イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

剛!剛!レッツゴー!

2010-10-16 18:29:36 | 朝ドラマ

いやぁ走るねえ、田中初音67歳(@『てっぱん』)。富司純子さん64歳。121日で65歳。余計なお世話か。

 バックに井上尭之バンドが流れてくるかと思った。“皇潤”のエバーライフが音羽屋に速攻オファーの電話よこしたらしい(妄想)。たまたま帰ってきていた寺島しのぶさんが「おとといおいで下さい」とガッチャン断ったらしい。それもフランス語で(もっと妄想)。

前夜、あかり(瀧本美織さん)が皮剥きのお手伝いして「ポロポロぽろぽろこぼしな」とたしなめられていたグリンピースが、あかり退去後思いがけないところから出てきて、このまま尾道に帰したらあかん!と思い立ち追いかけるくだりは、ベッドの下でピアス拾った男と女のラブストーリーみたいでしたな。追いかけて「あかりーー!」「おばあちゃーーん!」と抱き合ったりなんかはせず、「うちの忘れもんや、ひと言言わせてんかっ!」「大阪で立派にやっていけるとこ見せてほしい、あれはハッタリか!」「ハッタリ違う!」と売り言葉に買い言葉。本当に面倒くさいツンデレ母娘。じゃなくて祖母孫。

初音さんが、手放しで情愛開けっ放すのをみずから封印、きわめて自己流に“スジを通そう通そう”と突っ張っている一方、あかりちゃんも実の母とわかった千春さん(木南晴夏さん)のことをもっと知りたい、初音ばあちゃんにいろいろ訊いてみたい気持ちはますます高まっているんだけど、開かずの間を開けた(て言うか鍵壊した)だけで、「あんまり掻き回さんといてんか」とお祖母ちゃんせつなそうだったし、何よりあかり、尾道の村上家家族が大好きです。お父ちゃん(遠藤憲一さん)が挙動不審になるほど激昂し、お母ちゃん(安田成美さん)が間に入って胸を痛めるなら、自分は不本意でも、淋しくても、あえて“その件には触れない”でいい。あかりちゃんが気い遣いの外柔内剛とすれば、初音さんは自分の中で“スジ”と思えることを通すためなら、外の人から「いけず」「頑固」の謗りも甘んじて受けようという、言わば外剛内剛どんだけゴーだ。「お腹すいた~」と言われたときだけ“柔スイッチ”が入るのね。

このドラマ、たとえば今日(16日)放送分の上述の場面でも、セリフだけ聞いていると理屈っぽいのですが、初音ばあちゃんに扮する富司純子さんの、突っ慳貪でも不愛想でも、どこか気品のある空気感でもっている部分が大きいと思う。声に出すセリフより、こっちを向いていた顔をそむけるときとか、反対に、声をかけられたり気配を察して振り返るときの首の角度や、身体の方向を変える際の目線の切り方、残し方の加減が本当に素晴らしい。顔の映らない、後ろ姿、あるいはお辞儀姿などに至ってはもう反則級です。

富司さんって、“藤純子”時代はもっぱら東映任侠映画でご活躍のイメージが強く、当時のそれ系映画館は子供には縁がなかったですから、ワイドショーの司会でもなくトークゲスト梨園夫人でもなく、セリフをしゃべって役を演じている富司さんを継続して見るのは、月河、これがほとんど初めての様な気がします。こんなに“できる”人とは思わなかった。櫻井よしこさんの女優版みたいな、お上品爆弾の人だとばかり思っていたんだけどな。お見それしました。

このドラマ、制作の当初、ヒロイン役が決まるずっと前から「祖母役は富司さんに」がプロデューサーさんの念頭にありオファーしましたが、なにしろご存知七代目尾上菊五郎夫人ですから、夫君の舞台の初日と楽日はご自身の、泊まりを伴うロケ仕事などは入れないように長年スケジュール管理をされているそうで、それもあってかヒロインオーディションまでにOKの返事は来ませんでした。「富司さんダメかな…」と危惧しつつも、Pは“富司さんとの祖母孫2ショット”をイメージ、多数の応募の中から選んだのが瀧本美織さんだったそうです。

その後、めでたく富司さんから出演快諾が得られ、今般の名(?)コンビ誕生へ。設定上の主人公はあかりちゃんですが、作品の中軸はむしろ富司さんの初音ばあちゃんかもしれない。存在すら知らなかった自分の家族がひょんなことから身近に出現。あかりのほうは血のつながり以上に強い愛の絆で結ばれた尾道の村上家家族がいますが、初音さんの唯一の家族だった千春さんはすでに亡いことがわかってしまった。取り返しのつきようもなく途切れた絆を、孫のあかりを通してどう取り返し、開かずの間にした心の錠前を開け解きほぐしていくか。これは67歳の成長小説、遅れてきた“ビルドゥングス・ロマン”なのです。

14日(木)放送回、「お好み焼き屋さんやっとったんですね、娘さんの名前を店に」といちばん触れられたくないところをつかれて思わずあかりの頬を張ってしまった手を、18年前の回想とともにじっと見つめる場面では、つい富司さんと、愛嬢の寺島しのぶさんとを重ねて見てしまいました。あまり芸事が好きではないのかな?と思っていた娘が女優の道を選んで、文学座研究生となり、退団して映画に出はじめた頃はポジティヴに見守り応援しておられたでしょうが、全裸濡れ場シーンを演じると聞かされたときには、頬を張ったりは(顔が命の女優さん同士でもあるし)さすがになくても、「母子の縁を切る」までは実際やりとりがあったそうです。

富司さん自身も、刺青の女侠客“緋牡丹お竜”は当たり役にこそなりましたが、当初は背肌を露出するのに自分の中で大変な葛藤があったとのこと。しのぶさんの覚悟の挑戦に、女優としてのかつての自分と、母親としての現在の自分がどれだけざわめき、心波立ったことか。

“母と娘の修羅”を踏み越えてきた富司さんだからこその初音役。プロデューサーさん、このキャスティングにこだわった成果はありましたね。

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血圧なんか琥珀ない

2010-10-15 18:19:55 | 

今年も出ました数量限定醸造SUNTORY琥珀の贅沢。昨日(14日)某大手流通チェーンで見つけて脊髄反射で買いましたが、このラベル初お披露目の昨年に比べると約1ヶ月早い投入ですね(昨年1110日、今年1012日)。昨年の評判が良かったのでしょうか。とりあえず、濃赤色基調金色ラインのアクセント、気の早い人ならクリスマスを連想しそうなパッケージデザインで、季節感はありますな。缶フロントに、春季の絹の贅沢から登場した“京都醸造所謹製”の落款風ロゴも加わりました。

昨年のコレ、“贅沢”ってより、クチあたりのトップが普通に甘かったよなぁ…と、缶パケマイナーチェンジにあまり期待しないで、帰宅後試飲すべく、まずは冷やし直し。新ジャンルで甘め優勢のやつは、通常のビールの飲みごろより、冷やし過ぎぐらい冷やすほうがいいんですよ。

……おや?この作戦が効いたか、昨年ほど直球で甘くありませんぞ。

もともと、トップが喉を通過した後に来る後クチや、香りというかフレーバーに関してはしっかり、ロースト麦芽由来の良きホロ苦さもあるし好感持てる内容だったんです。“まじめな新ジャンル”というかね。飲んでいるうちに思い出してきた。

今季は、同じロースト麦芽使用+アロマホップ100%使用を踏襲しつつも昨年とはどう配合を変えたのかな。結構さっぱりめで、より飲みやすくなったように思います。やはり、昨年のセールス成績が良かったので、今年はもっと数飲まそうって算段か。1ヶ月早い投入にも何やら自信を感じます。

330mlという、国産ではイレギュラーなサイズのせいもあって、昨年リリース当初は、なーんかアイスコーヒー飲んでるみたいな気もしたものですが、今年は缶パケ“京都醸造所”ロゴとともに麦の穂数も増えたし、“ビール感”もじゅうぶん。

これも昨年から踏襲している特徴のひとつですが、このラベルのいちばんの長所は、実はロースト麦芽由来の濃いめの液色かもしれませんね。透明感と豊潤感を兼ねそなえた、キレイな褐色です。缶プシュッで直接飲みなんて愛想のないことはせず、ぜひひと手間、透明なグラスに注いで季節感を楽しむべきでしょう。チキンとかエビチリとか、ピリ辛系が特に相性良さそうです。ピザなら、定番のペパロニ、フレッシュトマトより、チョリソーとか、いっそ生ハムガーリックなんかいってみたいな。

焼鳥なら塩皮、塩ネック、塩ネギま、塩ハツの“減塩ぶっ飛ばせ”カルテット。

シャンパンほど気取ってらんないし、シャンメリーだのポートワインなんてぇヤワな年頃でもない。働くオトナのクリスマスにはぴったりかもです。されど数量限定。いまのうちに買いだめに走るか。

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90秒の招待状

2010-10-13 19:07:48 | 再放送ドラマ

BSフジで再放送中『愛の天使』の、時代(=本放送1994年)を感じさせるゆったり甘く切ないOP映像は、ざっくり分ければ“顔出し無し型”ですね。

 このフジテレビ・東海テレビ放送枠の昼帯ドラマ、OP“キャストが役の顔で出る型”と、“キャスト顔出し無し型”があります(正確に言えば“ありました”。現在はドラマタイトル→クレジット提供字幕ベースの12カットしかなくなりました)。

 月河が初めて本放送で第1話から視聴した『女優・杏子』20011月期)は顔出しも顔出し、闇の中をドレスアップして女優オーラ出しつつポージングして歩く杏子さん、一転砂浜でナチュラルメイクで自由にはじける杏子さんと、ほとんど杏子役荻野目慶子さんのプチPVのような仕立て。同年10月期『レッド』も遊井亮子さんが、降り敷く赤い薔薇の花びらの中で覚醒?と一歩間違えば映画『キャリー』かみたいな不思議なスタートから、最終的にはショーウィンドウの街路を笑顔でダッシュする“ヒロインひとり映りPV系”でした。

 荻野目慶子さんは0410月期『愛のソレア』でも主演で、こちらは少女~若年期担当前田綾花さんからバトンを受け継ぎ、OPでも衣裳七変化ならぬ3変化くらいでしたがヒロイン美保の人生の荒波を象徴して見せてくれました。女優さんながらすでに怪優的貫禄も備えている荻野目さんをヒロインに担ぎ出すなら、OPPVにしないと失礼だろってぐらいの勢いでした。

03『愛しき者へ』の馬渕英里何(現・英俚可)さん、06『新・風のロンド』の小沢真珠さん、08『安宅家の人々』の遠藤久美子さんも、それぞれドラマに合わせた白メインのイメージ衣裳で、ひとり映り大活躍のOPでしたが、この“顔出しヒロイン単独主演系”OPの最高峰には、ぜひ03『真実一路』の高岡早紀さんを挙げたい。『ソレア』につながる、ヒロイン経年成熟3変化パターンでしたが、放送当時30歳高岡さんの女学生セーラー服姿を拝めましたからね。

並木の成熟ロードを歩むヒロインがOPで一瞬すれ違う前半の、相愛の相手役をつとめた加勢大周さんが、残念ながら周知の不祥事で芸能界事実上追放に等しい状況なので、『ソレア』とともに再放送は難しいかもしれませんが、もし当時デジタル録画が可能だったら、ぜひ永久保存しておきたかったですね。

ヒロインのモーションもカット数も少なめだけれど印象的だった例で言うと、05『危険な関係』の高橋かおりさん。OP前半、月夜のバラ園で茨の蔓にからまれた部分裸身のカットをいくつも出しておきながら、いざ高橋さんの顔が映ってロングになると、からまれながらしっかり着衣、というズルい女作戦。まぁ、結ばれそうで結ばれないツンデレすれ違いの醍醐味も柱となるお話だったので、これくらいの脱ぐ脱ぐ詐欺(詐欺って)は見逃しましょう。

“顔出し型”にはこういった“ヒロイン単独主演系”以外にも、相手役との純愛あるいは悲恋小芝居系(02『新・愛の嵐』の藤谷美紀さん要潤さん、05『契約結婚』の雛形あきこさん長谷川朝晴さん、同年『緋の十字架』の西村和彦さんつぐみさん、06『紅の紋章』の酒井美紀さん山口馬木也さんなど)、親世代も含めた家族群像系(02『母の告白』07『愛の迷宮』、古くは1993年『誘惑の夏』、1996年『その灯は消さない』など)の変化球もあります。

一方、ヒロイン含め劇中キャストがいっさい顔を出さない、イメージ映像のみの代表と言えば何と言っても04『牡丹と薔薇』06『偽りの花園』、ご存知中島丈博さん脚本による“宿命の女子ふたり”連作。吉屋信子原作の05『冬の輪舞』もそうでしたが、対照的なキャラのダブルヒロイン作は、映るカット数や秒数に差が出ちゃいけないとかなんとかいろいろうるさいので“顔出し型”は作りにくいのかもしれません(07『母親失格』は芳本美代子さんと原千晶さんのダブルヒロインでスタートしましたが、OPは第三の主役=娘役森本更紗さんを加えてトリプル仕立ての顔出しになっていました)。いずれも、キャストの顔が見えないことがひとつも物足りなさにつながらない、キャンドルランプやステンドグラスなど光の素材をふんだんに使った、凝りに凝った美麗映像でした。

『冬の輪舞』は舞台に設定された伊豆の素直な海浜風景動画スライドショーで、屋外ロケが少なく箱庭作りモノ感が付きまとう昼帯の世界に広がりを添える効果はありました。

“顔出し無し型”OPにおける変化球の極致は、人影はちらつくけど、ヒロインでも相手役でもないという、07『金色の翼』Bamboleoダンスでしょう。舞台に想定された離島の遠景近景、ホテル周辺風景に挟まれる男女のダンサーのステップ踏む脚元のみ。ヒロインと相手役(国分佐智子さん高杉瑞穂さん)をイメージしているようで、実はそうでもない。“ひと夏の欲と享楽に踊る人々”の象徴ぐらいに捉えていたほうが適切でしたが、この距離感、抽象感が、ドラマラストまで一抹、ヒロインカップル及び彼らを取り巻く人物たちへの距離感につながってしまったのは如何ともしがたいところでした。良く言えばアレゴリック、寓話的、悪く言えば絵空事感濃厚な作ではありましたね。

さて、そんなこんなで現行堂々再放送中の『愛の天使』OPは、歴然と“顔出し無し”でありながら、実は川べりで水に浸かっていたり、廃品置き場に埋もれかかっていたり、雨の盛り場の片隅に放置されていたりする壁画タイルの破片に描かれている男女の天使像デッサンが、微妙に主役ふたり(野村真美さん渡部篤郎さん)です。女性像のほうはぱっと見、あからさまに野村さん風ぽってりクチビル、閉まりそうで閉まらない官能系おクチではないのでスルーするかもしれませんが、男性天使のほうは、かなりはっきり、本放送当時の渡部さんのナヨめの横顔を写している。

キャストの代わりに、脚役者さんや後ろ姿役者さんではなく、似顔絵で顔出し共演させるという、これも変化球中の変化球と言えましょう。

過去作の再放送を視聴しつつ「このOPはどっち型の、こんな系だな」と腑分けする楽しみ。気がつけば、確かにこの枠の昼帯、08年の『花衣夢衣』OP自体が廃止された頃から、月河が面白がれる、興がれるところが徐々に少なくなって行く傾向にはあったなと、若干惜しくもなります。

まあ、帯ドラマの場合、OPは毎日、毎話見る、観られることになるわけだから、飽きられずに視聴意欲を喚起し続ける60秒~90秒の映像を考えて作るのは、手間も費用も頭痛モノなのかもしれない。

枠が違いますが、放送中のNHK朝ドラ『てっぱん』は、同じテーマ曲・同じ振付を一般公募のいろんなチームのダンサーズに踊ってもらって、小節ごと編集しては少しずつ入れ替えてつなぐという手法で、放送開始3週めに入っても新鮮さを保っています。

前番組『ゲゲゲの女房』でも後半何回か大きめのマイナーチェンジや、録画再生でよっく観てやっとわかる級の本当にマイナーなチェンジをちょっこしずつ加えて注目させていました。長丁場の帯、こういう手もありますね。

小さな、細部のチェンジほど、月河の様な録画再生メインの客を「どれどれ?…あ、いまの?…見逃した、もう一度リプレイ」と前がかりにさせる効果もありますし。

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先生?先生…先生!

2010-10-10 15:50:33 | 再放送ドラマ

本放送中の昼帯から離れている間に、BSフジの昼ドラ名作選枠で1994年の『愛の天使』再放送が始まりました。4年ほど前に当地で地上波再放送された『誘惑の夏』の、ちょうど満1年後のクールで、同じ東海テレビ+東宝チームの作品です。

16年前かぁ。引っ張り上等なアバンタイトルがあり、テーマ曲をのせて象徴的なOP映像があり。やはり昼帯はこれがないとね。

キャストスタッフクレジットの文字も流れず、でーんと登場して、でーんと次と入れ替わる。しかも最近の作品の4倍くらいの大きさで読みやすいのなんの。視聴者にフレンドリーなつくりをしていましたな。

設計事務所を率いる気鋭の建築家・斉藤正樹(峰岸徹さん)の次男で、自分も建築を志す潤(渡部篤郎さん)は、デザインの才能はありますが数学が苦手で、工学部受験に二度失敗し浪人中。父は、大手ゼネコンに勤める長男・曜(米岡功樹さん)をやたら可愛がり、会社を辞めて設計事務所の後継者になってほしいとしきりに勧めていますが、潤には「デキの悪い息子」「建築に向いてない」と滅法冷たい。母親の頼子(上村香子さん)は兄弟分け隔てなく接して、冷遇される潤のことを心配していますが、どうも含むところがありげで、あるいは今後、“父親が違う”古典的展開もあるか。

そんな潤がデッサンの勉強に通う美術スクールに、イタリア留学帰りの新進建築デザイナー沙都美(野村真美さん)が講師として赴任。出会いの経緯がすごいよ。2人それぞれ都市建築ウォッチングに余念なく、潤はカメラ、沙都美はスケッチブックに夢中で、ガッチャンコ折り重なって転倒。「何よあれ、迷惑な人」と別れた直後、教室で「あーー、アナタさっきの」…

…もう、いまどきラブコメ漫画だって使わんわ、ってぐらいの純正混じりっけなしのベタさ。

…ってこれ、いまどきのドラマじゃないのでした。1994年。それにしてもね。すでにトレンディドラマの洗礼を受けて主婦になり、昼帯適齢期になったお客さんは、指さして笑って視聴していたでしょうね。クラシック、スタンダードな手口(手口って)を使って、大まじめに笑かす。これも昼帯になくてはならないスピリットのひとつです。

若くて美人でイタリア帰りの才気がはじける沙都美はたちまち生徒たちの人気者に。シャイで露悪的、軟派気取りだが根はピュアな潤は初対面から沙都美に興味を惹かれ、美的センスを褒められて「工学部より、美大の建築科を目指しては」とアドヴァイスもされ、次第に講師に寄せる尊敬以上の感情が育っていきます。

しかし、沙都美には驚愕の過去が。留学前の美大生時代に、沙都美は当時教授をしていた正樹と不倫関係で、奥さんの頼子に知られ咎められたことから、正樹に何も告げずに姿を消し単身イタリアに旅立ったのです。正樹は驚いて一時は捜し回ったらしいのですが、結局自らも教授職を辞して、振り切るように設計事務所に没頭してきました。

一方沙都美はイタリアで、アマチュア対象の設計デザインコンクールに優勝、画塾を開いた美大の先輩の招きで帰国し、いい設計事務所の就職先を紹介してもらう条件で、腰掛けのつもりで講師を引き受けたのです。

潤との偶然のラブコメ遭遇から間をおかず、建築業界のパーティーで正樹とも再会。「(浮気ではなく)本気だった」と言う正樹はヨリを戻したい気満々で、早速事務所で難航している受注先の設計プランを沙都美に依頼したり、マッハでキナ臭くなっていますよ。潤が沙都美を「親父の元愛人、現在も…」と知ったら一気にドロドロまっしぐらの予感。すでに頼子さんは、潤が塾で課題の石膏デッサンをばっくれて描いてきた沙都美の横顔のスケッチから“あのときのあの女性に似ている?”と懸念を持った様子です。

とにかく俳優さんたちが若いこと。放送当時26歳の渡部さんの大学2浪生は、如何にチャラ男くん演技が達者でもちょっときついのですが、演出が気つかって、塾生たちを微妙にヒネたのや年齢不詳なのばかりで固めてある。気のおけない同クラスの女友達ながらひそかに潤に想いがあるらしい由香を演じる奥貫薫さんは当時23歳ですが、服装はモノトーンシックで大人のスタイリストさんといったムードです。

29歳の野村真美さんのほうが、バブルの名残り的なビラビラ感のあるカタカナ職業ルック。美大を卒業して留学3年なら20代半ばか後半ということになりますが、回想シーンの沙都美教え子時代も、カチューシャつけたりしてお嬢さんぽく見せてはいるけど、結構オトナのムードなので、学部生ではなく院生か、兼・助手ぐらいの立場で正樹先生とわりない仲になったということかも。だったら3年経っての帰国後は、野村さんの当時の実年齢通りのアラサーでもいいわけです。

51歳峰岸さんがとてもいいですね。受賞歴もあり建築の才能は本物らしいし、仕事もできそうだけれど、教え子に手をつけ、奥さんは相手も知りながらキレもせずじっと耐えて見逃してくれているのに、3年ばかりで再会すると簡単に焼け棒杭になる最低の旦那。でもどこか、いいトシぶっこいているわりにやんちゃ青年っぽい含羞をとどめているんですよね。奥さんの立場だったらこのヤローだけど、こりゃモテてもしょうがねぇわという光線が出ている。

美的センスはあるが理数が苦手なばかりに工学部に合格できずにいる建築志望の生徒に、美大の建築科を勧めるのはアリだろうと思いますが、“建築”と“設計デザイン”との境界線ってどうなのかしら。結構深くて広い溝があるのではないかな。一級建築士の国家資格がないと設計事務所のトップにはもちろん、大きな仕事が請け負えないだろうし、美大出て二級で就職して、実務経験23年で一級受験するにしても、構造計算など理数はついて回るだろうし。

潤の「建築をやりたい」志望には、ゼネコンと組んで何十階ものでっかいビルやタワーを建てたいとか、設計事務所を事業拡大してブイブイ言わせたい的なベクトルはなく、ルネッサンスの教会建築か何かを理想に、小ぶりのオブジェみたいな外観の、レストランかコミュニティホールでも設計したいのではないでしょうか。

まぁ、資格とかキャリアとか、職能技能、各種業界事情のたぐいに関しては、良くも悪しくもざくざくにラフなのが昼帯のつね。こんな学歴、こんなポジションの人がこんな就職、転職、あるいは経営できるの?あり得なくない?と思ったら、脳内の“昼帯翻訳ソフト”を起動させればいいのです。当該業界に縁もゆかりもない無知蒙昧な一般ピープル視聴者が「だいたいこんなもんだろう」と想像する線基準なわけですから。言わば『ぷっすま』でときどきやってる、“ウロおぼえ絵心バトル”以下のリアリティと思って間違いない。

タイトル、あまーい主題曲(カルロス・トシキ改め鷹橋敏輝さん『Forever』)にOP映像のシークエンスが手ごろな助走となって、何となく自然に“ソフト起動”されて行く。ドラマ読解に際しての柔軟性、寛容性(と耐久性?)をブラッシュアップする意味でも、この時代の昼帯ドラマ、“名作”選とは言わず、怪作珍作も含めて、ときどき再放送してほしいものですね。

…いや、名作に越したことはないですけど。

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果てな?マーク

2010-10-08 16:46:08 | 昼ドラマ

こんなに長い期間、昼帯ドラマとノー接点なのは10年以上ぶりかもしれません。20011月期の『女優・杏子』以来、特にフジテレビ系東海テレビ制作の帯ドラマは、留守録画を併用しつつ、放送期間中第1週に少なくとも一度はチェックし、作品によって嵌まったり、嵌まらなかったりしてきました。

本編はもちろん、放送前予告も、OPも楽曲も、単話本編終了後CM明け次回予告も、一度も目にしない、見たのは制作発表のスポ紙報道とネットの番組サイトだけというフジ系昼帯ドラマは、この10年あまりで、現行放送中『天使の代理人』が初めてです。

報道では高畑淳子さん、市毛良枝さん、床嶋佳子さんと、アイドルでもタレントでもない本格的な専業女優さんが珍しく大挙して名を列ね、読んだことは無いけど原作モノ(=山田宗樹さん)だし、脚本チームのいずみ玲さんは『杏子』でも旧知だし、なかなか充実作の予感はあったのですが、すみません。望まない妊娠したとかしないとか、中絶するとかしないとか、本当に純粋に興味ないんですもん。ドラマのテーマとして重いとかイヤだとか嫌いだとかすら感じない。ひたすらどうでもいい。

人それぞれ。結論、それでたくさんじゃないか。妊娠するもしないも、したらしたで、しないならしないでどんな所感を持ちどう取り扱うか、それぞれの良心や境遇の要求に従ってそれなりに対処すればいいだけの話で、当節の厳しいドラマ制作予算を費やし綺麗で達者な女優さんを数々動員してドラマに仕立て上げるほどの意味はないと思う。

そもそも人間という、哺乳動物の一種にすぎないものの、いち個体が、命を得てこの世に生まれることにも、命を失うことにも、さほどスペシャルな意味や価値はないのです。

せっかくレコーダー起動して予約セットして、ちゃんと録れてるかわくわくしながら、深夜の貴重な自由時間を注ぎ込んで再生視聴するんだから、もっと虚構として興味惹かれるお話じゃないとね。

星野真里さんもアイドル時代から結構好きな女優さんで、『ゲゲゲの女房』ではユキエ姉ちゃんがお嫁に行ってしまってからの担当で出番が少なかったので、こっちでより濃い演技が見られるかもと思っていたのですが、出演俳優さんに贔屓がひとりふたりいるという動機“だけ”でドラマの視聴をはじめると、ほぼ例外なく挫折するんですよね。昼帯ではまたの機会ということで。

さて、そうこうするうちに、この枠の11月からスタートする新作の情報もリリースされています。『花嫁のれん』928日にいち早く掲載された東京中日スポーツの記事によれば、金沢の老舗旅館女将野際陽子さんと、夫に失踪されたアラフォー元バリキャリ女性羽田美智子さんとの嫁姑バトルものの様子。

野際さんは『ゲゲゲ』の登志おばばで、顔出し退場こそ早めでしたが、見えんけどおるヒロインの見守り手視点ナレーション担当として全篇を通して存在感を発揮してくれたばかり。羽田さんはそのひとつ前の朝ドラ『ウェルかめ』でヒロインのお母さん役でしたね。NHK朝と民放昼との、ショートスパンでの人材交流というか、地殻変動流動化も本格的に進んできました。

それはともかく、構造的に言わば“ヒロインの親世代と祖親世代”がダブルヒロインをつとめるわけで、高齢化日本をかなり如実に映し出すお話のようです。人生の岐路、決断の時期、「これからひと花」という“ヒロインたり得る”局面が、だんだん後倒しになったり、一度決めた人生の後半戦になって二度め三度めが訪れる、そういう時代になってきたということかもしれません。

演技歴豊富なおふたりに続いて、キャストを読んでいくと、烏丸せつこさん、山本圭さんのベテラン陣、やはりNHK朝ドラ(『どんど晴れ』)OBの内田朝陽さんに混じって、女将孫娘役らしいポジションで“里久鳴祐果”さんという珍しい名前を発見。

……里久鳴祐果。

おお、なんと非の打ちどころのない“どこで切れるか悩む系”のお名前でしょうか。八反安未果さん安良城紅さん仲里依紗さんらに堂々肩を並べて、並ぶ間もなく差しかわし1馬身2馬身突き放す級の、すがすがしいまでのどこで切れるかわからなさです。

“りきゅう・なゆか”なのか“りくなり・ゆうか”なのか、はたまた“さとひさ・めゆか”なのか。月河の知り合いの知り合いのそのまた知り合いで、男の赤ちゃんに“果”1文字で“みのる”と読ませて一発で出生届通過させたツワモノもいますから、女の子なら1文字で“みのり”もあり得る。そうなると名字は“りくなゆ”か“りくめう”か。“りくなゆ・みのり”か。

ここまで心地よく、どこで切れるかわからないの迷路に浸り切ると、もう検索エンジンとか使って簡単に“正解”をつかむのがもったいなくてしょうがありませんな。心ゆくまでこのどこで切れるかわからなさを掌中でコロコロころがして楽しみたい。

役どころとしては、羽田さん扮する東京から来た元バリキャリ嫁に対抗心を燃やし女将の座をゲットしようとする、野際さん孫娘にして羽田さんのライバルという、昼帯的には伝統のあるヒロイン敵役ポジションらしいですよ。ひとつ上、ふたつ上の世代がぐっと渋く、知的な感じで固めているので、ぜひキャピキャピ汁っけの多い“憎らし可愛い”=“憎カワ”路線のライバルで行ってほしいですね。昼帯ドラマはある意味、“人の人生のあらゆる局面を対立葛藤の図式で捉える”という構造を持つ世界ですから、敵役次第で精彩を帯びもするし、ダラけもする。

画像検索も先の楽しみにとってあるので、お顔もまだ存じ上げませんが、“里久鳴祐果”さん、期待してますよっ。

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