昔、壜をモチーフに執拗に描き続ける日本の画家がいた。
そんなに有名な画家ではない。
しかしマイナーではない。
昔と言っても50年足らずだが、美術手帖にグラビアと活版の特集が掲載されていた。
一升瓶を特に気に入って、描いていた。
一升瓶は「チンポコ」と、その画家は言う。
成程、そんな興味や関心が画家の創作意欲を掻き立てるのかと、絵心の無いオカブは思った。
抽象でもない、具象でもない、ただただ壜をモデルにした淡いマティエールの作品群になぜか惹かれた。
それが証拠に、掲載誌もとうの昔にどこかに処分した今でも鮮明に覚えていて、その画家のことが忘れられない。
名前も覚えていないが、気に入っている。
「名画」でなくとも「名画」は身近にたくさんある。
今度、銀座の画廊にでも行ってみようかと思っている。
春の雪傘なく衣装に降りにけり 素閑
淡雪や百万遍の石ぼとけ 素閑
春の雪くりやにやかん湧きにけり 素閑
春の雪まつげを濡らす水しずく 素閑
春の雪小路まじわる下谷かな 素閑
西のかたわずか光るや春の雪 素閑
観劇の足袋を濡らすや春の雪 素閑
春の雪蔵と母屋に積もりけり 素閑
初梅の花びら包む春の雪 素閑
春の雪昼の語らひ散じたり 素閑
病室の窓も暮れるか春の雪 素閑
春の雪生きて降り落ち消えにけり 素閑