姉から「3姉妹で忘年会をやろう」と誘われたのは先月のことだ。今までクリスマス会や新年会は、家族単位で参加してきたから、姉と妹と3人でというのも悪くない。楽しそうではないか。
「ビーフシチューとバゲットは任せて。あとはサラダにフォアグラのパテ、キャビア、クラッカーを用意するわ」
姉のメールに違和感をおぼえた。あれ、料理が得意だったっけ?
どうやら、姉がコンビニ食に頼っていたのは昔のことで、今はせっせと自炊しているらしい。やはり、健康は手作りの食事から。では、妹と分担して、残りのメニューを考えねば。
「アタシはスイーツ担当がいいわ~」
先手必勝、早い者勝ちよといわんばかりに、妹からのメールが届く。「できれば料理はしたくない」という思いがひしひしと伝わってきた。まあよい、私が作って進ぜよう。
ピンポーン。
「はい、どうぞ」
姉のマンションに来るのは何年ぶりだろう。入居して16年となり、ソファーやテーブルを買い替えたばかりというから、部屋はホテルのように整っていた。
しかし、奇妙なものもある。

「なに、この、ホネホネ」
「ああ、それはね、デッサンに使うの。絵のためよ」
「なーんだ、趣味なのかと思ったわ」
「まさか、アハハ」
すでに妹は到着していて、料理もテーブルに並んでいる。あとは、私の料理を加えるだけだ。
この日、私が用意したものは、ロールキャベツにキッシュ、カボチャのグラタンである。食器は姉のものを借りて、ワンプレートに盛りつけよう。
「この皿がいいかな」
「あら、素敵じゃない」

スパークリングワインを開けて、忘年会が始まった。

「これはアボカド?」

「そうよ。むきエビと混ぜてしそドレッシングをかければでき上がり」
「簡単だし、美味しい」
「カプレーゼも作れるんだね」

「切って載せたのよ。もうちょっと塩をかけた方がよかったかな」
「いや、大丈夫よ」
オリーブもあった。箸を伸ばしたところで、器に気がつく。

「あ、これ、ミントンでしょ」
「そうよ」
「可愛いよね、この柄」
「うん、好きなんだ」
ちなみに、シャンパングラスはロイヤルコペンハーゲンなのだとか。

だから、青が入っているわけか。これもオシャレ。
キャビアもあった。うちでは旅行のみやげでしか買わない。

「クラッカーに載せて、レモンをかけて食べてね」
「へえ~、そういう食べ方もあるんだ」
ロシア風の、サーモンとサワークリームの上に載せて食べる方式しか、私は知らない。これなら、コレステロール値が上がるリスクは小さくなりそうだ。
食べながら、家族や仕事の話をする。年老いた両親の心配事や、仕事のトラブル、子どもの近況、習い事など話題は尽きない。
「そろそろ、シチューを持ってこようか」
「わあい♪」

冬場のシチューは格別な味がする。体が温まると幸福感も高まるから、寒さと戦うのはほどほどにした方がよさそうだ。
そのあと、妹の持ってきてくれたデザートとなったわけだが……。

私の記憶はここで途切れている。次に気づいたときは、買い替えたばかりのソファーの上だった。
「あ、起きたわね」
「……寝てたのか、アタシ」
お腹いっぱいになって酔いも回り、テーブルでウトウトし始めたらしい。姉がソファーで休むことを勧め、布団まで掛けてくれた。一時間以上、ムニャムニャと夢を見ていたそうだ。
「うわっ、もう8時!」
忘年会開始が13時。翌日は仕事だから、もっと早く帰るつもりでいたのに、何たるざまか。
姉にごちそうさまを言って、足早に地下鉄に向かった。
来年は眠気覚ましに、激辛料理を作ろうと決めた。

↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「ビーフシチューとバゲットは任せて。あとはサラダにフォアグラのパテ、キャビア、クラッカーを用意するわ」
姉のメールに違和感をおぼえた。あれ、料理が得意だったっけ?
どうやら、姉がコンビニ食に頼っていたのは昔のことで、今はせっせと自炊しているらしい。やはり、健康は手作りの食事から。では、妹と分担して、残りのメニューを考えねば。
「アタシはスイーツ担当がいいわ~」
先手必勝、早い者勝ちよといわんばかりに、妹からのメールが届く。「できれば料理はしたくない」という思いがひしひしと伝わってきた。まあよい、私が作って進ぜよう。
ピンポーン。
「はい、どうぞ」
姉のマンションに来るのは何年ぶりだろう。入居して16年となり、ソファーやテーブルを買い替えたばかりというから、部屋はホテルのように整っていた。
しかし、奇妙なものもある。

「なに、この、ホネホネ」
「ああ、それはね、デッサンに使うの。絵のためよ」
「なーんだ、趣味なのかと思ったわ」
「まさか、アハハ」
すでに妹は到着していて、料理もテーブルに並んでいる。あとは、私の料理を加えるだけだ。
この日、私が用意したものは、ロールキャベツにキッシュ、カボチャのグラタンである。食器は姉のものを借りて、ワンプレートに盛りつけよう。
「この皿がいいかな」
「あら、素敵じゃない」

スパークリングワインを開けて、忘年会が始まった。

「これはアボカド?」

「そうよ。むきエビと混ぜてしそドレッシングをかければでき上がり」
「簡単だし、美味しい」
「カプレーゼも作れるんだね」

「切って載せたのよ。もうちょっと塩をかけた方がよかったかな」
「いや、大丈夫よ」
オリーブもあった。箸を伸ばしたところで、器に気がつく。

「あ、これ、ミントンでしょ」
「そうよ」
「可愛いよね、この柄」
「うん、好きなんだ」
ちなみに、シャンパングラスはロイヤルコペンハーゲンなのだとか。

だから、青が入っているわけか。これもオシャレ。
キャビアもあった。うちでは旅行のみやげでしか買わない。

「クラッカーに載せて、レモンをかけて食べてね」
「へえ~、そういう食べ方もあるんだ」
ロシア風の、サーモンとサワークリームの上に載せて食べる方式しか、私は知らない。これなら、コレステロール値が上がるリスクは小さくなりそうだ。
食べながら、家族や仕事の話をする。年老いた両親の心配事や、仕事のトラブル、子どもの近況、習い事など話題は尽きない。
「そろそろ、シチューを持ってこようか」
「わあい♪」

冬場のシチューは格別な味がする。体が温まると幸福感も高まるから、寒さと戦うのはほどほどにした方がよさそうだ。
そのあと、妹の持ってきてくれたデザートとなったわけだが……。

私の記憶はここで途切れている。次に気づいたときは、買い替えたばかりのソファーの上だった。
「あ、起きたわね」
「……寝てたのか、アタシ」
お腹いっぱいになって酔いも回り、テーブルでウトウトし始めたらしい。姉がソファーで休むことを勧め、布団まで掛けてくれた。一時間以上、ムニャムニャと夢を見ていたそうだ。
「うわっ、もう8時!」
忘年会開始が13時。翌日は仕事だから、もっと早く帰るつもりでいたのに、何たるざまか。
姉にごちそうさまを言って、足早に地下鉄に向かった。
来年は眠気覚ましに、激辛料理を作ろうと決めた。

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