スポーツが嫌いだ。
スポーツが嫌いと言うよりスポーツが苦手だ。
音楽も苦手だ。
こう言うとなんだが、オカブは時間に密接に結びついた物事が大の苦手だ。
だから、スポーツのテンポに乗った動作や、絶妙のタイミングでのシュートやパスなど全く別の世界だ。
音楽もまた、リズムがまったく取れない。
静的なものしかできないのである。
どうしたものか?
そこで、オカブは時間とあまりかかわりのない登山という「スポーツ」を選んだ。
これは、非常に楽だった。
一面で体力的には苦行に近いものもあったが。
しかし最近では「登山」の一分野のクライミングでは一秒を競う競技が行われている。
多くの人があれは「登山」とは見做さないが、なんとなく釈然としない。
そこで登山もやめて、家に引きこもっている。
なんとも扱いようのない爺である。
うそなくや暮れるまでなけなき告げよ 素閑
ここの地に幾年住みたる鷽なけり 素閑
ひそやかに四方に響くうその声 素閑
あずまやにうその来たれる丘の家 素閑
やまひえて床の端よりうそのなく 素閑
春なれどつぼみばかりのうその庭 素閑
枯れたるも華やぎしかなうその庭 素閑
通せんぼ子らのかひなにうその鳴く 素閑
家閉ざす鉱山の街うそなけり 素閑
川波の岸に向けてやうそなけり 素閑
死に行ける女の絶唱うそなけり 素閑