これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

この暑さ、災害級

2023年07月16日 23時06分25秒 | エッセイ
 その日は娘も仕事が休みだったため、一緒に有楽町に行き、昼食をとって帰ってきた。外はとても暑い。災害級と報じられていたが、私は駅前のスーパーで夕食の食材を買わねばならない。
「ミキ、一緒に買い物する?」
「うーん、疲れちゃった。何か調子悪いな。お父さんに迎えに来てもらうから、悪いけどお母さんは一人で帰って」
「いいよ。じゃあ気をつけて」
 クソッと思ったが顔には出さず、食材を抱えて自宅に向かう。こっそり、スパークリングワインも買ってしまった、わっはっは。日傘を差しているのに、腕にも顔にも、アスファルトからの照り返しが熱風となってまとわりつき、オーブンに入れられたみたい……。歩いているうちはまだよいが、信号で止まると、首からも額からも汗がジワジワとしみ出し、水滴となって流れ落ちる。ああ不快だ……。
「ただいま」
「おかえり」
 先に帰った娘が涼しい部屋で横になっていた。
「お腹の調子も悪いから、ちょっと寝るわ」
「おやすみ」
 しばらくすると、インターホンが鳴り、宅配便が届いた。そうそう、14時から16時の時間指定でパジャマを頼んだのだっけ。時計を見ると15時だ。荷物を受け取ったらコーヒーをいれ、おやつにしよう。
「ミキ、コーヒーいれるけど起きる?」
「そんな元気ないからいいや」
 なかなか復活しないようだ。夕飯も少ししか食べられず、食後はお腹が冷えるからとクーラーを消して、座布団の上で休んでいた。
「ミキ、お風呂あいたよ」
「じゃあ、入ろうかな」
 そのとき、ようやく「ただ事でない」と気がついた。立ち上がろうとした娘が、クラクラして倒れ込み、すぐに起き上がれなかったのだ。
「ああ目まいがする。貧血かなぁ、気持ち悪くなってきた」
 私はすぐにピンときた。
「違うよ、たぶん熱中症」
「ええっ」
 今は便利な世の中なので、スマホで熱中症の症状や対処法が調べられる。
「貧血じゃないのか。わきの下を冷やすといいって書いてあるけど保冷剤ある?」
「あるある」
「うわあ、すごく気持ちいい」
「やっぱりね」
 買い置きのポカリスエットを飲ませ、氷枕も準備した。



「お風呂はいいや」
「そりゃ無理だ」
 冷やして飲んで、本格的に眠ったら、翌日には回復していた。ああよかった。
 朝食をとりながら、2人で熱中症になった原因を探ってみる。
「エアコン消してたからじゃない」
「お腹が冷えると思ったんだよ。失敗した」
 一つ目の理由はこれだろう。
「食事を抜くと危険って書いてあったよ」
「お昼はスタバのサンドイッチだけだったもんね。コーヒーしか飲んでないし」
 二つ目もわかった。
「車で帰ったのに、何で具合悪くなったんだろう」
「違うよ、お父さんは迎えに来てくれなかった」
「え? ミキも歩いて帰ったの?」
「そう。お母さんの荷物が届くから行かれないって言われた」
「あ、あれか~!」
 三つ目は私が作った理由だったらしい。言われるまで全然気づかなかった。
 すぐに治ったからよかったけれど、重症化していたら、一生言われるところだった。危ない危ない。
 すっかり元気を取り戻した娘は、体調管理のコツをつかみ、暑い中でも出かけていく。毎日、大きめの南高梅を食べると調子が上がるらしい。
「今日は池袋で熱中症になったおばあさんを助けてきたよ。氷を買って冷やしてあげた」
「偉いじゃない」
「学習したからね」
 今日も暑かったので、熱中症の救急搬送が多かったことだろう。
 助けてもらった人は、別の人を救ってあげれば、救急隊員の負担が軽くなるのではないかしら……。

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コメント (4)
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