1944年生まれだから、今年でなんと71歳。
9月に開かれるBLUE NOTE JAZZ FESTIVALに参加ということで、昨年に続き来日する運びに。
年齢に関係なく、未だにスーパー・ギタリストとして第一線で精力的な活動を続けるという驚くべき存在である。
自身の肉体の一部を楽器として使うボーカリストの場合、物理的に歳を取れば当然肉体は劣化し、声に衰えが出てくるのは避けられないので、この年齢まで活動はできないであろう。
一部の例外もあるが、ライブとなるとボーカルのキーを下げなければならず、レコードやCDなどから聴こえた往年の声は期待出来ないのである。年を取ったから仕方がないとは思うのだが、やっぱり現在の声量とのギャップにがっかりするのである。
ジェフの場合は、ギター演奏専任ということで、体力の衰えはあったとしても腱鞘炎などにならなければ、ボーカリストの其れと比べればまだ余裕がある。また歳を重ねることにより蓄積された人生の経験から、演奏に関しても円熟の境地というような評価が得られるのである。
ボーカルという切り口で、ジェフのキャリアを線引きすると、BBAのアルバムとBLOW BY BLOW の間にそれは入ると思う。
ターニング・ポイントのきっかけとなったのが、1973年発売のBECK BOGERT & APPICEである。このスタジオ・アルバムは、彼らのハード・ロックの演奏スタイルにアメリカ南部のロックやソウル系の曲がうまく噛み合い、非常に聴きやすいものになった。実際、全米12位とヒットした。
様々な理由でバンドに専任ボーカルを決定することができず、仕方なしにメンバ-3名がボーカル・パートを分け合って各楽曲が録音されたのだが、ボーカルが非力だったことをカバーしようとしたのか 、各自エンジン全開の演奏を行い、最小編成のトリオの演奏にも関わらず非常に迫力のあるものとなった。
このスタジオ録音盤は、後日発売された日本でのライブ盤の迫力には負けるが、スタジオ録音ゆえ各楽器の音が明瞭になっており、かつ演奏におけるミスタッチもない。特に、ジェフのギターの様々なフレーズは美しく聴こえ、ファンとしては楽しむことが出来る。
そう、ターニング・ポイントのきっかけとは、まさしく一曲目のジェフがボーカルを取っBLACK CAT MOANのこと。これを自身で聴いて二度とボーカルと関わらないと決め、その後はインスト中心のアルバムを出すようになったのでは、と勝手に想像する。
Beck Bogert & Appice - Superstition