「スーパー歌舞伎」の復活

2012年06月14日 | 人物 -

三代目市川猿之助さん。
彼は、ある一つの文化・芸術の「カタチ」を、歌舞伎界の決め事から離れ、
勇気を持って 果敢に挑戦し、私たちに見せてくれた。
そのカタチに、私たちは 心ゆくまで魅せられて 何度も劇場に通った。
豪華な衣装や ピーターパンかと思わせる宙乗りは、度肝をぬくもので、
猿之助歌舞伎は ファッションのようにブームをつくったと思う。

今、その「スーパー歌舞伎」が、復活した。
三代目の精神は、四代目、五代目へと引き継がれていくのだろう。
型破りな歌舞伎役者が、完璧なまでに作り上げた “一派のカラ―” は、
あの時代の象徴として君臨し、人々の記憶からは消えることがない。
結果がどうであろうと、しっかりと遣り遂げ、「カタチ」を形成し、
人々に「次の演目は何だろう」と 毎回のように期待させたのは、
素晴らしい成果だった と 思う。

時代は、三代目に味方して 彼のやることを応援した。


クロスオーバーという言葉があるが・・・
まさに 現代は演劇の世界でも、そういう雰囲気であって・・・
現代劇やテレビドラマや映画に出演する歌舞伎役者が増えた。
今回の四代目猿之助を襲名した市川亀治郎さんという役者にも、
ある灯がともり、全国区の役者に成長した。
そして、今回の四代目猿之助襲名披露公演となった。

三代目猿之助さんのDNAを引き継いだ演技派「香川照之」という俳優は、
45歳で歌舞伎の世界に飛び込む決意を固め、46歳で初舞台を踏んだ。
性格も明るく、前向きで、熱意を持ち、何よりも聡明で、演技力が凄く、
主役を簡単に くってしまうぐらいの演技派である。すでに名脇役として
日本アカデミー賞助演男優賞には、毎年のように顔を列ねるぐらいの名優だ。

そして、香川さんの長男もまた、8歳で初舞台を踏んだ。
「 澤瀉 ( おもだか ) 屋」の復活とも言えるような・・・魅力あるメンツ!
数年後、数十年後の彼らの活動に期待がかかる。

三代目猿之助さんの身体は不自由でも、まだ「やりたいもの」があれば、
彼らの身体を使って、演出という形式で、新しい舞台を創造することが
これからは可能になってくる。
やはり三代目の能力・才能というものは、歌舞伎界からしては、稀有で、
珍しい存在だと思う。




「スーパー歌舞伎」全盛期と、同じ頃だったが・・・
五代目坂東玉三郎さんの主演する西洋劇に嵌り、彼の演じる特異な女性像が
内容的にも あまりにも鮮烈だった。
私は 原作を読んだり、また再び観劇したり・・・。
そして、忘れがたいのは、素晴らしい、彼女のカーテンコール。
ドレスは、羽衣のように軽く、素敵なデザインで、彼の動きを活かした。
何度も、何度も、舞台の中央に出てきては、独特なおじぎで、華やかさと
美しさを見せつけられた玉三郎舞台のカーテンコール。 すごく恋しい。
若くて美しい玉三郎さんの洋風の豪華絢爛な舞台衣装と、優雅な所作!
観客もよく知っていて、そこそこの回数では席を立とうとはしなかった。
回数を経るごとに盛り上がっていくカーテンコールだけに、見逃し厳禁だ。
あの存在感は、歌舞伎役者の女形として、また違った世界観を創り出していた。



当時は、本当に、面白い舞台が多かった・・・。
文化に資金を提供してくれる人も多かったし、とにかく集客できたから
製作費もしっかりと執れたからだと思う。
歌舞伎役者さんもしかりで、いつも興味をそそる「素晴らしい舞台」を
見せてくれてくれていた。・・・そう思う。


久しぶりに「スーパー歌舞伎」(ヤマトタケル)が、観たくなった。
このような形で復活するとは思っていなかったので、余計に衝撃的だ。
月末までやっているそうなので、どこかで足を運びたいものだ。
しかし、このようにして座組みが成立したら、また再演も近いことが
予想され、スーパー歌舞伎ファンにとっては嬉しいことだと思う。