毎年9月は甥と姪の誕生日会が行われる。アルコール係は姉で、ケーキ係は私だ。今回は地元の人気店で買おうと店に向かったが、出遅れたようでデコレーションは3個しか残っていなかった。
「じゃあ、イチゴのデコレーションと、洋ナシのタルトを誕生日用でお願いします」
「はい、かしこまりました。お名前は何とお書きしますか」
「えーと……」
危ない、危ない、すべり込みセーフである。もうちょっと遅かったら、何も残っていなかったかもしれない。今日は運がよかった。
包装を待っていると、ろうそくが目に入った。不意に、これも買っていこうかしらと思いつく。甥が中3、姪が中1だから、15歳と13歳になるはずだ。
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「見て見て、今日はろうそくも買ってきた」
「へー」
娘が気のない返事で答えた。ラインでのやりとりに忙しくて、適当に聞いている。
「51歳と31歳だね!」
「は? 51歳の中学生? 親より年上じゃん」
一応、反応はあったが、どうでもいいようで流された。
「いらっしゃい」
妹の家では、すでにごちそうの準備がされていた。
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あとは、みんなが揃ったらステーキを焼くだけ。待っている間に、姉の夫から、インドネシアとアメリカのおみやげをもらった。
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「あと、これはみんなで飲もうと思ってね」
彼が取り出したのはコーヒーだった。
「これは数が少ないから、1杯5000円くらいするコーヒーだよ」
「5000円?」
真っ先に反応したのは、金銭感覚ばかりが発達している娘である。スマホを置き、しきりに「飲みたい飲みたい」と騒いでる。
「でも、作り方は聞かないほうがいいね」
ようやく、コーヒーの正体がわかった。これは、コピ・ルアク。ジャコウネコのフンからとれるコーヒーである。
「ほら、パッケージにも写っているでしょ」
たしかに、タヌキのような生き物が描かれている。これがジャコウネコなのか。
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「何でもいいよ~。あとで飲もう」
「じゃあ、ケーキのときにね」
ステーキが焼けた。宴会のスタートだ。可哀そうに、義兄はおみやげを置いたあと、別の用事があるからと帰って行った。彼がもらったのは匂いだけだった。
甥は受験生である。でも、なかなか勉強がはかどらないらしい。志望校はほぼ決まったので、あとは努力あるのみなのだが。
姪は真っ黒に日焼けしていた。夏休みは、軟式テニス部の活動で毎日のように登校していたとか。海やプールではなく、テニス焼けなのが虚しい。
「さすがに、受験生がいると、どこにも行かれなくてね」
もうすぐシルバーウィークなのに、受験生の兄を持つ姪は部活以外の予定がない。気の毒に思い、うちのお出かけに誘ってみた。
「うちは3人だから、もう1人いたほうが偶数になっていいのよ。日帰りだけどね」
「えー、本当? 行きたい!」
そんなこんなで、来週は姪を入れた4人家族で行動することになった。新鮮で楽しそうだ。
料理が進んだら、づけ丼が出てきた。これはイケる。
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テーブル上が片付いた頃、いよいよケーキタイムに突入する。
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「ハッピバースデー、トゥーユー、ハッピバースデー、トゥーユー」
合唱のあとは火を吹き消すのだが、今回はろうそくが2本だけなので楽そうだ。
「はい、さっきのコーヒー」
「おおっ!」
妹がコピ・ルアクをいれた。見た目は普通のコーヒーだが、飲んでビックリ。尖ったところがなくて、実にまろやかな味わいなのだ。酸味はほとんどないし、苦みと甘味のバランスもよく、これまで飲んだコーヒーの中でもかなり上である。
「美味しいね」
両親も姉も、べた褒めだった。ジャコウネコさん、ありがとう。
しかし、主役の2人はジュースを与えられている。まだ中学生だから、飲めなくても仕方ない。
31歳と51歳になったら、挑戦してみてね!
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「じゃあ、イチゴのデコレーションと、洋ナシのタルトを誕生日用でお願いします」
「はい、かしこまりました。お名前は何とお書きしますか」
「えーと……」
危ない、危ない、すべり込みセーフである。もうちょっと遅かったら、何も残っていなかったかもしれない。今日は運がよかった。
包装を待っていると、ろうそくが目に入った。不意に、これも買っていこうかしらと思いつく。甥が中3、姪が中1だから、15歳と13歳になるはずだ。
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「見て見て、今日はろうそくも買ってきた」
「へー」
娘が気のない返事で答えた。ラインでのやりとりに忙しくて、適当に聞いている。
「51歳と31歳だね!」
「は? 51歳の中学生? 親より年上じゃん」
一応、反応はあったが、どうでもいいようで流された。
「いらっしゃい」
妹の家では、すでにごちそうの準備がされていた。
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あとは、みんなが揃ったらステーキを焼くだけ。待っている間に、姉の夫から、インドネシアとアメリカのおみやげをもらった。
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「あと、これはみんなで飲もうと思ってね」
彼が取り出したのはコーヒーだった。
「これは数が少ないから、1杯5000円くらいするコーヒーだよ」
「5000円?」
真っ先に反応したのは、金銭感覚ばかりが発達している娘である。スマホを置き、しきりに「飲みたい飲みたい」と騒いでる。
「でも、作り方は聞かないほうがいいね」
ようやく、コーヒーの正体がわかった。これは、コピ・ルアク。ジャコウネコのフンからとれるコーヒーである。
「ほら、パッケージにも写っているでしょ」
たしかに、タヌキのような生き物が描かれている。これがジャコウネコなのか。
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「何でもいいよ~。あとで飲もう」
「じゃあ、ケーキのときにね」
ステーキが焼けた。宴会のスタートだ。可哀そうに、義兄はおみやげを置いたあと、別の用事があるからと帰って行った。彼がもらったのは匂いだけだった。
甥は受験生である。でも、なかなか勉強がはかどらないらしい。志望校はほぼ決まったので、あとは努力あるのみなのだが。
姪は真っ黒に日焼けしていた。夏休みは、軟式テニス部の活動で毎日のように登校していたとか。海やプールではなく、テニス焼けなのが虚しい。
「さすがに、受験生がいると、どこにも行かれなくてね」
もうすぐシルバーウィークなのに、受験生の兄を持つ姪は部活以外の予定がない。気の毒に思い、うちのお出かけに誘ってみた。
「うちは3人だから、もう1人いたほうが偶数になっていいのよ。日帰りだけどね」
「えー、本当? 行きたい!」
そんなこんなで、来週は姪を入れた4人家族で行動することになった。新鮮で楽しそうだ。
料理が進んだら、づけ丼が出てきた。これはイケる。
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テーブル上が片付いた頃、いよいよケーキタイムに突入する。
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「ハッピバースデー、トゥーユー、ハッピバースデー、トゥーユー」
合唱のあとは火を吹き消すのだが、今回はろうそくが2本だけなので楽そうだ。
「はい、さっきのコーヒー」
「おおっ!」
妹がコピ・ルアクをいれた。見た目は普通のコーヒーだが、飲んでビックリ。尖ったところがなくて、実にまろやかな味わいなのだ。酸味はほとんどないし、苦みと甘味のバランスもよく、これまで飲んだコーヒーの中でもかなり上である。
「美味しいね」
両親も姉も、べた褒めだった。ジャコウネコさん、ありがとう。
しかし、主役の2人はジュースを与えられている。まだ中学生だから、飲めなくても仕方ない。
31歳と51歳になったら、挑戦してみてね!
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