これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

能登紀行6 弁当忘れても……

2018年01月25日 20時35分50秒 | エッセイ
 能登半島で一番見たかったのが、白米千枚田(しろよねせんまいだ)である。


 (ホームページより)
 場所はこの辺り。



 ずいぶん、北上してきたのだと実感する。
 道中、何軒もの輪島の民家を見てきたが、どれもこれも似通っていたのが印象的だった。
「そうか、屋根が同じなんだ」



 どの家も真っ黒な瓦を使っているから、そっくりに見えるのだろう。タクシーの運転手が、こんな説明をしてくれた。
「輪島の瓦は、雪が融けやすい素材を使っています。さらに、輪島塗の釉薬を塗って滑りやすくして、雪が積もらない工夫をしているんですよ」
「それで黒いんですね」
「あと、ところどころに突起があるでしょ。あれで落雪を防いでいます。大ケガしますから」
「なるほど」
 その地域ならではの話が聞けて嬉しい。だが、まもなく、フロントガラスには大きな雨粒が落ちてきた。
「雨降ってきましたよ」
「えー、巌門ではよく晴れていたのに」
「能登の天気は変わりやすくて、雨が多いんです。よく、弁当忘れても傘忘れるなと言いますよ」
 運転手の言葉通り、それからはずっと雨だった。「もしや、千枚田に着くころにはやむのでは」と期待していたのに、世の中そんなに甘くない。傘は持っている。しかし、車から下りたら、風も強いことがわかった。
 扇風機を強にしたような海風が、「ビュビューッ」と音を立てて、ひ弱な東京モンの体を煽る。グラッときたところに雨粒が「バババババ」と顔を濡らす。なんてこったい。傘なんぞ、あってもなくても同じじゃないか。
 それでも、千枚田が見えたときは「あっ」と叫んでいた。



 季節が悪かったのだろう。田は、ホームページでは見られなかった枯れ色に変わっていて、ちょっと残念だ。それで、この時期にはライトアップをするのかもしれない。「あぜのきらめき」というフレーズで、美しいと好評だが、新幹線は16時台。かすりもしませんなぁ……。
棚田1枚あたりの面積は約18平米で、ビジネスホテルのシングルルーム以下である。この小さな水田が1004枚あるそうだ。日本海をバックに、幾重にも繰り返されるあぜの輪郭の見事なことといったら!
 気分が一気に、5階まで駆け上がっていった。日本で初めて世界農業遺産に認定された理由もわかる。稲を育てる苦労ややりがい、収穫の喜びなどが、この棚田に凝縮されているかのようだ。風や雨に邪魔されてながら、何枚も写真を撮った。







 千枚田では、平成30年度のオーナー会員を募集しているそうだ。年会費は、マイ田んぼ1枚を含めて2万円。稲作体験を通じて、地元農家の方との交流もあるし、作業に参加できなくても管理団体が田んぼの耕作はしてくれる。特典は収穫米10kgに地元特産品等。加えて、マイ田んぼにはオーナー名の氷柱を建立するのだとか。
 うーん、「笹木砂希」という名の田んぼも悪くないな……。
 ちなみに、特別名誉会員は、安倍昭恵氏、小泉純一郎氏、小泉進次郎氏、さいとう・たかを氏、ちばてつや氏、永井豪氏など10名である。現金なワタシは、にわかに親近感をおぼえてしまった。
 千枚田での収穫米でご飯を炊いたら、魚沼産のコシヒカリよりずっと美味しく感じることだろう。
「弁当忘れても傘忘れるな」ではなく、「傘忘れても弁当忘れるな」となるに違いない。


    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする