片山夏子さんの『ふくしま原発作業員日誌 イチエフの真実、9年間の記録』。
必要があって読み返していて思うのは、この本が一番似ていると私が思う書は何かというと、メルヴィルの『白鯨』である。という気がすることだ。
ディティールに、人間の営為に、こだわりながら、人間の手に負えない大きなものと対峙しているというところだろうか。
ものすごく細かいところと、歴史と人間の普遍的な有様に、触れているところか。
ユーモア・人間味と冷徹な事実、話体と客観データが、それぞれ向き合い、混じり合う仕組みか。
そして私たちもまた、日本列島というポーピッド号の乗組員であるということを、「忘れるな」と突きつけてくるところか。
『白鯨』はアメリカ人の第二の聖書と呼ばれるが、この本を『白鯨』同様すべての高校生たちに、いや、大人たちに読ませたい。
自分の為すべきことを見つけだす手掛かりになるだろう。
東京新聞の片山記者が福島第1原発事故後に働く作業員を9年にわたり追って連載してきた。作業員さんとその家族の日常、作業と裏話、使い捨てされる悲しみ、苦悩、事故後の先行きが見えぬ生活への不安、避難者や地元の人たちの苦しみ、家族へのあたたかい気持ち…などの、人間物語です。
「講談社本田靖春ノンフィクション賞」「むのたけじ地域・民衆ジャーナリズム賞」大賞等を受賞。
朝日新聞出版。460ページの厚みで、1700円+税。