これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

ビールとぼた餅

2016年03月20日 20時55分25秒 | エッセイ
 義母が二週間前から入院している。
「尻もちついた拍子に、恥骨を骨折したらしいよ」
 夫や義弟たちが、入院に関わる作業はすべてやってくれた。病院ではすこぶる元気で、よく食べ寝ているそうだ。ただし、退院後は車椅子となるらしく、自宅のバリアフリー化を進めている。
 ふと、娘が尋ねてきた。
「おじいちゃんの仏壇に、お供えあげていないんじゃない? もうじきお彼岸なのに大丈夫?」
「あっ、そうだね」
 言われるまで、すっかり忘れていた。義父が亡くなって今年で20年を迎える。その間、義母が一人で仏壇のお供えをしていたのだ。入院中くらい、私たちがやらなければ。
「おじいちゃんって、何が好きだったの?」
「たしか、甘いもの……」
 義父は明治生まれの実直な人で、定年後は畑仕事に精を出し、スーパーに並ぶレベルの大根やほうれん草などを作っていた。海が好きだったのだが、普段はもっぱらプール。見事な泳ぎを披露し、周りの老人から「魚のようだ」と持ち上げられていたらしい。質素な生活を好み、贅沢はしなかった。
「そっか。さっき、北海道のおみやげに買ってきた、じゃがポックルをお供えしてきたんだけど、いらないかな?」
「いいんじゃない」
 仏様は、お供えされたものしか口にできないと聞いたことがある。じゃがポックルなら、「初めて食うが、結構イケるな」などと言ってもらえそうだ。
「そうだ、ぼた餅を作ろう」
 最近、娘は料理にハマっている。昼食にスパニッシュオムレツや、玉子スープ、煮豚などを作ったとき、どれも美味くできたものだから、趣味の一つになったようだ。
「もち米買ってくる」
 ちょうど、今日は春分の日である。炊いたもち米をつぶして俵型に成形し、デパートで調達したこしあんで包めば、ぼた餅のでき上がりだ。



 餅を餡で包むには、サランラップを使うため、そのまま包装すればいい。
「おじいちゃんはね、毎晩135mlの小さなビールを飲んでいたよ」
「ふーん。でも、ぼた餅だったらお茶じゃない?」
「お茶には、カフェインが入っているから眠れなくなると言って、お湯にしてた」
「じゃあ、いらないか」
 そんなこんなで、義父セットができあがった。



 孫娘の力作だ。きっと義父も喜んでくれるだろう。
 まずは私が試食する。温かい餅と、甘味を抑えた餡がうまく絡み合い、上出来だった。
「くうぅ~、美味しい!!」
 おじいちゃん。
 まずはビールからがいいと思います。ぼた餅はあとにしてください。
「なんじゃ、この組み合わせは!」と驚いちゃうかしら。


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コメント (6)
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