車を買い替えることになった。夫が声を弾ませ、この先の予定を口にする。
「今度の車はホンダのフリード。明日が納車になったよ」
「明日? ひな祭りパーティーの日じゃない」
「うん。でも、みんなが来るのは夜でしょ。車はその前だから」
「ふーん」
てなわけで、来客用の飲み物などを買いに行ったら、すでにフリードが車庫に居座っていた。

「車を見たわよ」
「なかなかいいでしょ。これがキー」
「へー」
「保管するときは、盗難防止のため、電磁波を通さない缶に入れてくださいって言われた」
「缶に?」
「そう。何かあるかな」
ゴソゴソ探し始めたと思いきや、間もなく「キーがない」と騒ぎ始めた。
「さっきあったのにね」
「うん。この家のどこかにあるはず」
そういえば、この男、携帯電話の機種変更をした直後にも、どこかになくしたことがある。落とし物として交番に届けられていたから戻ってきたのだが、ものをなくす習性は何とかしてほしい。
それとも、携帯やキーが嫌がって逃げ出したのだろうか……。
「ないよ~、ないよ~」
「とにかく探しなさい」
「うええええん」
そのとき、玄関から「ピンポーン」と音がした。ケータリングだ。今年は楽をするため、全部配達に頼ることにした。
「お待たせしました。ちょっと量が多いのですが、こちらに置かせていただきます」
「ひえええ」

何と、こんなに大量とは!
我が家は二世帯住宅だから、全部を2階に持っていかねばならない。
「ないよ~、ないよ~」
……まだ見つからないらしい。仕方ない、私一人で運ぶか。
「くうう、重いっ」
7往復ぐらいで全部のケースを運び込む。なかなかの重労働であった。
「ないよ~、ないよ~」
夫はいないものと割り切って、さっさと配膳を進めよう。この役立たずめ。
「あった!」
ほう。
しかし、見つかった場所がヘボすぎだ。
「そういえば、さっき、輪ゴムの缶に入れたのを忘れてたよ、はっはっは。失礼失礼」
見ると、キーホルダーのついたカギが、輪ゴムの池で溺れているではないか。まったく呆れた。
「じゃあ、お手伝い、お手伝い」
「はいはい」
準備をしていたら、徐々に親族が集まってくる。姉の持ってきたシャンパーニュで乾杯し、まずはお膳から。

「刺身が美味しい」
「金箔がついてるよ」
評判も上々だ。特に、私は料理の移動でカロリーを消費したから美味しく感じた。
すっかり恒例となったすき焼きも楽しみだ。

「あ、写真撮るの忘れちゃった」
義弟がガッカリしている。すき焼きは、生肉で撮るとキレイだ。もはや手遅れかな。
ケーキは妹が持ってきてくれた。

あとから知ったことだが、酔っぱらった姉が指を突っ込んだらしい……。

「はっはっは」
「いやねぇ」
階段7往復後の体に、糖質が染みていく。ああ、幸せだ。
「じゃあ、そろそろ帰るよ」
「ごちそうさま。またね」
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。次回も、みんな元気で会えるといいのだが。
「空き缶あった」
みんなが帰ったあと、夫がクッキーの入っていた四角い缶を持ってきた。これなら、キーも居心地がよさそうだ。
さて、フリード君、しっかり走ってくれたまへ。

↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「今度の車はホンダのフリード。明日が納車になったよ」
「明日? ひな祭りパーティーの日じゃない」
「うん。でも、みんなが来るのは夜でしょ。車はその前だから」
「ふーん」
てなわけで、来客用の飲み物などを買いに行ったら、すでにフリードが車庫に居座っていた。

「車を見たわよ」
「なかなかいいでしょ。これがキー」
「へー」
「保管するときは、盗難防止のため、電磁波を通さない缶に入れてくださいって言われた」
「缶に?」
「そう。何かあるかな」
ゴソゴソ探し始めたと思いきや、間もなく「キーがない」と騒ぎ始めた。
「さっきあったのにね」
「うん。この家のどこかにあるはず」
そういえば、この男、携帯電話の機種変更をした直後にも、どこかになくしたことがある。落とし物として交番に届けられていたから戻ってきたのだが、ものをなくす習性は何とかしてほしい。
それとも、携帯やキーが嫌がって逃げ出したのだろうか……。
「ないよ~、ないよ~」
「とにかく探しなさい」
「うええええん」
そのとき、玄関から「ピンポーン」と音がした。ケータリングだ。今年は楽をするため、全部配達に頼ることにした。
「お待たせしました。ちょっと量が多いのですが、こちらに置かせていただきます」
「ひえええ」

何と、こんなに大量とは!
我が家は二世帯住宅だから、全部を2階に持っていかねばならない。
「ないよ~、ないよ~」
……まだ見つからないらしい。仕方ない、私一人で運ぶか。
「くうう、重いっ」
7往復ぐらいで全部のケースを運び込む。なかなかの重労働であった。
「ないよ~、ないよ~」
夫はいないものと割り切って、さっさと配膳を進めよう。この役立たずめ。
「あった!」
ほう。
しかし、見つかった場所がヘボすぎだ。
「そういえば、さっき、輪ゴムの缶に入れたのを忘れてたよ、はっはっは。失礼失礼」
見ると、キーホルダーのついたカギが、輪ゴムの池で溺れているではないか。まったく呆れた。
「じゃあ、お手伝い、お手伝い」
「はいはい」
準備をしていたら、徐々に親族が集まってくる。姉の持ってきたシャンパーニュで乾杯し、まずはお膳から。

「刺身が美味しい」
「金箔がついてるよ」
評判も上々だ。特に、私は料理の移動でカロリーを消費したから美味しく感じた。
すっかり恒例となったすき焼きも楽しみだ。

「あ、写真撮るの忘れちゃった」
義弟がガッカリしている。すき焼きは、生肉で撮るとキレイだ。もはや手遅れかな。
ケーキは妹が持ってきてくれた。

あとから知ったことだが、酔っぱらった姉が指を突っ込んだらしい……。

「はっはっは」
「いやねぇ」
階段7往復後の体に、糖質が染みていく。ああ、幸せだ。
「じゃあ、そろそろ帰るよ」
「ごちそうさま。またね」
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。次回も、みんな元気で会えるといいのだが。
「空き缶あった」
みんなが帰ったあと、夫がクッキーの入っていた四角い缶を持ってきた。これなら、キーも居心地がよさそうだ。
さて、フリード君、しっかり走ってくれたまへ。

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