いよいよ、週明けから本格的に授業が始まる。
今年は担任をしていないので、初対面の生徒が多く、ちょっと気合いが入る。
そうだ、美容院に行こう!
2カ月放置していた髪を切り、春らしくゆるいパーマをかけて、ふんわりとした髪型にしてみたい。
パーマをかけるのは6年ぶりだ。私の髪は、かかりにくくて落ちやすい。人より時間がかかるわりには、ひと月ほどでウエーブが取れてしまうから、パーマ向きではない。
担当の美容師さんはいつも同じ男性を指名している。デーモン小暮が化粧を落としたらこんな感じになるのでは、という外見の彼だが、腕は確かで、いつも私を満足させてくれる。
「今日は久しぶりに、ふわっとした感じの、ゆるいパーマをかけて欲しいんだけど……」
「じゃあ、あまり切らないほうがいいね。この長さで、ウエーブだけ入れましょう」
あえて、細部の指示はしない。私があれこれ口出しするよりも、彼に任せたほうが、似合う髪形になるからだ。
買ったばかりの本を読み、カットもパーマもお任せで、ろくに鏡を見なかった。
シャンプー台でパーマ液を流し、最後にドライヤーでブローし始めたとき、鏡に映った自分の髪が、イメージと違っていることに気づいた。
「……あれ? ソバージュになってる?」
驚いて私が言うと、彼はもっとビックリしたようだった。
「え? ウエーブつけるんでしょ?」
「いや、ストレートに近い感じで、フワッとゆるめのパーマって言ったつもりだったんだけど……」
デーモン氏と私は、鏡の中で目を合わせた。
二人の間を、ピューッと風が通り抜けたような気がした……。
どうやら、説明不足だったらしい。
「うーん、真っ直ぐにしたければ伸ばしますよ。どっちでも大丈夫です」
「じゃあ、伸ばしてください」
彼はブラシを交換し、ソバージュになった私の髪をストレートに戻した。
うん、そうそう。こんな感じ!
すっかり軽くなった髪型で帰宅すると、家族から「いいね~」とほめられ、私は鼻高々だった。
しかし、夜、髪を洗ったが最後、どんなに一生懸命ブローしても、真っ直ぐな髪にならない……。こっそりパーマをかけた生徒が、頭髪検査前に必死で伸ばしたかのような、バリバリの髪になってしまった。
えええーっ、どうしようー!!
これなら、まだソバージュのほうがマシだ。不本意ながら再び髪を濡らし、教員には似つかわしくないグリグリの頭で寝た。
翌朝、娘のミキに大笑いされた。
「なに、お母さんの髪型、爆発してるじゃん!! 昨日と全然違う~」
ゲラゲラと笑い転げる娘を見て、私はすっかりしょげてしまった。
落ち込む私に、さらに追い討ちがかかる。
「お母さん、これでミキの気持ちがわかったでしょっ!!」
ミキはかなりのクセ毛で、メデュウサのような髪をしている。
野放しにしておくわけにいかず、常にゆわかなければならない。一度、「ミキの髪はモジャモジャで困るね」と言ったことがあり、ずっと根に持っていたようだ。
ミキの笑い声を背景に、私はひたすら鏡を凝視していた。
うーん、何かに似てるよ、これ……。
鏡に写る自分は、決してファッショナブルではない。エレガントでもない。でも、過去にインプットされた何かに似ているのだ。はてさて、何だろう?
わかった、ルイ14世だ……。
相手は偉大なる太陽王とはいえ、かなり微妙だ。とても授業をする気にはなれない。
ああ、明日は休もうかしら……。
それにしても、母はルイ14世、娘はメデュウサなんて、すごくない?
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※姉妹ブログ 「いとをかし」 へは、こちらからどうぞ^^(4/12更新)
今年は担任をしていないので、初対面の生徒が多く、ちょっと気合いが入る。
そうだ、美容院に行こう!
2カ月放置していた髪を切り、春らしくゆるいパーマをかけて、ふんわりとした髪型にしてみたい。
パーマをかけるのは6年ぶりだ。私の髪は、かかりにくくて落ちやすい。人より時間がかかるわりには、ひと月ほどでウエーブが取れてしまうから、パーマ向きではない。
担当の美容師さんはいつも同じ男性を指名している。デーモン小暮が化粧を落としたらこんな感じになるのでは、という外見の彼だが、腕は確かで、いつも私を満足させてくれる。
「今日は久しぶりに、ふわっとした感じの、ゆるいパーマをかけて欲しいんだけど……」
「じゃあ、あまり切らないほうがいいね。この長さで、ウエーブだけ入れましょう」
あえて、細部の指示はしない。私があれこれ口出しするよりも、彼に任せたほうが、似合う髪形になるからだ。
買ったばかりの本を読み、カットもパーマもお任せで、ろくに鏡を見なかった。
シャンプー台でパーマ液を流し、最後にドライヤーでブローし始めたとき、鏡に映った自分の髪が、イメージと違っていることに気づいた。
「……あれ? ソバージュになってる?」
驚いて私が言うと、彼はもっとビックリしたようだった。
「え? ウエーブつけるんでしょ?」
「いや、ストレートに近い感じで、フワッとゆるめのパーマって言ったつもりだったんだけど……」
デーモン氏と私は、鏡の中で目を合わせた。
二人の間を、ピューッと風が通り抜けたような気がした……。
どうやら、説明不足だったらしい。
「うーん、真っ直ぐにしたければ伸ばしますよ。どっちでも大丈夫です」
「じゃあ、伸ばしてください」
彼はブラシを交換し、ソバージュになった私の髪をストレートに戻した。
うん、そうそう。こんな感じ!
すっかり軽くなった髪型で帰宅すると、家族から「いいね~」とほめられ、私は鼻高々だった。
しかし、夜、髪を洗ったが最後、どんなに一生懸命ブローしても、真っ直ぐな髪にならない……。こっそりパーマをかけた生徒が、頭髪検査前に必死で伸ばしたかのような、バリバリの髪になってしまった。
えええーっ、どうしようー!!
これなら、まだソバージュのほうがマシだ。不本意ながら再び髪を濡らし、教員には似つかわしくないグリグリの頭で寝た。
翌朝、娘のミキに大笑いされた。
「なに、お母さんの髪型、爆発してるじゃん!! 昨日と全然違う~」
ゲラゲラと笑い転げる娘を見て、私はすっかりしょげてしまった。
落ち込む私に、さらに追い討ちがかかる。
「お母さん、これでミキの気持ちがわかったでしょっ!!」
ミキはかなりのクセ毛で、メデュウサのような髪をしている。
野放しにしておくわけにいかず、常にゆわかなければならない。一度、「ミキの髪はモジャモジャで困るね」と言ったことがあり、ずっと根に持っていたようだ。
ミキの笑い声を背景に、私はひたすら鏡を凝視していた。
うーん、何かに似てるよ、これ……。
鏡に写る自分は、決してファッショナブルではない。エレガントでもない。でも、過去にインプットされた何かに似ているのだ。はてさて、何だろう?
わかった、ルイ14世だ……。
相手は偉大なる太陽王とはいえ、かなり微妙だ。とても授業をする気にはなれない。
ああ、明日は休もうかしら……。
それにしても、母はルイ14世、娘はメデュウサなんて、すごくない?
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