咤激励してください。ご冥福をお祈りいたします。

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I don't likeホノルルマラソン

2008-10-07 21:28:55 | CM

いくばくかのギャラは発生しているだろうものの、タレントさんではないシロウトさんのことを、いつぞやに続いて二度までここで採り上げるのは若干ためらわれるのですが、言いたくてしかたがないのでさっさとラクになってしまおう。

“皇潤”CM84歳棒高ジャンパーのおっちゃんは、アレ絶対バーを跳び越すより、棒持って走るのが気持ちよくてやってるね。自分でも「いい気分ですヨー」って言ってるし。越すのが目的だったら、何も棒使わなくても、ゴム跳びの女跳びで越せる高さだもの。

だからあれですよ、極端な話、バーは必要ないんだよ。棒持ってどこまでも走ってられれば。府中競馬場の直線とか。昔、ダービー後の最初の故障から翌年の大阪杯で復帰したトウカイテイオーに、初めて調教騎乗した岡部幸雄騎手(当時)が「いくら追ってもいっぱいにならない、地の果てまで走る感じ」と絶賛していましたが、あの84歳も地の果てまで行けるね。棒持ってればね。

カラ手で走るのはバカバカしいけど、棒でもなんでも一定のフォームで持つと、なんか張り合いが出て気分良く走れる、ってのはなんとなくわかる。「わかる」って言われても迷惑かな。迷惑だろうな。

ところで、走り高跳びはハイジャンプ、走り幅跳びがロングジャンプだから、棒高跳びはスティックジャンプかと思ったら全然違ってポール・ヴォールト(pole vault)って言うんですね。棒=ポールを手で持って、身体を支えて飛び越すという動作は、jumpとは概念がまったく別のところにあるらしい。従ってあの84歳さんも、ジャンパーではなく正確にはヴォールターと呼ぶべきなんですね。末永くお元気で(どんなフォローだ)。

さて先日、5日は1900『キングオブコント2008を録画しながら、台所仕事の傍らラジオで音声だけ先取りしましたが、AリーグトップバッターのTKOがいきなりキモイタい奴ネタでちょっと引いてしまいました。芸能人の誰か→ガッキー→楽器→トロンボーンのくだりだけはちょっと笑ったけど。

ザ・ギースバナナマンチョコレートプラネット『爆笑オンエアバトル』で既出のネタのマイナーチェンジだったし、優勝したバッファロー吾郎にしても、優勝自体には特に異論はありませんが、笑いどころが“市毛良枝”“東ちづる”“竹下景子”“高倉健”など固有名詞の意外性とイメージ喚起力に寄っかかった率が高く、あまりコントとして上質とは言えなかったように思います。これなら彼らのTVブロス“よしもと煮こみ”連載コラムのほうが、ピリッと短い分ずっと面白い。

バナナマンの最終決戦ネタにも同様のことが言え、どうして皆、安易に有名人名、アニメ・映画タイトルなど“ありモノ”が連れて来る可笑しさに頼るのだろうと思う。人名を使うなら先週の『オンバト』でのアルコ&ピース“クマカワ”ぐらいの珍奇さと、発せられた瞬間のみ「え?」と思わせるスマッシュ性がないと。客が知ってそうな、興味ありそうな時事ネタでくすぐる漫才と違い、コントの面白さって一にも二にも状況とストーリー性でしょうに。

いまは無き『笑いの金メダル』以後、ネタをフルで見る機会がしばらくなかったせいか、むしろロバートが全組中いちばん笑えたな。徹底的に意味がないのがよかった。管楽器のチューニングみたいな♪トゥットゥットゥットゥッ~のあのメロディ、かなり無限ループしました。

そんなこんなであまり期待しないで、早送りでいいつもりで深夜録画のほうをチェックしたら、セミファイナリスト芸人100人が決勝ジャッジとしてお揃いの“C”ロゴ入りポロ着て雛段に並んでて、MCダウンタウンにときどきトーク振ってもらったりしてて、これはこれで『オールスター大感謝祭』的な、アタマカズ揃えたことによる豪華さはありました。

ファイナル8組にはそれぞれ“ファイナル進出までの苦節道程と抱負”をまとめたVと「全国区5度目の正直・TKO」といったワンフレーズキャッチが冠せられるなど、かなり漫才におけるM1を意識した構成。親分ダウンタウンがMCをつとめていることひとつ取っても、どうしても“吉本主導”臭が拭えませんが、まずは“コントだからできる、コントでなければできない笑い”の何たるかを見せてくれないと。

まだジャッジする審査員も、この組その組とネタを次々見ながら「あぁこんな手もあるか」「こんな方向性もあるか」と気づかされている段階じゃないかな。ほとんど小劇場喜劇に近い、きっちり作り込んだものから、ナンセンス、ギャグ連打ものまで“コント”って本当に幅が広い。優れたコント、いいコント芸人を輩出する虎の穴になるためには、まず510年、途中でハズレとか偏向とか叩かれてもいいから、とにかくこの番組が続いて行くことでしょう。

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水よりも濃し

2008-10-06 19:30:04 | 世相

麻生太郎新内閣、調査のタイミングが媒体によっていろいろですが発足浅いわりには支持率が渋いようです。

彼のがらっぱちで遊び人まる出しなキャラ、清潔でも明朗でもないのにやたら「明るい日本」を強調するギャップ感が嘘臭さにつながっているかもしれないし、何よりマスコミがやたら衆院解散総選挙の時期を先走って手探りしたおかげで、「いまの首相が何言っても、どうせちゃんと最後までやり遂げやしない」「その場しのぎに決まってる」という、濃ーい不信の空気がすでに立ちこめてしまっているのが、“総裁選3回目、やっと順番が回ってきた”矢先の麻生さんには不運でした。

この人の立ち居振る舞いでいちばん気になるのは、先般の所信表明での「畏くも御名御璽」発言を初めとして、戦後日本の体制を基盤づけた“吉田茂直系”を安易にちらつかせ過ぎることですね。欧米外遊時は確かにそう名乗れば通りはいいかもしれませんが、通るのはいまや一部の年代だけにではないかと思うのですがね。そうでもないのかな。第二次大戦後の世界史を伝える教育がとことん底抜けなのは日本ぐらいなのか。

先日小泉純一郎さんも国会議員引退・選挙区を次男に後継させる表明で話題になりましたが、弊害が言われながらも二世議員・世襲議員は今後増えこそすれ減ることはないのではないかと思います。

自分がそういう角度の視線に晒される年代になった頃からつくづく思うのですが、「お父さんorお母さん、お祖父ちゃんお祖母ちゃん…)にこんなところが、あんなところが似ている」「お父さんorお母さん以下同文)も小さい頃、若い頃こんなんだった」逆に「お父さん(以下同文)には似ても似つかない、誰に似たんだろう」という話題が、日本人は本当に大好きです。ウチの高齢家族と高齢友人、高齢知人同士の世間話の90%はこれ系の話題だと言ってもいいくらい。歌舞伎や古典落語、あるいは大相撲などの伝統芸・芸能の世界は、こういう視線での楽しみを、さしたる継承すべき血筋を持たぬ庶民に提供するためにこそ、存在してきて現に存在すると言っても過言ではない。

伝統に拠らない、映画やTVなどの新来ジャンルの芸能も、特に平成に入ってからはとみにそれ化し、石を投げれば二世役者・アーティスト・タレントに当たる勢いです。増えても仕方がない。そういう楽しみ方を、客が求めているのですから。

月河に親しい昼ドラの世界などは、現行放送中の『愛讐のロメラ』にも典型的な通り、“親の因果・恩讐が子に報い”式の話や、“金満旧家・名家の子弟と、名もなき貧苦の庶民娘との悲恋”話をバリエで繰り返し繰り返しやっていて飽く飽かれる様子もありません。

キリスト教のような唯一絶対神を戴く宗教を昔から持たず、五穀豊穣・諸業繁盛を恵む“お天道様”の神通力も温暖化でめっきり有り難味薄れた21世紀の日本では、“生まれ”“血統”だけが“人知人力を超越した、抗いがたい神聖なる力”の象徴なのかもしれない。最も端的な例は皇室・皇族でしょう。

“生まれ”“血統”に対して日本人が持つ無条件暗黙のリスペクト、裏を返せば“自分だって名のある、伝統ある一族の血統に生まれていればそれなりの人生があっただろうに、運命でそれがかなわなかった”との潜在的な恨みつらみを、あまりに無神経に、当たり前のように刺激し過ぎる麻生さんの言動。

身近な親類知人から、媒体を通じてしか接する機会のない芸能スポーツ一家、政治一家についてまで「お父さんにそっくり」「似ても似つかない」話に花を咲かせて飽くことを知らない庶民の意識下には、“血筋”という、努力や鍛錬で如何ともし難いものに対する、強く根深い畏敬と渇望、ひいてはコンプレックスが秘められています。

「有るのが当たり前、持っているのが普通」の崖の上3万坪御曹司麻生さんには、“憧れても持ち得ない星”に生まれ合わせた圧倒的多数の人々の暗く粘っこい意識が想像できない。だから「吉田の孫」「御名御璽」をみずから発言して畏れるところがない。

すべてのパイが既存から縮小して行く日本のこういう時代だからこそ、月河は非常に危惧するものです。

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Mr.ダルマisローリンローリン

2008-10-05 19:50:54 | お笑い

2日深夜『爆笑オンエアバトル』片手間ながら久々待機視聴。木曜に移動してからは録画の足が遠のいていました。平日は特に昼番組の再生チェックで忙しいもんで。

いきなり超新塾529kbに驚きましたが、格別の新しさは感じなかった。ただ演順的に、トップバッターのアルコ&ピース445kbの後、4組“ハズレ”が続いた6番バッターだったので、客席マグマが溜まっていたかも。こういう、抽籤演順と流れによるオンオフのアヤについては、本編後のオンバトヒーローズでパックンマックンが「前の組が大爆笑とっても困るし、空気が凍るような大スベりでも困る」「スベっても凍らない(程度)か、いちばんいいのはそこそこウケて、でも落ちる(オフエア)、ってぐらい」と表現していました。

超新塾の今回は、前半の女友達結婚式スピーチ篇が冴えなかったけど、後半のダルマさん転んだ篇で盛り返した。切り替えのときドラゴンが連発で噛んだときのイーグルのつぶやきフォロー「綱渡りやね」やコブラの手榴弾で3人吹っ飛ぶリアクションの切れなど“良くこなれている”という好印象はありました。

そう言えば昔、中央競馬で故・ナリタブライアンが圧倒的な強さを誇っていた頃、確か94年東京優駿の前週追い切り情報の時点だったと思いますが、「まともなら他馬の食い込む余地がなさすぎるから、4コーナーまで普通の競馬で行って、直線はダルマさんが転んだで決めたらどうだろう」と言ってたアホがいたな。「ナリタブライアンならダルマさんが転んだでも天才的に強いかもしれない」とあっさり却下されてたけど。ちょっと脱線。

Over500のもう一組・ぼれろ521kbは、冒頭の「♪古池や~」「おメザです」などツカみの反応が寒めでどうなることかと思いましたが本題のロボットネタに入ってみるみる持ち直した。ただ一時期のペナルティと一緒で、有体に言えば渡辺のピン芸と実質変わらない。もっとツッコミが味を出し機能するようなネタを作らないと、飽きられるのも早そう。

ちょっと水をあけられた5409kbでギリオンエアのトップリードがいちばんオンバト向きの、ストーリー性のあるネタで成功していたように思います。母思いのまじめな医師の卵だったはずが、単なるパチンコ狂いのウッカリ野郎だったことがバレ、嘘のクオリティもどんどん底抜けになっていく課程も新妻がうまく演じたし、まんまとクチグルマに乗せられてしまう脇の甘い神様役・和賀が、白いローブに白ヒゲとか記号的な神様ルックじゃない、休日のリーマンパパみたいなシャツにズボンだったところもツボでした。「50歳です」で森進一の顔マネになる無意味さもいい。“おふくろさん”つながりってことかな。

「良かれと思って着てまーす」の吉井の衣装がいつの間にかえらくまともになったブロードキャスト477kb3位。♪ボーニョボニョボニョ~は“ぼーの”って名前の知り合いがいたら(滅多にいないと思うが)日本全国全員歌ってるでしょうね。U2のアノ人も、いま来日すれば歌われるはず。

吉井が一方的に展開したボケを、攻守入れ替えて房野がトレースし、吉井がさらにボケエスカレートさせてオンする流れは以前のオンエアでも見たように思いますが、正直、一時期のトータルテンボスの“今日のネタのハイライト”同様、全体の出来の底上げにあまり貢献していると思えない。しかし小松宏司アナもネタ前紹介で言っていたように、8連勝で8年がかりで勝率5割(99敗)に乗せた、いまようやく自分たちの方法論を掴みかけたところかもしれず、まだ上昇の余地はあるでしょう。

パックンマックンが「絶対有利」と言っていたトップ演順を引いたアルコ&ピース445kb4位は、確かにトップ効果もあるけどどう考えてもトップバッター向きでない芸風でよくこれだけ玉が入ったと思う。「ハモり」で拍手が湧いてしまうという、演ってる本人にとってはツラい空気での4分間となりましたが、前回オンエアの洋服ショップネタ同様の見立てネタ一本押しで、破綻なく丁寧に演りきった。

「気まずいの」「罵り、辛口で」「ムカっと」「ハニカミ一丁」など振られるたびに“どう来るか?”と期待させては字ヅラまんま、を続けた後、「クマカワのアタマ残し」で、まさかの熊川哲也を出してくるという意外性のスパイス配置にはセンスを感じました。振りマネ可能な有名人名は山のようにある中で“熊川哲也”をチョイスしてくるところが彼ららしい。こちらも今回で22敗の五分の星、一気に上昇するのはむずかしいでしょうが、とりあえずもう23ネタ見てみたい期待だけは繋げた。

久しぶりに見てみると、この番組、オンエア分に関してはカット編集もほとんどなく(皆無なのがベストですが、たとえば今週はトップリードの分でちょっと目立った)、テロップ追いも司会者との絡みによる温っためくすぐりもなく、とにかく4分フル使ったネタをしっかり演らせてしっかり見せることに集中、“加工”を最小限にとどめている点で、やはりお笑い番組の鑑、良心だなという気がしました。

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