わが家の水道は、レバーを上に持ち上げると水が出るタイプの蛇口を使っている。
2週間ほど前に、夫が洗い物をしてすすぎをしようと、泡のついた左手でレバーを上に弾いたときだ。
ゴロッ。
何と、レバーが外れてしまった。
「うわうわうわ、水が止まらない!」
ストッパーのない水道は、あとからあとから水があふれてきたが、どうにかこうにか栓を動かして止めることができた。
……それにしても、汚い蛇口だな。
もう20年以上使っているから、内部の部品が劣化して、壊れてしまったらしい。見た目と同じように、内側も消耗していたわけだ。すぐさま、夫が工務店に電話をかけ、修理を依頼した。
「新しい蛇口が来るのは週末だって。不便だけど、それまで台所の水道は使えないよ」
「わかった」
寿命といえばそうなのだろうが、夫が乱暴に扱うのも一因であろう。「ガンッ」「ゴンッ」という音を立ててレバーを上下させている現場を何度も見た。だが、本人は決して「壊した」とは言わない。あくまでも「壊れた」と言い張るところがヤツらしい。
食事がすむと、食器は洗面所に運んでいく。中性洗剤とスポンジ、水切り台も移動させ、歯みがきより先に洗い物をすませる。大学4年の娘が首を傾げて眺めていた。
「なんか変」
「しょうがないでしょ」
茶葉の入った急須などは、鍋に水をくんできて、三角コーナーで処理しなければならない。断水の不便さを思い出した。まな板も簡単に洗えないので、皿の上で食材を切ったりして、汚さないように努める。
考えてみれば、将来起こり得るであろう、災害時の訓練といえないこともない。水は、いつでも自由に使えるとは限らないのだ。
不自由なキッチンに慣れぬまま、週末がやってきて、ピカピカの新しい蛇口に替わる。
「おお~!」
レバーを上げると、以前のように水が流れ出した。
「ありがたや、ありがたや」
使いたいときに、水が出てくる喜びを忘れてはならないだろう。
「いつまでも あると思うな 親と水」なのである。
いや、「水と金」かな?
そのとき、脳裏に酸素チューブをつけた父の姿が浮かんできた。
ううん、やっぱり「親と水」!
↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
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ゴロッ。
何と、レバーが外れてしまった。
「うわうわうわ、水が止まらない!」
ストッパーのない水道は、あとからあとから水があふれてきたが、どうにかこうにか栓を動かして止めることができた。
……それにしても、汚い蛇口だな。
もう20年以上使っているから、内部の部品が劣化して、壊れてしまったらしい。見た目と同じように、内側も消耗していたわけだ。すぐさま、夫が工務店に電話をかけ、修理を依頼した。
「新しい蛇口が来るのは週末だって。不便だけど、それまで台所の水道は使えないよ」
「わかった」
寿命といえばそうなのだろうが、夫が乱暴に扱うのも一因であろう。「ガンッ」「ゴンッ」という音を立ててレバーを上下させている現場を何度も見た。だが、本人は決して「壊した」とは言わない。あくまでも「壊れた」と言い張るところがヤツらしい。
食事がすむと、食器は洗面所に運んでいく。中性洗剤とスポンジ、水切り台も移動させ、歯みがきより先に洗い物をすませる。大学4年の娘が首を傾げて眺めていた。
「なんか変」
「しょうがないでしょ」
茶葉の入った急須などは、鍋に水をくんできて、三角コーナーで処理しなければならない。断水の不便さを思い出した。まな板も簡単に洗えないので、皿の上で食材を切ったりして、汚さないように努める。
考えてみれば、将来起こり得るであろう、災害時の訓練といえないこともない。水は、いつでも自由に使えるとは限らないのだ。
不自由なキッチンに慣れぬまま、週末がやってきて、ピカピカの新しい蛇口に替わる。
「おお~!」
レバーを上げると、以前のように水が流れ出した。
「ありがたや、ありがたや」
使いたいときに、水が出てくる喜びを忘れてはならないだろう。
「いつまでも あると思うな 親と水」なのである。
いや、「水と金」かな?
そのとき、脳裏に酸素チューブをつけた父の姿が浮かんできた。
ううん、やっぱり「親と水」!
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