貴重な平日休みを利用して、神奈川県伊勢原市の大山に行ってきた。土日は混雑するので月曜を選んでみた。
2月にも登った山だが、今回は紅葉目当てである。
しかし、見渡す限り緑一色で、赤や黄色に色づいた葉が見当たらない。
「うーん、まだ早かったか」
今回は、ケーブルカーに頼らず歩いて登ることにしたが、翌日は仕事なので山頂まで行かず、富士見台で富士山を拝んだら下山する予定だ。
「女坂は左よ。こっちこっち」
方向音痴の私に代わって、親友の幸枝がナビゲーターをしてくれる。ついていくだけなら楽チン、楽チン。
しかし、登りは苦しいなぁ……。
私の心肺機能はお粗末なので、ゆっくり登ることにした。女坂の途中には大山神社があり、お詣りをして阿夫利神社を目指す。低く垂れこめていた雲も晴れてきて、江の島が見えた。雨女としてはちょっとウレシイ。
「はあはあ、ひいひい、ふうふう」
無心で斜面を上がっていく。思った通り、すぐに汗が噴き出してきた。タオルでふきふき、1時間ほど登っただろうか。ようやく阿夫利神社の近くまで来た。
「やったぁ! あとちょっと」
石段を登ると鳥居と下社が見えてくる。
左に大山獅子が鎮座していた。
お詣りを済ませて下界を眺めると、赤く色づいた葉が見えた。
「ああっ、紅葉してる! やった!」
「唯一なんじゃない」
ゼロよりはいいけれど、今月末あたりが見頃とも聞く。休みと合わないところが憎い。
わずかな紅葉を楽しんだ隣には、男性の像が立っていた。
「スキー板?」
いやいや、スキーではなく木太刀と書いてある。大山詣りは日本遺産であり、江戸庶民の信仰や行楽の地として親しまれてきたとの説明に「うんうん」と頷いた。
さて、ここからさらに富士見台まで上がらなければならない。少し休んだら出発だ。コンビニで買ったおにぎりを頬張り、元気をチャージしたところで、もうひと頑張りしなくては。
目的地の少し手前に、夫婦杉という大きな木があった。
見ているだけで、エネルギーをもらえるような印象がある。山のパワーはすごい。
「着いたー!」
ここからは富士山がキレイに見える。
雪化粧をしているが、これからもっと白くなるのだろう。
居合わせた方が、山頂にもよいスポットがあると話していたけれど、私たちはここで引き返すことに決めている。山頂から見る富士山はまた今度。
「帰りは男坂から行ってみない?」
幸枝の提案に「いいよ!」と答え、別のルートで下山する。
こちらは予想と違って、石段ばかりの道だった。
しかも急勾配ときている。女坂より所要時間が5分短いことに納得した。
半分ほど下りてきたところで、年配の男性とすれ違う。急な石段を登ってきた彼は、私たちを見つけてすがるように話しかけてきた。
「いやあ、キツい、キツいよ~! まだまだ?」
「はい。あとしばらく続きますよ」
「うわあ、もっとかぁ~」
ナビゲーターの幸枝が、慰めるように問いかけた。
「女坂だったら、途中に大山寺があるんですけどね。男坂には何かありますか」
「ないよ、何もない」
「あははは」
話し相手がいたことに気をよくしたのか、男性はさらに続けた。
「男は男坂を歩くもんだと思って、こっちに来ちゃったんだ」
「えー、まさか」
「女坂に行くには手形がいるんじゃないの、はっはっは」
LGBTQの時代にどこまで本
気かわからないが、陽気なオジさんだった。あの調子で山頂まで行くのかもしれない。
「着いた~」
無事、バス停にたどり着き、伊勢原駅から家を目指す。
スマホを見たら、万歩計は22,000歩を超えていた。結構な運動量だった。
その夜はぐっすり眠り、翌日は筋肉痛に悩まされながら元気に働いた。
山のパワーは偉大である。さすがは日本遺産。
チャンスがあれば、来月あたり、また登りたい。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
2月にも登った山だが、今回は紅葉目当てである。
しかし、見渡す限り緑一色で、赤や黄色に色づいた葉が見当たらない。
「うーん、まだ早かったか」
今回は、ケーブルカーに頼らず歩いて登ることにしたが、翌日は仕事なので山頂まで行かず、富士見台で富士山を拝んだら下山する予定だ。
「女坂は左よ。こっちこっち」
方向音痴の私に代わって、親友の幸枝がナビゲーターをしてくれる。ついていくだけなら楽チン、楽チン。
しかし、登りは苦しいなぁ……。
私の心肺機能はお粗末なので、ゆっくり登ることにした。女坂の途中には大山神社があり、お詣りをして阿夫利神社を目指す。低く垂れこめていた雲も晴れてきて、江の島が見えた。雨女としてはちょっとウレシイ。
「はあはあ、ひいひい、ふうふう」
無心で斜面を上がっていく。思った通り、すぐに汗が噴き出してきた。タオルでふきふき、1時間ほど登っただろうか。ようやく阿夫利神社の近くまで来た。
「やったぁ! あとちょっと」
石段を登ると鳥居と下社が見えてくる。
左に大山獅子が鎮座していた。
お詣りを済ませて下界を眺めると、赤く色づいた葉が見えた。
「ああっ、紅葉してる! やった!」
「唯一なんじゃない」
ゼロよりはいいけれど、今月末あたりが見頃とも聞く。休みと合わないところが憎い。
わずかな紅葉を楽しんだ隣には、男性の像が立っていた。
「スキー板?」
いやいや、スキーではなく木太刀と書いてある。大山詣りは日本遺産であり、江戸庶民の信仰や行楽の地として親しまれてきたとの説明に「うんうん」と頷いた。
さて、ここからさらに富士見台まで上がらなければならない。少し休んだら出発だ。コンビニで買ったおにぎりを頬張り、元気をチャージしたところで、もうひと頑張りしなくては。
目的地の少し手前に、夫婦杉という大きな木があった。
見ているだけで、エネルギーをもらえるような印象がある。山のパワーはすごい。
「着いたー!」
ここからは富士山がキレイに見える。
雪化粧をしているが、これからもっと白くなるのだろう。
居合わせた方が、山頂にもよいスポットがあると話していたけれど、私たちはここで引き返すことに決めている。山頂から見る富士山はまた今度。
「帰りは男坂から行ってみない?」
幸枝の提案に「いいよ!」と答え、別のルートで下山する。
こちらは予想と違って、石段ばかりの道だった。
しかも急勾配ときている。女坂より所要時間が5分短いことに納得した。
半分ほど下りてきたところで、年配の男性とすれ違う。急な石段を登ってきた彼は、私たちを見つけてすがるように話しかけてきた。
「いやあ、キツい、キツいよ~! まだまだ?」
「はい。あとしばらく続きますよ」
「うわあ、もっとかぁ~」
ナビゲーターの幸枝が、慰めるように問いかけた。
「女坂だったら、途中に大山寺があるんですけどね。男坂には何かありますか」
「ないよ、何もない」
「あははは」
話し相手がいたことに気をよくしたのか、男性はさらに続けた。
「男は男坂を歩くもんだと思って、こっちに来ちゃったんだ」
「えー、まさか」
「女坂に行くには手形がいるんじゃないの、はっはっは」
LGBTQの時代にどこまで本
気かわからないが、陽気なオジさんだった。あの調子で山頂まで行くのかもしれない。
「着いた~」
無事、バス停にたどり着き、伊勢原駅から家を目指す。
スマホを見たら、万歩計は22,000歩を超えていた。結構な運動量だった。
その夜はぐっすり眠り、翌日は筋肉痛に悩まされながら元気に働いた。
山のパワーは偉大である。さすがは日本遺産。
チャンスがあれば、来月あたり、また登りたい。
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