「あんまり、ひとの芝居を褒めない」と言われている私だが、じっさいはそうでもない。
で、『川辺市子のために』が、マル、であった。
細野辰興監督作・演出の一人芝居『レプリカントは芝居ができない?』で、この人がいるからこの芝居を作ったのだなと思わせた、田山由起が出ている。
で、予備知識のないまま観にいった。行ってよかった。
一人芝居でない田山由起は、かっちり、きっぱり、やっていた。相手がいた方がやりやすいところも大きいだろう。この個性はこれからもっと注目されるはずである。
『川辺市子のために』は、「無戸籍」という運命に翻弄される川辺市子(大浦千佳)を中心にした、しかし、ちょっと、不思議なこだわりに支配された、群像劇である。
確実に、ある内容を描くために、その実質に即した関係性と方法論を選んでいる。
それは見てわかる。
当たり前のことのようだが、今の作り手の多くは、そこで、自身に対する問いかけを、怠るのだ。
今の四十代前半の世代の作・演出家が、どうしても、多作のためか、自己模倣に近い堂々巡りに陥りがちな傾向や、ステレオタイプを疑わない甘さがあるのに対して、何か、決意して、演劇でしかできないことにこだわっている感じがする。
まだ上演中なので、先入観を持ってみてほしくないので、他の感想は言いたくない。
で、作・演出の戸田彬弘は、どういうところで演劇を学び、これまでやってきたのかを本人から聞いて、腑に落ちた。でも、まあ、誰かの影響ということだけではなくて、本人が、自分で選んでやっていることだ。
これについても、まだ上演中なので、先入観を持ってみてほしくないので、言いたくない。
四十代以下の世代の演劇を観てみたいという方に、お奨めできる。
https://twitter.com/cheesetheater
https://natalie.mu/stage/news/282147