球技で一番好きなものは、バスケットボールだ。得点がバカスカ入るからスピード感があるし、3ポイントシュート、ダンクシュートなどの場面に魅せられる。
だが、どういうわけか、私はサッカー部の顧問になっていた。
「サッカーは、なかなか点が入らないから飽きちゃうんだよね。で、ちょっとトイレに行っているうちにゴールしてたりして、相性が悪いんだけど」
それなのに、夏合宿の引率まですることになった。
「笹木先生、すみません。他にも顧問はいるんですが、みなさん都合が悪いそうで。指導は僕がしますから、ついてきていだだけるだけで大丈夫です」
主顧問は20代の男性である。体育科で専門はサッカー。高校時代は地方の強豪校に所属していて、全国大会まで出場した経験がある。ならいいや~と安心してついていった。
そんなわけで、7月末から3泊4日で菅平高原に行ってきた。
ここはサッカーよりも、「ラグビー合宿のメッカ」として有名な場所らしい。涼しいから、トレーニング全般に向いているらしく、陸上や剣道などの選手も町中を走っていた。
「じゃあ、こちらに座って、見ていいただければ」
グランドには、屋根のついたベンチがある。私はそこの一角を与えられ、日陰でのんびりと練習風景を眺めていた。練習中の飲み物などはマネージャーの仕事だし、私のやることはそれしかない。
飛行機雲がキレイ~。
グランドには古びた仮設トイレが1つあるだけだ。「まだ使えるのかしら」と不安になるくらい錆びていて、入るには勇気がいる。生徒は誰一人として使わなかった。公衆トイレが充実すればよいのだが。
練習を見ているうちに、サッカーという競技が少しずつ理解できるようになった。足が速いと有利だが、ヒョロヒョロしている選手は相手に競り負けてしまうから、ある程度の体重がないといけない。一人でするスポーツではないので、常に声を出して、自分やチームメイトの役割を確認する必要がある。ボールに対しては貪欲になり、1年生でも「絶対負けない」という気持ちを持つことが大事などだ。
どこにパスを出せば得点につながるか、の判断はさらに大切である。主顧問は日没後にミーティングを行い、高校サッカーの見事なプレーを集めた映像から生徒に考えさせた。映像は、バスケットボールのパス回しに似ている気がした。誰もいない場所にパスを出し、いち早く飛び出した選手がマークを外してボールをキープする。相手が追いつかれても、あわてず味方につないでいく。
バスケットボールのゴールは小さい。サッカーゴールは大きいが、そこにはキーパーがいて、ボールを弾き返して得点を阻止するところが新鮮だ。わが校の3年のキーパーは要潤似の二枚目で、往年の川口能活元選手なみの好セーブを連発する。成績も性格もいいから、部員や主顧問からの信頼も厚い。何が何でもボールに食らいつき、ゴールさせまいとする気迫には脱帽する。彼のおかげで、簡単に点が入らないからこそ、サッカーは面白いのかもしれないと思うようになった。
時計は午後5時を回っている。主顧問のホイッスルが鳴った。
「じゃあ、片づけ始め。ボールを数えて全部あるか確認しろ」
「うっす」
部員は全部で30人弱だ。役割をきちっと分担して、撤収作業に入った。
2年の選手が話しかけてきた。
「先生、見てるだけじゃ、つまんなくなかったですか」
「いやあ、そんなことないよ。サッカーのことがわかって楽しかった」
「ならよかったです」
彼は安心したように笑って、ボールを探しに行った。
それにしても、菅平の日差しは強い。長袖を着ていたから、手首から下が黒くなり、指輪の跡がくっきりついた。
合宿所に帰ると間もなく夕食だ。
「ご飯は茶碗3杯だからな。おかわりしたら見せにこい」
主顧問の指示通り、選手たちは大量の白飯を食べていた。ある程度のウエイトを維持するには、食事をコントロールするしかない。この雰囲気では、糖質制限大好きな私も、ご飯を減らすわけにいかず、つられて食べきった。
ちなみに、朝食はこんな感じ。
やはり、ご飯が多い……。だが、食べるしかない。
練習では座っているだけだから、結果として体重が1.5kg増えた。
「うえ~ん」
でもでも、サッカーが好きになったかも。
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
だが、どういうわけか、私はサッカー部の顧問になっていた。
「サッカーは、なかなか点が入らないから飽きちゃうんだよね。で、ちょっとトイレに行っているうちにゴールしてたりして、相性が悪いんだけど」
それなのに、夏合宿の引率まですることになった。
「笹木先生、すみません。他にも顧問はいるんですが、みなさん都合が悪いそうで。指導は僕がしますから、ついてきていだだけるだけで大丈夫です」
主顧問は20代の男性である。体育科で専門はサッカー。高校時代は地方の強豪校に所属していて、全国大会まで出場した経験がある。ならいいや~と安心してついていった。
そんなわけで、7月末から3泊4日で菅平高原に行ってきた。
ここはサッカーよりも、「ラグビー合宿のメッカ」として有名な場所らしい。涼しいから、トレーニング全般に向いているらしく、陸上や剣道などの選手も町中を走っていた。
「じゃあ、こちらに座って、見ていいただければ」
グランドには、屋根のついたベンチがある。私はそこの一角を与えられ、日陰でのんびりと練習風景を眺めていた。練習中の飲み物などはマネージャーの仕事だし、私のやることはそれしかない。
飛行機雲がキレイ~。
グランドには古びた仮設トイレが1つあるだけだ。「まだ使えるのかしら」と不安になるくらい錆びていて、入るには勇気がいる。生徒は誰一人として使わなかった。公衆トイレが充実すればよいのだが。
練習を見ているうちに、サッカーという競技が少しずつ理解できるようになった。足が速いと有利だが、ヒョロヒョロしている選手は相手に競り負けてしまうから、ある程度の体重がないといけない。一人でするスポーツではないので、常に声を出して、自分やチームメイトの役割を確認する必要がある。ボールに対しては貪欲になり、1年生でも「絶対負けない」という気持ちを持つことが大事などだ。
どこにパスを出せば得点につながるか、の判断はさらに大切である。主顧問は日没後にミーティングを行い、高校サッカーの見事なプレーを集めた映像から生徒に考えさせた。映像は、バスケットボールのパス回しに似ている気がした。誰もいない場所にパスを出し、いち早く飛び出した選手がマークを外してボールをキープする。相手が追いつかれても、あわてず味方につないでいく。
バスケットボールのゴールは小さい。サッカーゴールは大きいが、そこにはキーパーがいて、ボールを弾き返して得点を阻止するところが新鮮だ。わが校の3年のキーパーは要潤似の二枚目で、往年の川口能活元選手なみの好セーブを連発する。成績も性格もいいから、部員や主顧問からの信頼も厚い。何が何でもボールに食らいつき、ゴールさせまいとする気迫には脱帽する。彼のおかげで、簡単に点が入らないからこそ、サッカーは面白いのかもしれないと思うようになった。
時計は午後5時を回っている。主顧問のホイッスルが鳴った。
「じゃあ、片づけ始め。ボールを数えて全部あるか確認しろ」
「うっす」
部員は全部で30人弱だ。役割をきちっと分担して、撤収作業に入った。
2年の選手が話しかけてきた。
「先生、見てるだけじゃ、つまんなくなかったですか」
「いやあ、そんなことないよ。サッカーのことがわかって楽しかった」
「ならよかったです」
彼は安心したように笑って、ボールを探しに行った。
それにしても、菅平の日差しは強い。長袖を着ていたから、手首から下が黒くなり、指輪の跡がくっきりついた。
合宿所に帰ると間もなく夕食だ。
「ご飯は茶碗3杯だからな。おかわりしたら見せにこい」
主顧問の指示通り、選手たちは大量の白飯を食べていた。ある程度のウエイトを維持するには、食事をコントロールするしかない。この雰囲気では、糖質制限大好きな私も、ご飯を減らすわけにいかず、つられて食べきった。
ちなみに、朝食はこんな感じ。
やはり、ご飯が多い……。だが、食べるしかない。
練習では座っているだけだから、結果として体重が1.5kg増えた。
「うえ~ん」
でもでも、サッカーが好きになったかも。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)