歯みがきのあとに歯間ブラシを使ったら、歯茎から血が出た。
「あれえ、化膿しているのかな」
先月のことだ。10月、11月は忙しく、疲れがたまっていたせいと決めつけていた。ちょうど、ゴールデンキウイを食べたせいかもしれない。ひとまず娘に愚痴ってみた。
「ねえねえ、ミキ。お昼にキウイを食べたら、ゴマが歯の間にはさまって、歯茎から血が出ちゃった」
「は? キウイのゴマって何よ。種でしょ」
「そうそう」
「二度と食べちゃダメ」
「やだよ~」
たわいのない話のあと、何日も出血が続く。痛みも強まり、不安になって歯医者に駆け込んだ。
「痛い? じゃあ、レントゲンを撮ってみましょう」
出血している場所は治療痕の下で、外から見てもわからない。まずはレントゲン室に向かった。
「虫歯ですね」
医師が歯の写真を見せながら説明を始める。どうやら、根元まで進行してしまい、神経が腐っているらしい。虫歯の箇所は写真の色が薄くなっていて、明らかに変だった。レントゲンでそんなことまでわかってしまうとは驚きである。その日は詰め物を削って神経を抜き、薬を入れて化膿が治まるのを待つという。銀を詰め直すのは2~3週間後に、歯茎の状態が安定してからと言われた。
「今日は軟らかいフタをかぶせておきましたので、また来週見せて下さい」
「はい」
不幸なことに、この間、私は誕生日を迎えた。先日アップした美しいレディのケーキは、治療中の歯で食べたわけだ。(関連記事「レディに一目惚れ」はこちらから)食欲はなかったが、一年に一度のお祝いなので、食い意地は衰えない。
娘からはプレゼントとしてスタバのドリンクチケットを6回分もらった。
しかし、歯茎の痛みが残っており、さすがに、すぐには使う気になれない。
「ううう、そういえば、NHKのみんなのうたに『虫歯の子どもの誕生日』っていうのがあったよね」
平成生まれの方は知らないかもしれないが、昭和生まれだったらご存じなのでは……。誕生日の前日から虫歯の痛みに悩まされた男の子の嘆きを歌ったもので、なかなかのインパクトがある。
初めてこの曲を聞いたときは、何て不幸な子どもなのだろうと同情した。そして、今は自分が同じ状況になっている。もう大人だけど、これを聴いていたときは子どもだった。ちゃんと歯みがきしていたはずの、元子ども。「ぼくは~あ、もうダメだあ~ああああ」というフレーズには苦笑するしかない。
あれからひと月以上たち、先週、ようやく歯の治療を終えることができた。痛みも出血もなくなって、大きく削られた歯にフィットした銀がはまり、噛み合わせを調節したら、医師からねぎらいの言葉があった。
「大変でしたね。これでもう大丈夫です」
「よかった! ありがとうございました」
歯茎が元気になると食欲も戻る。一昨日は11月にしては非常に暑く、出先で駅に向かう途中のスターバックスが目に入った。
「おおっ、チケットを使うチャンスだ~」
コートを脱いでちょうどよい気温なので、キャラメルフラペチーノを注文する。しかし、チケットの使い方をすっかり忘れていた。
「ええと、ウォレットから……これかな?」
「はい、その三角のところを押していただけますか」
レジのお姉さんに教わってURLにたどり着き、何とかQRコードが表示できた。ホッ。
「お待たせしました~」
虫歯を乗り越えて味わったフラペチーノは、やさしい甘さで、疲労も寝不足も吹き飛んでしまう格別な味がした。
「おいし~」
チケットの残りはあと5枚。
最高気温8度の今日は寒すぎた。
暖かい日に、別のフラペチーノを頼んでみようっと。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「あれえ、化膿しているのかな」
先月のことだ。10月、11月は忙しく、疲れがたまっていたせいと決めつけていた。ちょうど、ゴールデンキウイを食べたせいかもしれない。ひとまず娘に愚痴ってみた。
「ねえねえ、ミキ。お昼にキウイを食べたら、ゴマが歯の間にはさまって、歯茎から血が出ちゃった」
「は? キウイのゴマって何よ。種でしょ」
「そうそう」
「二度と食べちゃダメ」
「やだよ~」
たわいのない話のあと、何日も出血が続く。痛みも強まり、不安になって歯医者に駆け込んだ。
「痛い? じゃあ、レントゲンを撮ってみましょう」
出血している場所は治療痕の下で、外から見てもわからない。まずはレントゲン室に向かった。
「虫歯ですね」
医師が歯の写真を見せながら説明を始める。どうやら、根元まで進行してしまい、神経が腐っているらしい。虫歯の箇所は写真の色が薄くなっていて、明らかに変だった。レントゲンでそんなことまでわかってしまうとは驚きである。その日は詰め物を削って神経を抜き、薬を入れて化膿が治まるのを待つという。銀を詰め直すのは2~3週間後に、歯茎の状態が安定してからと言われた。
「今日は軟らかいフタをかぶせておきましたので、また来週見せて下さい」
「はい」
不幸なことに、この間、私は誕生日を迎えた。先日アップした美しいレディのケーキは、治療中の歯で食べたわけだ。(関連記事「レディに一目惚れ」はこちらから)食欲はなかったが、一年に一度のお祝いなので、食い意地は衰えない。
娘からはプレゼントとしてスタバのドリンクチケットを6回分もらった。
しかし、歯茎の痛みが残っており、さすがに、すぐには使う気になれない。
「ううう、そういえば、NHKのみんなのうたに『虫歯の子どもの誕生日』っていうのがあったよね」
平成生まれの方は知らないかもしれないが、昭和生まれだったらご存じなのでは……。誕生日の前日から虫歯の痛みに悩まされた男の子の嘆きを歌ったもので、なかなかのインパクトがある。
初めてこの曲を聞いたときは、何て不幸な子どもなのだろうと同情した。そして、今は自分が同じ状況になっている。もう大人だけど、これを聴いていたときは子どもだった。ちゃんと歯みがきしていたはずの、元子ども。「ぼくは~あ、もうダメだあ~ああああ」というフレーズには苦笑するしかない。
あれからひと月以上たち、先週、ようやく歯の治療を終えることができた。痛みも出血もなくなって、大きく削られた歯にフィットした銀がはまり、噛み合わせを調節したら、医師からねぎらいの言葉があった。
「大変でしたね。これでもう大丈夫です」
「よかった! ありがとうございました」
歯茎が元気になると食欲も戻る。一昨日は11月にしては非常に暑く、出先で駅に向かう途中のスターバックスが目に入った。
「おおっ、チケットを使うチャンスだ~」
コートを脱いでちょうどよい気温なので、キャラメルフラペチーノを注文する。しかし、チケットの使い方をすっかり忘れていた。
「ええと、ウォレットから……これかな?」
「はい、その三角のところを押していただけますか」
レジのお姉さんに教わってURLにたどり着き、何とかQRコードが表示できた。ホッ。
「お待たせしました~」
虫歯を乗り越えて味わったフラペチーノは、やさしい甘さで、疲労も寝不足も吹き飛んでしまう格別な味がした。
「おいし~」
チケットの残りはあと5枚。
最高気温8度の今日は寒すぎた。
暖かい日に、別のフラペチーノを頼んでみようっと。
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