先日、久しぶりに作った餃子が好評だったので、第二弾に挑戦した。
今回は、やや大きめの皮を生協で注文し、きっかり20個分の具を用意した。過不足がないと気分がいい。
試験を控えた娘を勉強させ、私が一人で皮に具を詰め、餃子を完成した。夫が様子を見に来て、ズラリと並んだ餃子に感嘆の声をあげた。
「あっ、キレイにできたね」
「でしょ~!」
そこまではよかったのだが、どちらが焼くかで揉めた。
「私が作ったんだから、焼いてくれてもいいじゃない」
「でも、俺はチャーハンも作らなきゃいけないんだ」
「今日は私が夕飯を作るのよ」
「……じゃあ、いいよ」
結局夫が折れて、私はノンビリひなたぼっこしながら、チャーハンと餃子のランチを待つことになった。
ジャージャー、という威勢のいい音が聞こえてくる。ごま油の香りも漂ってきて、「早く食べたい」という気持ちが高まった。
「できたよ~」
夫に呼ばれ、食卓に向かった。
しかし、皿の上に載っていた餃子は、焼き色が不十分であるばかりか、ところどころ皮が破れていた。むき出しになった具は生ゴミを連想させ、盛り上がった気持ちを一気に萎えさせる。
何これ! 私の力作がぁ~~!!
夫は、直径26cmのフライパンに、20個もの餃子を無理矢理詰め込み、たっぷりの水を入れて焼いたようだった。皮が差し水で膨れあがり、水気が飛ばないまま盛りつけられていた。
パリパリの餃子が好きな私は、激しく後悔した。
自分で焼けばよかったーー!!
しかし、大役を押しつけた身としては、夫に文句を言うわけにいかない。「美味しい」とも「不味い」とも口にせず、黙々と箸を動かした。
あとから娘がやってきて、夫特製のカニチャーハンを食べ始めた。
「うん、美味しい、美味しい! お店で食べるのより上手だよ」
お腹を空かせた娘は、チャーハンを食べることに夢中で、まだ餃子が目に入らない。
半分ほど食べたところで、娘はレンゲを置いた。右手に箸を持ち、餃子に視線を移すと、一呼吸置いて言った。
「……あれ? なんかボロボロだね……」
ましな形のものを残しておいたのに、フニャフニャでひしゃげた皮に包まれた餃子は病人のようだ。皿のあちこちには具が飛び散っていて、荒れ果てた雰囲気を醸し出している。
ミキは、箸を伸ばして餃子を取ると、パクリと頬張った。無言でモグモグ口を動かすと、率直で残酷な感想を述べた。
「うん、これは、餃子というよりワンタンだね!」
私は笑いをかみ殺すのに苦労した。たしかに、ワンタンといえないこともない。ふやけてやわらかくなった皮ばかりが、存在感をアピールしている。
子供の無邪気な発言は、大人の嫌味よりも、ある意味破壊力が大きい。ミキはさらに問題発言を続けた。
「お母さん、水餃子ってこんな味? ミキはまだ食べたことないんだけど」
おおっ、そこまで言うか!!
私は返事に困り、どう切り返したものかと悩んだ。
それまで沈黙を守っていた夫が、ようやく、消え入りそうな声でつぶやいた。
「……ごめんね……」
夫にとっては、努力が認められなかったばかりか、とんだ毒入り餃子になってしまったようだ。

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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
今回は、やや大きめの皮を生協で注文し、きっかり20個分の具を用意した。過不足がないと気分がいい。
試験を控えた娘を勉強させ、私が一人で皮に具を詰め、餃子を完成した。夫が様子を見に来て、ズラリと並んだ餃子に感嘆の声をあげた。
「あっ、キレイにできたね」
「でしょ~!」
そこまではよかったのだが、どちらが焼くかで揉めた。
「私が作ったんだから、焼いてくれてもいいじゃない」
「でも、俺はチャーハンも作らなきゃいけないんだ」
「今日は私が夕飯を作るのよ」
「……じゃあ、いいよ」
結局夫が折れて、私はノンビリひなたぼっこしながら、チャーハンと餃子のランチを待つことになった。
ジャージャー、という威勢のいい音が聞こえてくる。ごま油の香りも漂ってきて、「早く食べたい」という気持ちが高まった。
「できたよ~」
夫に呼ばれ、食卓に向かった。
しかし、皿の上に載っていた餃子は、焼き色が不十分であるばかりか、ところどころ皮が破れていた。むき出しになった具は生ゴミを連想させ、盛り上がった気持ちを一気に萎えさせる。
何これ! 私の力作がぁ~~!!
夫は、直径26cmのフライパンに、20個もの餃子を無理矢理詰め込み、たっぷりの水を入れて焼いたようだった。皮が差し水で膨れあがり、水気が飛ばないまま盛りつけられていた。
パリパリの餃子が好きな私は、激しく後悔した。
自分で焼けばよかったーー!!
しかし、大役を押しつけた身としては、夫に文句を言うわけにいかない。「美味しい」とも「不味い」とも口にせず、黙々と箸を動かした。
あとから娘がやってきて、夫特製のカニチャーハンを食べ始めた。
「うん、美味しい、美味しい! お店で食べるのより上手だよ」
お腹を空かせた娘は、チャーハンを食べることに夢中で、まだ餃子が目に入らない。
半分ほど食べたところで、娘はレンゲを置いた。右手に箸を持ち、餃子に視線を移すと、一呼吸置いて言った。
「……あれ? なんかボロボロだね……」
ましな形のものを残しておいたのに、フニャフニャでひしゃげた皮に包まれた餃子は病人のようだ。皿のあちこちには具が飛び散っていて、荒れ果てた雰囲気を醸し出している。
ミキは、箸を伸ばして餃子を取ると、パクリと頬張った。無言でモグモグ口を動かすと、率直で残酷な感想を述べた。
「うん、これは、餃子というよりワンタンだね!」
私は笑いをかみ殺すのに苦労した。たしかに、ワンタンといえないこともない。ふやけてやわらかくなった皮ばかりが、存在感をアピールしている。
子供の無邪気な発言は、大人の嫌味よりも、ある意味破壊力が大きい。ミキはさらに問題発言を続けた。
「お母さん、水餃子ってこんな味? ミキはまだ食べたことないんだけど」
おおっ、そこまで言うか!!
私は返事に困り、どう切り返したものかと悩んだ。
それまで沈黙を守っていた夫が、ようやく、消え入りそうな声でつぶやいた。
「……ごめんね……」
夫にとっては、努力が認められなかったばかりか、とんだ毒入り餃子になってしまったようだ。

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