これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

大人だってオマケが好き!

2024年11月17日 15時47分42秒 | エッセイ
 職員の上村さんはお煎餅が好き。
 机に何種類もの袋を詰め込んで、昼食代わりに「バリバリ」と食べている。体に悪いところはないようで、アラカンというお年頃でもすこぶる元気なオジサマだ。
 ソフトサラダ、歌舞伎揚げ、ばかうけを食べる場面はよく見るが、その日は新潟仕込みを手にしていた。



「あれっ」
 上村さんの怪訝そうな声が聞こえてきた。
「1袋2枚入りのはずなのに、この袋は3枚入っているよ」
 すかさず、隣の職員が反応する。
「えー、見せて見せて」
「ほら」



「あー、ホントだ! ラッキーだね」
「うん。ちょっと嬉しい」
 小さくて薄手の煎餅が、ほんの1枚増えただけで、劇的にお腹が膨れるはずもない。でも、予期せぬオマケに出会うことで、自分の運のよさを感じ、打って変わって幸せな気分になるのだから不思議なものだ。特に家と職場の往復に明け暮れ、長年同じ仕事を繰り返している大人には、よい刺激になると思う。あまり感情を表さない上村さんが、その日はしばしば笑っていた。
 今日は私にも幸運が訪れた。午前中に出かけた埼玉県日高市のお寺で御朱印をお願いしたときのことだ。



 御朱印帳を受け取るときに、「よかったらどうぞ」とお菓子をいただいた。思いがけない幸運である。



「なぜ鎌倉?」という疑問はさておき、朝イチからお寺巡りをするため、せっかくの休みに5時半に起き、昼食の仕込みをしてから家を出たことを褒められたのかもしれない。仏様からねぎらわれたようで、とてもとても心が和んだ。
「うま~」
 さつまいもを原料にした口当たりのよい焼き菓子に舌鼓を打つ。
 次の土曜日も日曜日も仕事になってしまい、12連勤を不安に感じていたが、仏様からの差し入れて頑張れそうな気がしてきた。
 してもらって嬉しかったことは、誰かにしてあげるとさらによいだろう。
 3枚入りの煎餅はないけれど、美味しいお菓子ぐらいだったら常備できるかな。

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