これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

問題集失踪事件

2009年11月08日 21時05分33秒 | エッセイ
 勤務先の高校で、生徒から集めた問題集を返していた。
「先生、私の問題集がありません」
「俺のもです」
 おかしなことに、5人の生徒が「提出したのに戻ってこない」と主張する。
 はてさて、こちらは受け取っていないのだが、どこへ行ったのだろう。
 ここはひとつ、名探偵を気取って、事件を解決してみよう!
 ちなみに、私が一番好きな探偵は、金田一耕介でもなく、浅見光彦でもなく、江戸川コナンである。

 一番多い原因は、実は出していなかったという勘違いだ。提出しなければという思いが、提出したという思い込みに変わると、問題集はロッカーの中にあるだろう。
「一応、ロッカーや机の中を見てきなよ」
 とは言ったものの、5人まとめて思い込むのは不自然だ。
「先生、やっぱりありません」
 生徒たちは、しおれた顔で戻ってきた。うーん、外れたか……。

 提出の状況としては、私の机がある○○指導室前に提出箱を置いておいた。生徒は各自で、その箱の中に問題集を入れるのだ。提出期限になるまで箱は出しっぱなしだから、誰でも手に取ることはできる。
 そういえば、前の学校では、社会科室に生徒のノートが隠されていたということがあった。もしや……?
 私は次の推理を口にした。
「わかった、誰かが提出箱から問題集を持ち出したんじゃない!?」
 これは、まったく受け入れられなかった。
「えー、何のために?」
「そんな陰険なヤツいるかなぁ?」
「違うんじゃない!?」
 やり取りを見ていた生徒までもが反論し、一斉にブーイングをくらった。
 うーん、ちょっと強引だったかな?

 ない知恵をしぼり出し、私は一生懸命考えた。私以外にも、同じ問題集を使っている先生がいる。その先生も、提出箱を用意していたとすれば?
 不意にピーンと来たので、自信を持って言った。
「箱を間違えなかった? 私の箱は職員室前じゃないよ」
「あ、職員室のほうに出しました……」
 生徒も合点がいったようだ。
 普通、提出箱には教員の名前が書いてある。私の場合は「笹木クラス 問題集提出箱」と表示してあるのだが、なぜ他の先生の箱に入れたのだろう?
 すぐに生徒が帰ってきた。
「先生、ありました!! よかった~!」
 やはり、5人の生徒は、自分と同じ問題集が入っている別の箱に入れてしまったのだ。担当の先生が「間違ってこちらに提出してきた」と教えてくれればよかったのだが、箱の中に置き去りにされていたらしい。それもどうかと思うが、ひとまず見つかったから一件落着だ。
 やっと推理が当たり、私はちょっと鼻高々になった。
 まあ、コナンの足元にも及ばない、へっぽこ探偵だったが。

 5人の問題集を採点する。よく書けているものの、提出先を間違えて期限に間に合わなかったから減点だ。全員2点ずつ下げた。
 念のために言っておくが、決して、私の名前をおぼえていなかったから減点なのではない。
 決して!



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