これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

DVDを借りに

2010年06月06日 20時26分02秒 | エッセイ
 映画が見たくなった。
 でも、公開中の作品に魅力を感じるものはない。だったら、以前、見損ねた映画のDVDをレンタルしたほうがいい。
 劇場まで出かけることが好きな私にしては、珍しい選択である。娘に付き合うことはあっても、自分のためにレンタルするのは何年ぶりだろう。

 昨日の夕方、日が傾いてから、散歩がてらお店に出掛けることにした。
 時計は17時を回っていたが、薄日が差している。これから夏至に向かい、ますます日が長くなっていく。
 歩道を歩いていたら、向かい側から初老の男性2人が、大きな声でどうでもいいことを話している。騒々しさに顔をしかめてすれ違ったとき、頬に水滴が飛んできた。

 まさか、今のオヤジの唾!?

 私は卒倒しそうになりながら振り返った。しかし、オヤジたちが遠ざかってからも、新たな水滴が落ちてくるではないか。

 雨だ……。

 空を見上げると、晴れているのに細かい雨粒が、次から次へと糸のように降っている。男性2人に着せた濡れ衣を、心の中で詫びながら、私はレンタル店へと急いだ。夕方でなければ日傘を持っていたのに、なんと間の悪いことよ。まさか、ネズミの嫁入り、いや、キツネの嫁入りと言われる天気雨に見舞われるとは思わなかった。珍しいことをするものではない。

 店に着いてホッとした。天気雨なら、DVDを選ぶ間にやむだろう。私は棚の作品とにらめっこし、「どれにしようかな」と作品選びを始めた。
 好みは洋画だ。ちょっと疲れ気味なので、重い話はパスしたい。頭を使わない、軽~いものがいい。
 レストランでオーダーに迷う人は、ここでも即決できないに違いないが、私はほとんど悩まない。直感で決める。以前、マイミクさんが勧めていた『ハイスクールミュージカル・ザ・ムービー』を見つけ、パッと手に取った。これにしよう。
 しかし、あまりにあっけなく決めたので、まだ雨が降っていそうだ。「もう1本」と心の声が聞こえる。香港映画、戦争もの、アクションなどを物色しても、ピンとくるものがない。奥へ奥へと進み、ようやく惹かれるものを見つけた。
『グラン・トリノ』
 クリント・イーストウッド主演・監督のこの作品は、なかなか評判がいい。イーストウッドは俳優としても好きだったし、監督としても才能豊かである。「これだ!」と自信を持って選んだ。
 会計したあと、重い作品はパスしようと考えていたことを思い出した。だが、もう手遅れだ。外へ出ると、ちょうど雨も上がっていた。

 家でDVDを見るときは、何かと邪魔が入っていけない。「お母さん、お母さん」とあれこれ話しかける娘の相手をして、夕飯の支度、風呂、片付けものなどに追われていたら、昨日は結局見られなかった。やはり、日曜日の朝しかない。
 眠かったけれども、今日は6時半に起き、家族が寝静まっている間に、ひとりDVDを見た。
『ハイスクール・ミュージカル』と『グラン・トリノ』のどちらでもよかったのだが、上に載っていた『グラン・トリノ』をプレーヤーに入れた。
 途中、弱い地震に邪魔されたものの、いい映画だった。「憎まれジイさん」がアジア系の隣人に心を開いていく様子は、「遠くの親戚より近くの他人」という感じで温かい。グラン・トリノとは、車の名前で、ジイさんの自慢である。イーストウッド扮するウォルトジイさんは、この車と犬を何よりも大事にしているのだ。
 相手に悪態をつく強烈な会話に笑い、自由に生きることの難しさに考えさせられた117分だった。
 ただ、予想通り、ハッピーエンドではないところが悲しい……。

 たまには、こんな週末の過ごし方もいいけれど、『ハイスクール・ミュージカル』を見る時間が取れなかった。
 疲れた頭を空っぽにできる、楽しい映画だそうだ。
 こちらも早く見たいものである。
 もっとも、私の頭は、いつでも空っぽかもしれないな……。
 



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コメント (12)
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