1.“渋いお茶”とか“渋柿”など、舌だけでなく口中の粘膜がしびれると言うような実際に体験する感覚
2.“渋い声”とか“渋いファッション”とか、一見地味ではあるが味わい深いと言う肯定的な印象
3.“渋い顔をする”とか“渋い客”だとか、不愉快、不満もしくはけちと言うような否定的な印象
70年代ロック界でに於いて、上記2の意味での渋いと称されるアーティストは、沢山存在すると思うが、個人的にはこのお方、DAVE MASONである。
60年代に結成されたTRAFFICと言うイギリスのロック・バンドで活躍したと思えば、1968年の2作目の途中で脱退。
その後、ROLLING STONESのBEGGARS BANQUETのアルバムのセッションに参加したり、アメリカン・バンド、DELANEY AND BONNIEのツアーに帯同したり、GEORGE HARRISONのALL THINGS MUST PASSのレコーディングにも登場と、裏方に徹し自身が前面に出ての活動が無かった。
その地味だった数年間を過ごした後、ようやく待望のソロ・アルバム、ALONE TOGETHERが1970年のブルーサム・レーベルより発売。
ソロ一作目としては成功
1971年にはMAMA’S & PAPA’SのCASS ELLIOTと共同でアルバムを作成。
何で、2作目が前作の勢いをさらに発展させたアルバムではなく、共作アルバムになってしまたのかね?
1972年には、半分がスタジオ、半分がライブのHEADKEEPERを発売Tとコンスタントなソロ活動を続けた。
一枚のレコードで、半分がスタジオ、の頃半分がライブ。ちょっと中途半端に感じる。
1枚目のALONE TOGETHERは中ヒットしたものの、その後尻窄みとなり、ブルーサムとの契約は切れた。
ブルーサム・レーベルと言えば、DAVEとの契約打ち切り後CRUSADERSや初期のPOINTER SISTERSなどジャズやソウルぽいアーティストが加入し、一定の成功を収めた。
だから、DAVEの音楽性が当時のレコード会社のマーケティングの方向性とはちょっと異なっていたかもしれない。
その翌年ブルーサムは、DAVEの反対を押し切りDAVE MASON IS ALIVEなるライブ・アルバムを発売。
一応このレコードは持っているが、あまり聴いた事がない。少し前日本で紙ジャケ仕様のCDが出たが、そのときは買っていない。現在プレミア価格がついてしまい、買おうにも買えなくなってしまった。
そしてDAVEは1973年にコロンビアと契約し、3枚のスタジオ・アルバムを出した。そして、彼のそれまでの活動の集大成として2枚組みライブ・アルバムを1976年に出した。
アルバム・タイトルはCERTIFIED LIVEと名付けられた。つまりその内容が当人によって承認済みのライブ盤と言うことである。
かってブルーサムから出されたライブ盤が本人の承諾がなかったにも関わらず発売されたため、よほど怒りを感じていたのか、このような当て付けと思われるアルバム・タイトルとなった。
中身はと言うと、バック・バンドとの息もぴったり、アコースティック・セットでの演奏もばっちり。スタジオ録音とは違い迫力がある。
前年の1975年、世界で1000万枚以上売れたと言われるFRAMPTON COMES ALIVEの成功によりレコード会社が2匹目のどじょうを狙った感はないとは言えないが、内容的にはまったく負けていないと思う。
FRAMPTON COMES ALIVEは楽曲の質、歌唱と演奏能力の高さもあったが、やっぱりピーターのモデルのようなルックスのよさも爆売れに寄与したかと... ハンサムはいつも得をする。
DAVEは現在も音楽活動を続けている。その息の長い活動こそが、渋さを持つ飽きの来ないアーティストとして認識されている証左ではないだろうか。
助手:まさしく、この人こそ渋いと言えるロック・アーティストですね。百千の使い捨てのポップ・ソングと違い40年以上たった今でも聴いても違和かがないと言うか…
博士:その渋いと言う言葉は、まったくワシの様な存在を形容しているとも言えるじゃろう。歳は取ったがそのかもし出す渋さは昔と変わらぬ。
助手:いや~、博士の場合は、どちらかと言うと、ジャンボ宝くじを大物狙いでバラで買って、300円の当たりくじさえかすりもしなかった時の表情に出る、“渋い”の方ですね。