3月末の結婚記念日に娘が熱を出し、泣く泣くキャンセルした鉄板焼きの店に、先日、家族3人で行ってきた。
場所は、池袋にある某ホテルの地下だ。以前にも行ったことがあり、この界隈ではランクが上の方だと思っていたのだが……。
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました~」
対応した女性を見て、ちょっと考えさせられた。年齢は私と同じか、やや上といったところなのだが、髪はパーマが取れかかって無造作に広がり、首にも耳にも装飾品はなく、化粧も雑だった。
哀しいことに、中高年の女性が身なりに気を配らないと、やけにみすぼらしい印象を与え、お店のランクまで下がるような気がする。接客業なのだから、もっとおしゃれをするべきだと感じた。
でも、私だって、そう見えるのかもしれない……。
一応、私もサービス業である。40代に突入した身としては、決して他人事ではない。彼女を反面教師として、美しい歳の重ね方を学習していく必要があるだろう。
「アラフォー世代は、アイメイクが大事なの。ちゃんとマスカラつけなさいよ」
以前、姉に言われた言葉が蘇ってきた。
前菜のカルパッチョは新鮮だったし、伊勢海老に牛ヒレステーキも満足のいく味だった。
ガーリックライスを炒めはじめたところで、夫が席を立ち、私に言った。
「はい、ママ。プレゼント」
夫から、小さな青い手提げ袋を受け取った。
「あ、ありがとう……」
反射的にお礼を言ったが、あまりにも意外すぎて、あとの言葉が続かなかった。
これ以上のサプライズはないだろう、というのが率直な感想だ。何しろ、結婚して以来、結婚記念日はおろか、誕生日やクリスマスにもプレゼントをもらったおぼえはないし、娘へのホワイトデーのお返しすら用意しない夫である。一体何が起きたのか、不思議で仕方なかった。
まあ、動機はともかく、自分のことを想ってくれる気持ちはうれしい。私は声を弾ませた。
「何が入っているのかな? 開けていい?」
「どうぞ。気に入るといいけど」
中に入っていたのはネックレスだった。18金でできたハートが2つ、鎖状につながって、下のハートにはパールが入っている。
夫にしては、珍しくセンスのいいチョイスである。いつもは、「どこにつけていけばいいのよ!」とボヤきたくなる代物を買ってくるのだから上出来だ。思わず口元が緩んだ。
「わあ、可愛い! いいじゃない、すごく気に入ったよ」
私の反応を見て、夫も安心したようだ。
「一通り見て回ったんだけど、どれがいいかわからなくて、最初に見たのに決めたんだ」
……そうか、下手に考えなかったからよかったのかもしれない。
デザートのアイスクリームを食べ、私たちはお店を後にした。
「うわ、雨!!」
地上に出たら、雨が降っていた。さきほども、空が暗いとは思っていたのだ。
私は心の中で、「変わったことをした人もいるしね」とつぶやき、折りたたみ傘を取り出した。
実は、夫にもらったネックレスと、ちょっと似たものを持っている。
銀色の、四つ葉のクローバーに、小さなパールがついているものだ。
あらかじめ、もらえることがわかっていれば希望も伝えられたのだが、こればかりはどうしようもない。
これは、なかったことにしておこう。
夫の目に触れぬよう、私は四つ葉のクローバーのネックレスを、引き出しの奥深くに押し込んだ。
さて、明日からは、ハートのネックレスとマスカラつけて、仕事に行くか……。
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場所は、池袋にある某ホテルの地下だ。以前にも行ったことがあり、この界隈ではランクが上の方だと思っていたのだが……。
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました~」
対応した女性を見て、ちょっと考えさせられた。年齢は私と同じか、やや上といったところなのだが、髪はパーマが取れかかって無造作に広がり、首にも耳にも装飾品はなく、化粧も雑だった。
哀しいことに、中高年の女性が身なりに気を配らないと、やけにみすぼらしい印象を与え、お店のランクまで下がるような気がする。接客業なのだから、もっとおしゃれをするべきだと感じた。
でも、私だって、そう見えるのかもしれない……。
一応、私もサービス業である。40代に突入した身としては、決して他人事ではない。彼女を反面教師として、美しい歳の重ね方を学習していく必要があるだろう。
「アラフォー世代は、アイメイクが大事なの。ちゃんとマスカラつけなさいよ」
以前、姉に言われた言葉が蘇ってきた。
前菜のカルパッチョは新鮮だったし、伊勢海老に牛ヒレステーキも満足のいく味だった。
ガーリックライスを炒めはじめたところで、夫が席を立ち、私に言った。
「はい、ママ。プレゼント」
夫から、小さな青い手提げ袋を受け取った。
「あ、ありがとう……」
反射的にお礼を言ったが、あまりにも意外すぎて、あとの言葉が続かなかった。
これ以上のサプライズはないだろう、というのが率直な感想だ。何しろ、結婚して以来、結婚記念日はおろか、誕生日やクリスマスにもプレゼントをもらったおぼえはないし、娘へのホワイトデーのお返しすら用意しない夫である。一体何が起きたのか、不思議で仕方なかった。
まあ、動機はともかく、自分のことを想ってくれる気持ちはうれしい。私は声を弾ませた。
「何が入っているのかな? 開けていい?」
「どうぞ。気に入るといいけど」
中に入っていたのはネックレスだった。18金でできたハートが2つ、鎖状につながって、下のハートにはパールが入っている。
夫にしては、珍しくセンスのいいチョイスである。いつもは、「どこにつけていけばいいのよ!」とボヤきたくなる代物を買ってくるのだから上出来だ。思わず口元が緩んだ。
「わあ、可愛い! いいじゃない、すごく気に入ったよ」
私の反応を見て、夫も安心したようだ。
「一通り見て回ったんだけど、どれがいいかわからなくて、最初に見たのに決めたんだ」
……そうか、下手に考えなかったからよかったのかもしれない。
デザートのアイスクリームを食べ、私たちはお店を後にした。
「うわ、雨!!」
地上に出たら、雨が降っていた。さきほども、空が暗いとは思っていたのだ。
私は心の中で、「変わったことをした人もいるしね」とつぶやき、折りたたみ傘を取り出した。
実は、夫にもらったネックレスと、ちょっと似たものを持っている。
銀色の、四つ葉のクローバーに、小さなパールがついているものだ。
あらかじめ、もらえることがわかっていれば希望も伝えられたのだが、こればかりはどうしようもない。
これは、なかったことにしておこう。
夫の目に触れぬよう、私は四つ葉のクローバーのネックレスを、引き出しの奥深くに押し込んだ。
さて、明日からは、ハートのネックレスとマスカラつけて、仕事に行くか……。
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