普天間基地移設について、かつて鳩山元首相は「最低でも県外」と言ったが、その場合の「県外」は「国内」を意味する。
では、「国外」になるとしたら、それはどこか。具体的にその候補は挙がったことがある。
五年前、私はテニアンに行った。
ハゴイ飛行場を含むテニアン島の北部3分の2にあたる土地は、第二次大戦後、北マリアナ諸島政府から米海兵隊に貸し出されている。しかし軍用機等の配備や駐留部隊はなく、在沖縄海兵隊の演習場としては使用されるが、駐屯地ではない。
2010年、テニアン市長レーモン・デラクルスは普天間基地移設先として、ハゴイ飛行場を含むテニアン島北部への受け入れを表明した。それに乗っかる日本の政治家らもいたが、それは首尾よく運ばなかった。
近年では、米海兵隊と島嶼防衛を主な任務にする陸上自衛隊の共同訓練、上陸演習等が行われているところだ。
十七世紀以来、スペインに占領され、一度は住民全員が追い出され無人島化し野生動物の島になり、ドイツに売却され、日本に占領され、今はアメリカの自治領である、テニアン。
日本へ空襲した編隊、原爆を落とした米軍機も、この島から出発している。
そして、もしもここに普天間にいる米海兵隊部隊が移ってきたら、この島は、いったいどうなっていただろうか。
昨日、沖縄のいくつもの選挙の結果に一喜一憂しながら、別な事情で今自分がこの南の島々のことを考えなければならない時間の中にもいる。
そんなこんなで、基地というものはもともとそうではなかったどこかに作られてきたものだという、しごく当然な事実を前に、あらためて複雑な思いが湧いている。
というわけで私は、沖縄とはまた別な南の島についての仕事に向かっている次第。