プロヴァンスに行きたい。
夏に行きたい。
観光地ではなく、誰も行かない田舎に行きたい。
輝く太陽、碧色の空、しじまを破る噴水の音。
そんな中で夢と現の中を行きつ戻りつして無聊に身を任せたい。
贅沢な望みである。
多くの日本の文人が古来より南仏プロヴァンスに憧れたが、まさに、その西欧にあっての異国性。何と言っていいのか分からないが、西欧に在って西欧ではないエキゾチシズムが人を惹きつける。
豊かな風物。しかしそれはパリのような整然とした西欧の都会の文化ではない。
十字軍の昔から異文化との接点を持った、ある種雑然とした環境である。
太陽に照らされたプロヴァンス。
魅力的である。
日曜のミモザの咲ける垣の家 素閑
祝祷に散じる人やミモザ咲く 素閑
あざやけくミモザの如き胡姫みたり 素閑
寡婦の弾くショパンの雫ミモザ咲く 素閑
空鈍くミモザの微風染むる街 素閑
羅漢たちミモザの陰でほの笑ひ 素閑
ミモザ咲く神宮の路煉瓦塀 素閑
ミモザ咲く風に笑うは娘たち 素閑
花ミモザモンマルトルの石段や 素閑
おくれ毛をただなでる風花ミモザ 素閑
硝子窓ミモザの咲くを午後の茶に 素閑