「今年、2万人のヒーローが引退します。」というコピーが踊る、電車内の中吊り広告が、目にとまった。
久しぶりに東京の電車に乗っていたときだ。
「日本骨髄バンク」、ACジャパンの公共広告。骨髄を提供するドナーへの登録を呼び掛けるキャンペーンのキャッチコピーである。テレビやラジオでも流されている新しいCM。「骨髄バンク登録者」=匿名の「ヒーロー」ということだ。
で、「2万人が引退します」というのは、「18歳から54歳までという年齢制限などにより、年間2万人が引退しています」という事情からだが、「54歳まで」というのは、まさに「まもなく54歳でなくなる」当事者としては、うーむ、となってしまった。
ポスターの写真はイメージだから、「現役ヒーロー」として若い人の写真もいっぱいあしらわれている。骨髄バンクへの新たなドナー登録を促すために、「新しいヒーローが必要です」ということを訴えているのだから、もちろんもうすぐ引退する者は、あまり関係ないのだろう。
確かに骨髄バンクの登録ドナーは貴重な存在だ。私は今までなったことはない。たいへん申し訳ない気持ちになる。
思いがけず年齢のことを指摘されて驚いたが、私はそもそも年齢にも服装にもたいして気を使わない人間として生きてきた気がする。
そんな中、東北を巡る正月の短い旅の最中、一晩だけ郡山に立ち寄って「ユニット・ラビッツ」のリーダー佐藤茂紀と飯を食ったりしたのだが、そのとき、シゲに、なんと、革ジャンをもらってしまった。
私は冬場には比較的革ジャンパーを着用してきた傾向があると思うが、最近はそうでもなくなっていた。ユニクロのフード付き合皮ジャンパーがボロボロになったので着なくなってから、ほぼ着ていない。
郡山のライダー演劇人である佐藤茂紀は、東京に来てもバイク乗りらしい本格的な革ジャンパーをよく着ていたし、何しろ幾つも持っているということだった。それが似合うシゲは、かっこよいのだが、現役の高校英語教師としてその恰好で授業もしているようだ。
シゲがプレゼントしてくれたのは、なにしろ革ジャンパーといっても本格的なライダーズで、ずしりと重い。最近の軟弱軽薄なユニクロのウルトラライトダウンに馴れた身としては、「おっ」となる。
アメリカ製だから日本のものよりサイズも大きいが、「Mサイズ」である。着られるし、違和感はない。写真のように、中にウルトラライトダウンのベストを着るのは、なるべく避けた方がよさそうだが。
この写真は、ケータイで「自撮り」したものである。何しろガラパゴスなので、撮りながら自分の顔は見られない。当てずっぽうの撮影である。シゲと一緒の写真を彼がFacebookに挙げているが、肝心のシゲが革ジャンでないのでブログはこっちの写真にした。こんな写真もあえてアップして、今年は少しは身だしなみについて自戒したい、と言っているのも今のうちだけだろう。
ともあれ、シゲ、ありがとう。
Facebookといえば、巽孝之教授に紹介された Justine Wiesinger の文がいつも、英語できない私が読んでもどこかとぼけていて面白いのだが、たった今、コメント欄のところに彼女が珍しく日本語で「坂手さんのおかげで初めてイギリスへ行くことになった。オクスフォード大学の学会で『たった一人の戦争』の空間の使い方について話すつもりだ。興味深いセリフを読ませてありがとうございました!」という文が。
『たった一人の戦争』、今年、日本でも出版される予定があるので、未見の方、よろしく。